高い内定率の秘訣は「ゆるくて楽しい」コミュニティ作り 就活アウトロー採用が「アウトロー総会」開催
既存の就職活動に違和感を抱いてドロップアウトした若者を対象にした就職マッチングサービス「就活アウトロー採用」(運営:NPO法人キャリア解放区)が11月14日、東京・中目黒でOB・OGを集めた同窓会、題して「アウトロー総会」を開催した。
アウトロー採用は29歳までの就職経験のない既卒者を対象に、ワークショップや企業とのマッチングイベントを開催するサービス。2013年に、その前身となる「デコボコラボ」という名称でスタートした。
「中退者や引きこもりも歓迎」というサービスのため、クセの強い参加者が集まる傾向があるが、昨年度は約100人の参加者のうち41人に内定が出た。この手のサービスとしては、かなり高い就職率だ。
若新雄純氏「アウトロー採用のゴールは『スタートを切る』こと」
今回の総会には、OBを中心に約40人が参加。同サービスのプロデューサーで「NEET株式会社」などで知られる慶應義塾大学特任助教の若新雄純氏が冒頭で乾杯のあいさつをし、アウトロー採用の目指すところについて語った。
「今日集まった人の中には、アウトロー採用で仕事が決まった人もいれば、そうじゃない人もいる。でもアウトロー採用のゴールは、参加者がまず『スタートを切る』ということなんです」
参加者の中には、ニートやフリーター状態が長くなり、再び就職することが億劫になってしまった人もいる。若新氏は「最近の世の中は『どうやってスタートするのか』ということばかり考えて、なかなかスタートを切れない。そこでモタモタするのはダルい。まずはスタートすることが大事」と語っていた。
続いて、参加者が一人ずつ自己紹介を行ったが、その内容がカオスだ。マイクを持って自分の生い立ちから話し出す人もいれば、昨今の政治情勢について語る参加者もいる。
そして、その話をほとんど誰も聞いていない。総会は立食形式で行われたが、会場前方にいるごく一部が耳を傾けているだけで、大多数は無視して普通に会話を続けている。その場の雰囲気を全く意に介さないというのが、まさにアウトローだ。
「アウトロー採用に参加してなければ、今もフリーターだったかも」
キャリコネニュースは参加者に話を聞いた。出身大学を聞くと、いわゆるMARCH以上の高学歴が多く、何らかの理由で就活をしなかったり、新卒で入った会社を1年ほどで辞めてしまったりという人が多い。
25歳の女性は中央大学の経済学部出身だが、「髪の毛を黒くするのが嫌」という理由で就活をせず、卒業後はフリーターとして働いていた。2013年にデコボコラボに参加。そこで出会って就職した会社は1年弱で辞めてしまったが、現在は別のITベンチャーで正社員として働いており、仕事内容にも満足しているという。
千葉大学出身の27歳男性も、やはり大学卒業後はフリーターとして働いていた。2014年のアウトロー採用に参加し、現在は大手外資系ITコンサルで契約社員として働いている。
「30歳になる前に何らかの専門性を身につけないといけないと思っていたので、就職できてよかった。参加してなければ、今もフリーターだったと思う。いいきっかけになりました」
もちろん、全ての参加者が就職したわけではない。内定が出ずに今もパートで働いている人もいれば、就職せずにミュージシャンを目指す人もいた。
そうした人にとって、アウトロー採用は直接的には役に立たなかったかも知れないが、現在モデルとして活動しているOGからは「友達が出来たので参加してよかった」といった声も出ていた。同年代が集まるサークルみたいな感じで楽しんでいるようだ。
納富代表「働かなくてもいい。サバイブしてください」
運営に携わってきたキャリア解放区の納富順一代表は、最後に「2013年に若新と訳の分からないサービスを立ち上げて、これまでやってきた。今こうしてこんなに人が集まるを見ると感動します」と謝意を述べ、総会に参加することができなかった人についても言及した。
「ここには色んな事情で来られない人もいます。生き延びることはリアルに大変。みなさん、本当に死なないで下さい。いいじゃないですか、働かなくたって。年一回、こういうところに顔を出してくれればいい。なのでみなさん、サバイブしてください」
アウトロー採用は2015年も実施しており、約70人が参加。企業とのマッチングイベントも今後スタートしていく。納富代表はキャリコネニュースの取材に対し、「アウトロー採用は、半分は就職サービスですが、もう半分は居場所作りなんです」と語った。
「既卒者がハローワークに行くと、『かわいそうな人』扱いされてしまい、かえってみじめな気持ちになってしまう。なので、アウトロー採用では『ゆるくて楽しい』コミュニティ作りを心がけてきました。ここでは、どんな変なことを言っても大丈夫。尖った個性もそのまま受け入れます。その中で試行錯誤して、一歩踏み出すきっかけになれば」
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