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マスコミが事件報道で卒アル写真を晒すのはなぜ? プライバシー保護と「犯罪抑止」の問題

事件報道で加害者や被害者の卒業アルバムの写真が出てくる理由を、ITジャーナリストの井上トシユキさんは「加害者の顔写真を出すのは犯罪抑止のため」と説明する。「よほどの凶悪事件でも無い限り顔写真はいらないと思う」とも言うが、「凶悪事件の線引きは難しい」のも事実だ。

「何が凶悪事件なのかは人によります。量刑で決めるのも難しいです。例えば性犯罪の量刑は軽いですが、性犯罪者は再犯率が高いため、重大ではないとも言えません。『悪いことをすると晒されるから気をつけよう』と、犯罪を思いとどまらせるためにも、加害者をある程度は晒し者にしないといけない部分もあります。顔を晒すなという気持ちは分かりますが、現実的には難しいです」

事件報道で卒業アルバムの写真が使われるのは、「一番手に入りやすく、提供した人が特定されにくいため」だ。マスコミは事件があった際、加害者や被害者の関係者に取材を試みる。とはいえ多くは「取材お断り」のため、住所が分かれば近所の人に話を聞きに行くのが主流だ。

「そこでお借り出来る写真がないか聞いたとき、『卒業アルバムであれば』と出す方は多いです。個人的に撮影した写真を出すと、提供した人がすぐに分かってしまうと恐れるのです。しかし、最近では着用している制服から学校を割り出し、卒アルを提供した人の『犯人探し』が行われることも増えてきました。こうしたことから、提供を嫌がる人も多くなってきました」

今後の事件報道は、「加害者の報道でも、目線に線が入ったりモザイクがかかったりといった配慮は増えていくのではないか」と予測する。一方で、被害者報道の場合はケースバイケースだとする。

「被害者の名前・写真が出ることで好奇の目に晒され、プライバシーがほじくり返されるのはよろしくありません。しかし京アニの事件では、『名前を出すことで事件の重大さが分かる』と、公表を望む遺族もいました」

世論が事件報道のあり方に影響を与える日も、そう遠くないかもしれない。

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