「ネット掲示板に書き込んで『悪い奴を叩く』感覚」 弁護士への不当な懲戒請求のべ3000件、提訴へ
ことの発端は昨年6月。佐々木弁護士を含む10人の弁護士に対し、190人から懲戒請求があった。懲戒理由は「違法である朝鮮人学校補助金支給要求声明に賛同し、その活動を推進する行為は(中略)確信的犯罪行為である」というものだった。
9月には佐々木弁護士の元には一通の手紙が届く。封筒の裏には「懲戒請求者は9000000000名ですからね」と書かれ、中には「外患誘致」と書かれた紙片のみが入った手紙だ。
こうした嫌がらせが続く中、北弁護士はツイッターに「今回のささき先生に対する根拠のない懲戒請求は本当にひどいというか頭おかしいと思います」と投稿。このツイートがきっかけで北弁護士までターゲットになり、約960件の懲戒請求がなされることとなった。
朝鮮学校への補助金をめぐる声明が発端となったが「これは左右の意見の対立ではありません」と北弁護士は話す。
「私たちは弁護士ですので、懲戒請求に対しても法律で応戦することができます。しかし一般の会社に、特定の誰かを解雇するよう求める嫌がらせが相次いだとしたらどうでしょう。これに対抗できる人は限られています。こうしたことが匿名性を盾に行われることを看過することはできません」
佐々木弁護士は「とにかく精神的にずっと嫌な気持ちです。これまでネット上の悪意は、外国籍の人や帰化した人、生活保護受給者に向けられてきた。自分が当事者になったことで、『本当に怖かっただろうな』と痛感しています」と語った。
「これで日本が良くなると思った」「時代を変えられると思った」
こうした懲戒請求はどのような人々が行っているのか。電話で和解を申し入れてきた人たちと話したという北弁護士は、次のように話している。
「20~30代の若い人というよりも、中高年が多い。『これで日本が良くなると思った』『時代を変えられると思った』と口々に話している。ただ、懲戒請求の仕組みについてきちんと理解している人は少なく、ネット掲示板に書き込んで、『悪い奴を叩く』という感覚なのかもしれない」
佐々木・北両弁護士は、6月20日頃までは和解を呼びかけ、6月末日以降、順次訴訟を提起していくという。最終的には懲戒請求を扇動したブログ主の刑事責任を追及する予定だ。