ウーマンラッシュアワーの政治ネタ漫才は単なる演説? 権力者を批判する笑いは日本に広がるか
さらに小池百合子東京都知事のことを「都民ファースト」ではなく「自分ファースト」と揶揄。そして、米国から大量の兵器を購入している日本を「都合のいい国」と腐す。これまでも「ファンクラブ」のようなネタで、社会を風刺してきたウーマンラッシュアワーだが、今回はさらに政治色が濃くなった形だ。
そのため、この漫才に戸惑いを覚える人も少なくなかったようだ。例えばネットでは「漫才というより街頭演説の類いにしか見えなかった」「単に早口で政治的主張をまくし立ててるだけで、笑えない」といった感想もあった。
一方で、脳科学者の茂木健一郎さんを筆頭に、称賛する識者は後を絶たない。かねてから日本には「権力者に批評の目を向けた笑い」がないと発言していた茂木さんは、今回のネタを絶賛。ツイッターで「日本のコメディが変わるきっかけになれば」とまで語っていた。
ジャーナリストの津田大介さんや映画作家の想田和弘さん、マーケティングアナリストの原田曜平さんらも評価していた。一般の人からも、「今の日本の問題をグサグサついてくる」といった声が上がっている。
トランプ大統領が誕生してからは「政治風刺のネタが人気」
茂木さんや想田さんも指摘しているように、米国には日本と異なり、権力を批判するコメディアンがたくさんいる。今年10月に放送された「町山智浩のアメリカの”いま”を知るTV 第16弾」(BS朝日)によると、米国ではドナルド・トランプ氏が大統領に就任以降、「みんな政治に敏感になり、ネタも政治風刺の方が人気」だという。人々が抱いている政治への不満を笑いに変えるコメディアンが多いというのだ。
さらに町山さんは、中世ヨーロッパの宮廷道化師を引き合いに出し、コメディアンの本来の役割は政治を良くするために、政治を批判することではないのかと投げかけていた。この番組には村本さん自身も出演しており、コメディアンは「権力を監視する側にいたんですね」と共感を寄せていた。
村本さんは17日、「アメリカのスタンドアップコメディに刺激うけた」とツイートしてもいる。日本では珍しい政治色の強い漫才の誕生には、こうした背景があったようだ。