「少年ジャンプ」の”お色気”は「友情・努力・勝利」に並ぶ伝統 「昔は違った」という批判は筋違い
森アーツセンターギャラリー(東京都港区)で7月18日から10月15日にかけて開催される「創刊50周年記念 週刊少年ジャンプVOL.1 創刊~1980年代、伝説のはじまり」の内覧会に出席した。この展覧会は、週刊少年ジャンプが来年で創刊50周年を迎えることを記念したもので、創刊から1980年代の歴代漫画作品の原画などが展示されている。
1968年から1972年にかけて連載された、永井豪の「ハレンチ学園」も展示されていた。展示を見てもワンピースの女性のスカートが頭までまくり上げられる様子や、水の中から女性が全裸で飛び上がる様子や、全裸の女性がお姫様抱っこされている様子などが堂々と展示されている。女性の乳房に関する表現の自主規制もないようで、乳首まできちんと描写されている。少年キャラに至っては、陰部までモロである。
こうしたものを見ると、少なくとも「昔のジャンプはこんなんじゃなかった」という批判は当てはまらないことがわかる。「ゆらぎ荘の幽奈さん」では水滴が飛んでいたり、衣服の破片が散っていたりしており、肝心の部分は描かれていない。そのため”昔のほうがひどかった”とも言える。
会場を訪れた人の中には、いきなりの「ハレンチ学園」に閉口する人もいるかもしれない。だが、こうした表現を包み隠さず展示している姿勢を実直に受け止め、考えなければいけない。いかに昔のほうが表現が奔放で自由であったかを。
「週刊少年ジャンプ展VOL.1」ではこうした漫画の歴史まで実直に伝えている。テレビにおいても、1990年代までは女性の乳房がゴールデンタイムでも平然と露わとなっていた。それが現代では自主規制が進み、女性だけでなく男性も露出表現が自粛される傾向になっている。
「スカートめくり」から「ラッキースケベ」へ
“エロ”の性質自体も変化しつつある。かつては「スカートめくり」といった能動的な行いだったものが、「ラッキースケベ」という受動的なものに変わりつつある。「ラッキースケベ」とは、例えば部屋のドアを開けたら女性キャラが着替え中であったとか、転んだ拍子に女の子の胸などを触ってしまうという、主人公の不可抗力的な行いを指す。
ここから”お家芸”のごとくエスカレートし、週刊少年ジャンプで2006年から2009年にかけて連載されていた「To LOVEる」(矢吹健太朗=作)では、主人公が転んだ拍子にヒロインのスカートの中にまで頭を突っ込むようになった。「ゆらぎ荘の幽奈さん」でも、主人公が積極的に女性キャラを襲うという様子はなく、あくまで「ラッキースケベ」の体で描かれている。
もちろん、少年誌としてエロ描写は相応しいのかという議論は永遠に尽きないであろう。児童ポルノ法が成立したように、二次元における性的な描写は今後も規制の方向に向かうかもしれない。週刊少年ジャンプにおいて、メインテーマは一般に「友情・努力・勝利」の三本柱だとされる。だが、「エロ」という一つの伝統もあることは忘れてはならないだろう。