雇用の安定図る「労働移動支援助成金」が、逆にリストラを促進! 厚労省は「支給の厳格化」の方針示す | キャリコネニュース
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雇用の安定図る「労働移動支援助成金」が、逆にリストラを促進! 厚労省は「支給の厳格化」の方針示す

社員をクビにしたらお金がもらえる?

社員をクビにしたらお金がもらえる?

企業の事業縮小などに伴い、やむなく職を失う人のために企業が再就職支援を行うと、企業に1人あたり60万円の助成金が支給される。仕事が決まらなくても10万円。これを「労働移動支援助成金(再就職支援奨励金)」制度という。

安倍政権の雇用改革制度の1つだが、この制度がいま悪用されリストラを促していると問題視されている。3月17日放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)では、企業のリストラに見え隠れする人材会社の影と、その実態に迫った。

「出向先は清掃会社、給与が30%減る」と恫喝?

ワーナーミュージック・ジャパンの社員Aさんは、会社から事実上の退職勧奨を受けている。去年7月、所属する部署がなくなることを理由に、会社から転職支援制度への応募を勧められた。

これに応じなかったAさんに、会社側が勧めてきたのが「出向」だ。ところがそれは、現在の職種とあまりにかけ離れた提案だったとAさんは明かす。

「出向先は清掃会社かもしれず、給与が20~30%減るとか恫喝的なことを言われた」

Aさんは会社に残ることを決めたが、その後8回も面談が行われている。その中で、人材会社の「テンプスタッフキャリアコンサルティング」の名前がある書類を渡された。驚くことに、そこには「ご退職(予定)日」の記入欄があった。退社の意思がないAさんが反発すると、数日後、今度は「個人情報開示承諾書」なる書類を渡された。

人事部の指示かと思ったが、よく見ると文中に「再就職支援申込書」と書かれている。よく読まないでサインしていれば、再就職支援が自動的に申し込まれてしまうところだった。Aさんが指摘すると、会社は「テンプスタッフが間違って作成した」と釈明。Aさんは会社とあくまでも戦い続ける姿勢だ。

人材会社が「非戦力社員チェックリスト」のノウハウ提供

ワーナーミュージック・ジャパンは、番組の取材に対し「早期退職はテンプスタッフの提案を受けて実施したのではない」と回答。Aさんと8回も面談した件については「退職拒否が未確定な段階での面談と理解していて、違法な面談ではない。今回の件に関して労働移動助成金の受給・申請はしていない」と疑惑を否定した。

その一方で、「雇用の安定」を図るはずの助成金制度が、逆に「リストラ」を促進しているという見方もある。労働問題に詳しい新村響子弁護士は、助成制度の乱用を指摘。大手を含めてすべてが違法例どうかは分からないと断ったうえで、こう証言する。

「リストラや希望退職者募集が行われる場合、人材支援会社が関係していないことは少ない」

企業は「労働移動支援助成金」を使って再就職支援を人材会社に委託するが、人材会社は再就職支援だけでなく、リストラのアドバイスまでして人員削減を促しているというのだ。

番組は、人材会社から企業へ向けた提案資料を入手。表紙には「人員適正化施策実地のご提案」とあり、目次には「公的助成金受給指導」の項目もある。「非戦力社員チェックリスト」では、リストラする社員をリストアップするノウハウまで説明していた。中にはこんな項目が連なる。

「過去3年から5年の人事・勤務評価が低い」
「今後のポジションを用意できる可能性が低い(バブル入社社員など)」

「ローパー社員」の退職は別の手続きを取るべき

巻末には顧客企業がリストアップした人数のうち、どれだけ退職に同意したかの人数がまとめられていた。「大手化学企業、リストアップ50名、退職同意44名」「大手IT企業50名、同意43名」など、高い退職同意率が誇らしげに並んでいる。

厚労省はこの4月から助成金の支給条件を厳しくしていく考えを示しているが、新村弁護士は「具体的にどこで何が行われているかは極秘なので外部に出にくい」として、支給要件を厳格化しても問題を解決することは難しいという。

コメンテーターの熊谷亮丸氏(経済分析室長チーフエコノミスト)は「制度の趣旨をはき違えている言語道断な悪用」と厳しく批判した。会社としては、40代以上のいわゆる「ローパー社員(ローパフォーマー)」を退職させたい思いがあるのだろうが、もしそうだとしても助成金とは別の手続きを取るべきだろう。(ライター:okei)

あわせてよみたい:「働かないオジサン」が原因と分かっているけど…

 

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