「ニートが”より良いニート”になったら新しいことが起きる」 若新雄純氏が語るNEET株式会社の可能性
東京・足立区のアパートの一室で、ニート株式会社のメンバー数人が活動している。3年前に発足したこの会社、若新さんが会長で、メンバー全員が固定給のない取締役。「やりたいことをやりたいときに、やりたいだけやる」というゆるい環境のため、事業内容は決まっていない。
若新さんは、ニート支援に対する考え方についてこう語る。
「ニート支援や対策は、国もやっているし活動している人もいっぱいいる。でもそれは、『ニートをニートじゃなくしてあげよう』みたいな考えが多い。でも、ずっとニートでいたい人もいるんじゃないか。ニートが『より良いニート』になっていったら新しいことが起きるんじゃないか」
ニートじゃないほうがいいに決まっている、という考え方をひっくり返す指摘にはっとさせられた。もちろん、「ニートじゃなくしてあげよう」という考え方は間違っていない。
ただ、私たちは「真面目に働けば幸せになれると信じられた時代」とは違う世の中を生きている。必死に働いた結果が過労自殺、ということも起きているのだ。「こうじゃなきゃいけない」「普通はこうだ」という価値観を少しだけ疑い、違う角度からものを見ようとする姿勢は大切だ。
24時間塾・レンタルニートなど、新しい価値観を生み出すニートたち
では、より良いニートとはなんだろう。それは、社会とゆるくつながりながら新しい価値観を生み出そうとするニートのメンバーから感じることができた。
「24時間営業の学習塾」を開いているビジネスネーム「豆もあい」さんは、芝浦工大情報科卒で7年社会人経験がある。新人のときから残業が100時間だったというから、社会に出たとたん社会に潰された一人なのかもしれない。
彼の塾は小学生から高校生が対象で、「いつ来てもいい、居たいだけ居られる」のがウリだ。勉強だけでなく、「家にも学校にも居場所がない子の受け皿になれたら面白い」という考えが根底にある。
遊び相手として自分を貸し出す「レンタルニート」や「プラモデル制作代行」をしている仲陽介さんは、「経験のないニートでも起業するのは自由、もっと気楽に生きようという価値観を広めたい」と語った。彼らからは、普通とは違うことをやってやるという気概が感じられた。
若新さんは、「少数派や、はみ出した人たちの中に、次の世の中につながるヒントが眠っている可能性はある」と考えを語る。
「彼らがそういう新しいタイプの存在として色々発信して、考えて活動して、社会の多数派、普通と言われる人達がそれを見て、立ち止まったり勇気をもらったりして、変化していく」
「すごい長い目でみると、革新的なことっていうか、イノベーション的なものはこういうところから生まれるんじゃないかなと。これが『ゆるいチカラ』のポイントだよね」
若新さんの活動は、斬新なだけに理解されにくい面がある。しかし、特別おかしな考え方ではないのだと納得した。革新的なことは、「普通」や「既成概念」とは違うところから生まれ、未来につながっていく。若新さんは、その呼び水になろうとしているのだろう。
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