「新卒で入社した会社を9か月で辞めた」という経験談が、キャリコネニュースの「仕事を即行でやめた人」アンケートに寄せられた。東京都の30代後半男性は、今から15年ほど前の「就職氷河期の終わりのほう」に就職。新卒研修で某県の研修施設に到着すると、「それまで優しかった新卒採用担当の人事部の方たちが豹変」したという。まず携帯電話を預けるように言われ、
「翌日からは地獄の日々の始まりでした」
と男性は振り返る。(文:okei)
※キャリコネニュースでは引き続きアンケート「仕事を即行でやめた人」を実施しています。回答ページはこちら https://questant.jp/q/HF78WM9H
山中マラソンに社歌熱唱、社長を神格化
「6時に起床し、朝一番でトイレ掃除から始まるのですが、これが素手でやらなければなりません。その後、山中を1時間ほどマラソン、研修施設に帰ったら社歌を大声で熱唱させられ、ようやく朝食です。(中略)食事中は会話禁止、15分以内に終わらせなければなりません」
そして始まる研修は、「ビジネスや業界に関することは僅か」で、「異常なほど社長を神格化」する会社だったという。
「社長の著書や、はては社長の学生時代に書いた作文を延々と暗記させられる始末です。夜の21時くらいにすべてのプログラムを終えたら、翌日は早朝から前日にやった内容のテストがあり、それに落ちるとその翌日は再テスト」
再テストは1時間早く起きて受けねばならないため、「みんな必死で、2時~3時くらいまで復習をします。そしてまた6時に起きて……」という地獄が2週間繰り返された。追試がたまると「丸30時間睡眠が取れないなどザラ」「怒鳴られる、罵倒されるなどの行為が横行」し、新卒同士もストレスで険悪になった。
「最終日には『神様』である社長が登場して『よく頑張った!』なんて言って、新卒一同涙……というヤツです」
と男性は冷静に語る。研修を終えた当時は「すっかり洗脳されてはいた」ものの、僅かながら冷静さもあり、「この会社は自分で考えたり、自分で課題を設定して行動したりする人は求めていない」という「疑念」、「一抹の不安」が、後々までつきまとうことになったという。
「君も早く社長の分身になれるよう頑張りなさい」と言われ
男性の疑念が退職決意に至るまで、時間はかからなかった。その年の秋頃、「少し偉い人と雑談をしていた時」のこと。こんな言葉をかけられた。
「社長は本当に神様みたいな人なんだよ。君も早く社長の分身になれるよう頑張りなさい」
男性は、「我慢していたモノやずっと抱えてきた不安や疑念が一気に噴出し、緊張の糸がプッツリと切れる感じがしました」と当時の心境を語る。数日後、上司に「自分は社長の分身になるつもりはない」と退職の意思をキッパリ示した。
すると案の定、上司たちから「新卒がこれ以上退職したら、俺たちが社長から怒られるんだぞ!」と罵倒や脅迫じみた言葉で引き止められた。すでに数名の退職者が出ていたのだ。しかし男性は、この「社長が」「社長が」にウンザリし、むしろ「脅されるほど退職する決心は固く」なっていったという。
「3年は勤め上げないと一生マトモな職に就くことはできない」と言われていたが…
しかし当時は、「相談したすべての人に退職については大反対」された。15年前は、
「まだまだ就職氷河期の最後の方ということもあって今のように第二新卒のような枠もなく、どんなにヒドイ目に遭っても『3年は勤め上げないと一生マトモな職に就くことはできない』と言われていた時代」
だったと男性は語る。退職直後は正社員を諦め、ベンチャー企業で契約社員として3年働いたそうだ。転職時は経歴が評価され、晴れて正社員として希望の職に就くことができたという。現在はマーケティング関連の仕事をして年収は650万円だそうだ。男性は「これらの経験を経て、日本は思ったよりも再チャレンジできる社会だなと思いました」と明るく結んでいる。