日本のサービス業の「生産性」は本当に低いのか? 質は高いのに「代金」が安すぎるのでは
第1回となる「日本サービス大賞」の授賞式が6月13日、都内で開かれた。「優れたサービスをつくり届けるしくみ」を持つ事業者を表彰する賞で、安倍政権が掲げる「サービス産業の生産性向上」を強化する目的があるという。
同日放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)は、この様子を取材。コメンテーターの熊谷亮丸氏(大和総研チーフエコノミスト)は「サービス業の生産性を上げることは、日本にとって宝の山です」とコメントしていた。(ライター:okei)
コメンテーターも指摘「お金をちゃんと貰ってない」
日本のサービス業は、海外のサービス業や日本の製造業に比べて生産性が低いとされる。製造業はライバルのやり方を研究し、情報交換しながらお互い生産性を上げるのだが、サービス業は「自社で作ったノウハウを表に出したくない」という傾向があるという。
そこでこの賞には「誉めると同時に、ある程度ノウハウをオープンにしてお互いに参考にし、切磋琢磨して効率化を目指す」というねらいもあるようだ。効率化の情報を共有して、業界の底上げを図れということだろう。
これを受けて、大江麻理子キャスターが「日本のサービス業の生産性は本当に低いんですか?」とあらためて疑問を投げかけると、大和総研チーフエコノミストの熊谷亮丸氏は、こうコメントした。
「サービスの質は高いわけですが、ただ、お金をちゃんと貰ってないんですね。アメリカと比べると生産性は5割強ぐらい、ヨーロッパの6割くらいしかない状況ですね」
サービス業の生産性が1割上がれば、日本のGDPは7%上がる。アメリカ並みの生産性になれば日本のGDPは6割増えて、額では260兆円に相当する。これを熊谷氏は「大変な伸びしろがある」というわけだ。しかし視聴者は、これに冷ややかな反応を示している。
「日本の生産性が低いってのは、サービス残業で時間に対しての給与や対価を払われてないからだろって普通に思うんだが」
「早く会社から帰ろうとすると、『なんでおまえだけ早く帰るんだー』と足を引っ張る団塊世代が多いから」
業務改善より「値上げ」が先決なのでは?
形のない「サービス」は、原価に利益を上乗せする製造業のような価格設定が難しく、お客が納得する質でなければ代金をもらえない。お客の要求が非常に高く、安い価格で過剰なおもてなしをする日本のサービス業は、「消費者にとっての価値」は高くなるが、十分な代金を受け取ることができなければ「生産量」が低いと見なされてしまうのだ。
サービスの生産性向上は仕事の仕方を改善するよりも、「値上げ」によって実現できるところが大きいはず。「日本は消費者には天国、労働者には地獄」と言われる状況を打破し、サービスの値上げと賃金の改善をすべきだろう。
とはいえ値上げだけをしても、贅沢に慣れてしまった消費者の納得は得られない。前出の熊谷氏は、サービス企業による「人への投資」が必要と指摘する。
「もっと社員教育だとかそこをやることによって、生産性が劇的に上がるという訳です」
しかし現在でもサービス業に従事する人たちは、かなり高いレベルで仕事をしていると思うのだが……。社員教育で本当に「生産性が劇的に上がる」のか、どうしても疑問が拭えない。やっぱり小売や外食産業などの巨大チェーン企業が、非正規労働者を安く使っていることが根本的な原因ではないのだろうか。
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