「鉛筆けずり入社式」三菱鉛筆で10回目の実施 新入社員「ユニークですよね。ユニだけに」
新年度が始まり、各企業で入社式が行われている。三菱鉛筆は4月3日、東京・大井町にある本社で新入社員が小刀で鉛筆を削り、その鉛筆で5年後の自分に向けて抱負や目標を書く「鉛筆けずり入社式」を行った。
この入社式は、2008年に同社の鉛筆ブランド「uni」が発売50周年を迎えたのを機に若手社員によって企画された。以来毎年実施されている。この日、数原徹郎副社長は「まさか10回も続くとは思わなかった」と述べ、
「喜び、希望、不安。いろんな気持ちを持って、今日を迎えていると思います。今日の気持ちを大切にして削って、メッセージを書いてください。ただ(怪我をして)労災申請にならないように」
と新入生に語った。
先輩社員に見守られ「芯は『研ぐ』ように」鉛筆削りの儀
今年の新入社員13人の前には、小刀と「2017.4.1 Welcome to Mitsubishi Pencil」と名入れされた「uni」の鉛筆1ダース。小刀等で鉛筆を削った経験がある人もいたが、
「小学校1年生のとき、祖母の家で削って以来」
「趣味で絵を描くのでよく削っていたが久しぶり」
と各々真剣なまなざしで鉛筆を削り始めた。約10分後、商品開発部デザイングループの先輩社員が削り方の見本を披露。新入社員たちよりはやく、簡単そうにスルスルと削っている。
「あまり力を入れる必要はないです。でも芯は『研ぐ』ような感じで」
他の先輩社員たちも「丁寧だね」「今年は、みんな危なげがなくていい」と声をかけていた。
新入社員たちは、先輩の言葉をもとにさらに丁寧に削っていく。「確かに芯は『研ぐ』ようにすると尖る」と1本削るごとに上達しているのが自分でも分かったようだ。
実際に削ってみての感想を聞くと、
「入社前から聞かされていたけど『本当に入社するんだ』と実感しました」
「こんな入社式を行うなんてユニークな会社ですよね。ユニだけに」
と楽しそうに話していた。
5年前の手紙も返却 内容は「青臭すぎてここでは言えない」
進行役の「では、5年後の自分に手紙を書いてください」という声に、新入社員は少しざわめく。何を書こうか迷っていたり、すらすらと鉛筆を滑らせる人もいたり、人の様子をうかがったりなど少しずつ新入社員のカラーが見えてくる。ある人は、
「わくわくしていますか。汗水垂らしていますか。笑顔を大切に」
と5年後の自分に質問を投げかけ、ある人は「笑顔」「感謝を忘れずに」などと短く所信表明をしていた。「鉛筆で書く」ということを通して、
「普段は芯が尖り続けるシャーペンを使っているけど、鉛筆は書くたびに太さが変わっていく。こうして書いてみて、鉛筆は自分らしさが出るなあと思いました」
と改めて鉛筆の良さに気付いた人もいたようだ。全員が書き終えた手紙と次に会うのは、5年後だ。
そしてこの後、「5年前に入社した新入社員」に「手紙返却式」が行われた。今回は本社勤務の3人が前に呼ばれ、照れくさそうな顔をして受け取った。その手紙の内容が「青臭すぎてここでは言えない」と会場を笑わせる人も。また別の社員は「『やりがいを見つけて100%以上仕事に向き合う』と書いていました」といい、
「いま、この手紙に書かれていることは出来ていると思います。でも初々しい気持ちを思い出しますね」
と感慨深く話す。入社式は先輩社員の「削る前の鉛筆はそのまま使うことはできません。皆さん自身の持ち味を生かして活躍してほしい」という言葉で締めくくられた。