年収1000万以上のメガバンクから転職する人続々 「ガイアの夜明け」にみる「夢ある金融の姿」とは
大手転職支援サービスの金融業界(銀行・生保・証券)の転職希望数の推移を見ると、2012年から「生保」と「銀行」の数値が上昇している。14年頃からさらに急増していて、中でもに銀行の上がり方が著しい。
3年前に年収1000万円のメガバンクを辞めたTさん(33歳)は、自論をこう語る。
「いまの形態での銀行は存在しなくなる。最終的にいまの形態ではない銀行が新たに誕生すると思っています」
Tさんの転職先は、人工知能を使ったマーケティング戦略を提供する創業8年のベンチャー企業だ。銀行を辞めたことに後悔はないと言い切った。
銀行の将来を不安視してではなく、自分が本当にやりたいことのために起業する人もいる。2013年、複数の投資ファンドを運営する「クラウドクレジット」を設立した杉山智行さん(34歳)だ。東大法学部を卒業後、大和証券SMBCに入社。英国の4大銀行の 1つであるロイズ銀行に転職し、約3600億円もの資金を運用していた。しかし、8年で大手金融機関での仕事に見切りをつけた。
現在は、世界の成長事業に投資するファンドを運営する一方、アフリカや南米で銀行の融資を受けられない個人事業主たちのための低金利の投資ファンドを運営。これは、貧しい国の所得水準を上げるための「社会投資の枠」だという。
世界を繋げると「絶対面白いのに、やらないと一生後悔する」
杉山さんは、都内のワンルームマンションに一人暮らし。収入は銀行時代の3分の1ほどで、創業以来役員報酬をゼロにしているため貯金もほとんどないという。大きい家に住まないのかと訊かれると、「お金がない。生きていけるお金があればいいかなと」と欲のないことを言っていた。
貪欲に稼ぎたいというよりは、金融のプロだからこそできる社会貢献をしたいようだ。会社をつくったきっかけを、こう語る。
「世界ではお金がたまっているというよりお金が足りないですし、日本というお金が余っている稀有な国にせっかくいるので。絶対、それをつなげると面白いのに、やらないと一生後悔する」
つまり、お金の余っている国(人)から、貧しくとも商いの資金を必要としている国(人)に、お金を回す手助けをしているのだ。
ネットでは、「金の余ってる日本から金の足りない途上国に投資する、これこそ金融といった感じだな。 これができないメガバンクが凋落するのは必然としか言えない」といったつぶやきも上がっている。
ちなみにクラウドクレジットの社員37人の多くは、メガバンクや外資系金融機関からの転職組だ。元みずほ銀行の男性社員(34歳)は、「自分が思い描いていた金融を、この組織なら実現できる」と語り、かつて英・バークレイズ銀行にいた47歳の男性社員は「新しい商品を自分で作って、それが世に売り出される面白さを感じる」と、それぞれ満足そうな笑顔で語っていた。
銀行マンは数字ばかり追っている実務屋というイメージがあったが、金融業は人の夢や暮らしを支援する醍醐味のある仕事なのだ。もちろんそればかりではないだろうが、そういう夢のある面が大きい仕事だと、少しわかった気がした。