三重大学大学院で「忍者・忍術学」が専門科目に 「忍術を現代にも生かせるように研究したい」
「忍者」について研究し、修士号を取得する道が開かれた。三重大学大学院が、来年2月に行われる2018年度入試から「忍者・忍術学」という専門科目を導入する。「忍者文化論演習」などの「忍者・忍術学」関係の授業も新設される予定だ。
「忍者・忍術学」が専門科目として導入されるのは、人文社会科学研究科の地域文化論専攻。同専攻では、入学試験で小論文と専門科目が課される。専門科目には、「考古学」や「社会学」、「中国思想」などがあるが、ここに「忍者・忍術学」が加わった形だ。
忍者のコミュニケーション術も研究の対象に
「忍者・忍術学」を選択した学生は、大学院で何を学ぶのか。日本の中世史が専門の山田雄司・人文学部教授は、
「忍者の歴史や忍者が登場する文学作品についての研究が中心になると思います。文学作品には、江戸時代の歌舞伎の台本から近現代の映画やアニメまで幅広い作品が含まれます」
と話す。「伊賀流忍者」発祥の地である三重県伊賀市をフィールドにした授業も行われる予定だ。
三重大学は、これまでも「忍者」の研究に注力してきたが、その背景にはどのような思いがあるのか。
「忍者というと昔のことのように思っている人も多いと思います。しかし忍術や忍者の考え方は、現代にも生かすことができます。例えば忍者は、人と仲良くなることで、情報収集をしていました。忍者・忍術学では、人とのコミュニケーションについても学んでいきたいと思っています」(山田教授)
また、忍術で使う呼吸法は現代でも十分役に立つという。
「忍術には30秒ごとに息を吸ったり、吐いたりを繰り返す『息長(おきなが)』という呼吸法があります。この方法で呼吸をするとリラックスし、なおかつ集中しているという状態を作ることができるのです」
「忍者・忍術学」専攻の学生を指導するのは、山田教授や日本近世文学が専門の吉丸雄哉准教授ら。吉丸教授が書いた論文には、「近世における『忍者』の成立と系譜」などがある。
今年7月には国際忍者研究センターが開設、来年2月には国際忍者学会も
三重大学では今年7月、「国際忍者研究センター」を設立している。同センターは、
「伊賀地域を中心として忍者に関する教育研究を推進し、その成果を広く国内外に発信すること」
「国際的な忍者研究の拠点として機能するとともに、伊賀の地域創生に資すること」
を目的としているという。同センターの高尾善希准教授も、「忍者・忍術学」を担当する。来年2月には「国際忍者学会」も設立される予定だ。