最近よく聞く「Z世代」という言葉。若手世代というところまでは理解していても、定義や特徴などを問われると、答えに詰まってしまう。そもそもZ世代とは何なのか。国内外の資料を参考に、Z世代について調べてみた。
定義
Z世代は、1990年代後半から2010年代前半ごろに生まれた人たちのこと。もともと欧米式の分類で、英語だとGeneration Z、Zoomerと呼ばれている。欧米では1946年〜64年まで生まれのベビーブーマー世代(Boomer)、1965年〜1980年生まれのGeneration X(X世代)、81年〜96年生まれのGeneration Y(Y世代・ミレニアル世代)に続く存在となっている。なお、Z世代のあとに生まれた人たちは、Generation Alpha(α世代)と呼ばれている(※1)。
日本国内では、世代について別の分類もされている。たとえば日本では、第二次世界大戦の終了後、出生率が大きく増加した数年(第1次ベビーブーム)に生まれた世代を「団塊の世代(1946年〜50年生まれ)」と呼び、その子どもたち(第2次ベビーブーム)の世代を「団塊ジュニア世代(1971年〜75年生まれ)」と呼ぶ。ほかに、就職時期にバブル景気の影響を強く受けた世代を「バブル世代(1960〜70年生まれの世代)」、バブル崩壊後の就職難が直撃した「就職氷河期世代」、ゆとり教育の影響を受けた世代を「ゆとり世代(1987年〜95年生まれ)」などと呼ぶこともある。
ただ、Z世代以降は、日本でも欧米と共通の呼び方をするようになっている。Z世代を12歳から28歳とすると、日本国内では約2000万人となっている。これは総人口約1億2500万人のうち16%程度である(2023年時点)。
特徴
デジタル・ネイティブ
Z世代の特徴としては、「デジタル・ネイティブ」であることを挙げるレポートが多数ある(※1) (※2) (※3)。
生まれたとき、すでにインターネットの商業利用が始まっていて(米では1990年〜、日本では93年〜)、人生の大部分をインターネットとともに過ごしてきた世代と考えられるからだ。「3人に1人が、毎日6時間以上、スマートフォンを使っている」という調査もある(※4)。
SNSを使いこなす
2008年には、Twitter(X)やFacebookが日本版サービス開始。2011年からはLINEがサービス開始となっている。Z世代がインターネットを日常的に利用する年齢になったときには、こうしたSNSサービスがすでに存在し、社会的インフラの一部として機能するようになってきていた。Z世代は、SNSを通じたコミュニケーションを当然のように使いこなしている。
SNSの使い方については、次のような特徴も挙げられている(※5)。
「TwitterやInstagram、TikTokのような発信型SNSを使いこなす」
「日本でもっとも使われているSNSはTwitterだが、Z世代の6割が使っている。2番目はInstagramだが、男女差が大きく、Z世代では女性の約8割が使っているが、男性は比較的少ない」
インターネットを介したメッセージのやり取りの様式が上の世代とは違うという指摘もある。たとえば、世代間格差の具体例が、”LINEで句読点を使うと「怒っている」と誤解される…… オトナには想像できない若者世代のLINE常識”(ニューズウィーク日本版)(※6)といった記事で紹介されている。
興味・関心は多様化している。
情報収集手段として、ネット経由の割合が著しく増加し、テレビ・新聞などマスメディアのパワーが相対的に落ちたことで、興味関心の多様化は加速している。「誰もが見る番組」「誰もが読むコンテンツ」が減り、個々人が受け取る情報内容のばらつきが大きくなってきている。
SNS上でどういったコンテンツを受け取るかは、個々人の能動的な行動(検索やフォローなど)の結果だけではなく、それぞれのSNSが持つコンテンツ・レコメンデーションのアルゴリズムにも大きく左右されている。利用者が過去に触れた内容に近しい情報を優先表示するアルゴリズムも多く、そのため同じような情報を繰り返し浴びることになっている。
SNSなどを通じて「世界中の若者が同じ情報に同時に触れることで、感覚が似てきている」という指摘もある(※5)。#MeTooなど世界規模で盛り上がる話題については妥当だろう。
消費行動について
20歳前後の若者に特化したマーケティング機関「SHIBUYA109 lab.」の長田麻衣氏は、Z世代の消費行動について、次のような特徴があると指摘している。(※11)
Z世代の消費行動では大きく4つのキーワードがあげられます。
「体験消費」“モノ”よりも、共有・共感できる“コト”に価値を感じる。
「失敗したくない消費」買い物やコンテンツ消費、キャリアでも、失敗したくない。
「メリハリ消費」膨大なコンテンツの中で、取捨選択をしてお金と時間をかける。
「応援消費」推し・推し活といった、人を応援する、貢献することにお金を使う。
そして、最新の、Z世代の大きな特徴としてあげられるのが「界隈消費」です。
こうした行動の背景には、一部のラグジュアリー商品を除いてモノが憧れの対象ではなくなったことや、SNSを通じて多様な価値観に触れやすくなり、大小問わず興味関心に基づいたコミュニティが形成されやすくなったこと、口コミサイトなどの「他人の評価」を参考にして行動する機会が増えていることなどもあるのではないか。
最近注目されているキーワードのひとつに「界隈」がある。これは「共通の関心事や好きな世界観を持つ人で構成されるゆるいコミュニティ」(※7)のことだ。「界隈」は特定のトピックやインフルエンサーによって細分化されている。そのため、何らかのブームや流行が巻き起こったとしても、「その界隈を一歩出れば無風」ということも珍しくない。
では、Z世代はSNSを介して積極的に発信をしているのだろうかというと、必ずしもそうとは言えないようだ。博報堂WEBマガジン・センタードットでは「α・Z世代は、好きなものについての知識量にも謙虚なうえ、『人は人、自分は自分』という価値観を持っているがゆえに、双方向の発言も控えめ」(※7)と分析している。
ただ、親しい友人に対してのみ情報発信する「仲良し限定型」だけではなく、自分の「好き」を発信しながら積極的にフォロワーを増やしたり、他人と絡んでいく「インフルエンサー予備軍型」の情報発信スタイルをとる人も珍しいながらも混じっているそうだ。
「静かな退職」(Quiet Quitting)とは?
Z世代絡みのキーワードとして、よく挙がるもののひとつに「静かな退職」(※8)がある。これは「職場にはとどまるし、最低限の仕事はするけれども、それ以上の余分な仕事はお断り」というスタイルだ(※9)。
そもそも、同じ職場でずっと働き、少しずつでもステップアップをしていきたい場合は、頑張って働いてスキルを向上させ、職場の上司・同僚に認めてもらうのが正攻法である。
しかし、ステップアップできる見込みが薄かったり、そもそもスキルを身につけられるような仕事が用意されていなかったり、身を粉にして働いていた先輩が理不尽にクビになっていたり、上司におもねるスキルだけで出世する同僚がいたりすると、真っ当に仕事をしようという意欲はどんどん減退していく。無理して心身を削るよりも、プライベートを満喫したり、身体を鍛えたり、職場外で自己研鑽してよりレベルの高い仕事をゲットしたりしたほうがマシだ、と考える人がいてもおかしくない。職場の若手がこのような態度だった場合、上司は「やる気が足りない」と叱る前に、その職場が本当に魅力的なのかを疑ったほうがいいかもしれない。
もちろん、このような生存戦略がいつでも正解とは限らない。「出世の見込み」や「会社の先行き」についての未来予想が当たるとは限らないし、周囲の信頼を得て初めてもらえるようなチャンスを逃すことになるし、職場外で成功できるとも限らないからだ(そう、筋肉だけは裏切らないけれど)。
「タイパ」について
もう一つ、Z世代の価値観を説明するためによく用いられる言葉が「タイパ」である。「コスト・パフォーマンス」のコストをタイム(時間)に変えた造語で、ようは「同じ効果が得られるなら、かける時間は短いほうがいいよね」という考え方だ。大変合理的である。死ぬまでの時間は(多少の差はあれ)有限で、時間が大変貴重なのは間違いない。
よく、映画やドラマを2倍速で見る行為が物議を醸すが、これも「純粋に内容を知る」ための視聴であれば、タイパが良い手法だろう。ただ、人が映画やドラマを鑑賞する目的は、内容を知ることだけではない。映画やドラマの演出は等倍で伝わるようになっており、2倍速では「真髄が抜け落ちてしまう」という考え方も当然ある(この考え方でいくなら、2倍速視聴は「タイパが悪い」ことになるだろう)。
当たり前だが、タイパは、もう一つの変数である「効果」をどう計測・評価するかによって大きく変わってくる。例えば筆記テストで、パッと丸暗記しての100点と、時間をかけて仕組みを理解したうえでの100点を等価値だと考えるかどうかである。それが人生で二度と使わない知識なら、丸暗記してパッと忘れたほうがタイパは良い。逆に、その「仕組みを理解する」ことが目的であれば、時間をかけておいたほうがタイパは良いことになる。
世の中には、そもそも大量の時間を注ぎ込まないと、成し遂げられないような効果もある。短期で得られる効果を重視するあまり、長期的な視野を失ってしまうのはもったいないかもしれない。作家の白川尚史氏(マネックスグループ取締役でもある)は「一度我慢してしゃがまないと手に入れられないものが、世の中にはたくさんあると考えている」と語っている[^10]。
まとめ
「Z世代」は、世界で大きく注目を浴びているこれからを担う世代だ。この「世代」を見ていく際に忘れてはならないのが、やはりその多様性だ。日本では少子高齢化が進んでいるため、人口構成比こそ約16%と少なめだが、それでも2000万人はいる。年齢も10代前半から20代後半で、これを均一な存在だと考えるのには無理がある。Z世代を語る際には、それがかなりザックリした分類だということをきちんと踏まえたほうがいいだろう。
(参考リンク)
(※1)https://www.pewresearch.org/social-trends/2020/05/14/on-the-cusp-of-adulthood-and-facing-an-uncertain-future-what-we-know-about-gen-z-so-far-2/
(※2)https://www.mckinsey.com/featured-insights/mckinsey-explainers/what-is-gen-z
(※3)https://www.nri.com/jp/knowledge/glossary/lst/alphabet/generation_z
(※4)https://www.mckinsey.com/industries/retail/our-insights/asias-generation-z-comes-of-age
(※5)https://www.jstage.jst.go.jp/article/bma/22/1/22_11/_pdf/-char/ja
(※6https://www.newsweekjapan.jp/stories/lifestyle/2023/10/lineline_2.php
(※7)https://www.hakuhodo.co.jp/magazine/107916/
(※8)https://www.mckinsey.com/capabilities/people-and-organizational-performance/our-insights/quiet-quitting-and-performance-management
(※9)https://www.theguardian.com/money/2022/aug/06/quiet-quitting-why-doing-the-bare-minimum-at-work-has-gone-global
(※10)https://toyokeizai.net/articles/-/733207
(※11)https://dentsu-ho.com/articles/8802