ブラック企業も生き残れなくなる? 「転職する人が増える」ことの5つのメリット
最近は若い人を中心に転職が増え、「私、こんど転職するんだ」と聞かされてもあまり驚かなくなりました。それでも、転職回数が多いことがネガティブに捉えられるなど、「転職が当たり前」というほどには至っていません。
転職者が多ければ多いほどよい世の中になる、という保証はありませんが、これまでよりも増えたら何か変わることがあるのでしょうか。あえて、若い人たちにとっての「メリット」に絞り込んで、5つの可能性について考えてみました。(文:板橋やゆこ)
1.会社が人を雇いやすくなる
景気が回復したとはいえ、現状では、会社が人を雇うときにはかなり慎重になっています。それは、会社が雇った人の面倒を一生見なければならなくなる可能性があるからです。
しかし「転職する人が増える」世の中になれば、いちど雇った人でも、年齢やキャリアに応じて転職する可能性が高まるわけですから、それを前提に「まずは当面のプロジェクトで必要だから雇ってみようか」という判断がしやすくなるかもしれません。
2. 就職や転職がしやすくなる
会社が人を雇いやすくなるということは、新卒採用のハードルも下がる可能性があります。もちろん新卒一括採用だけでなく、中途採用が当たり前になって、転職先が増える可能性もあるでしょう。
3. 給料が上がり労働環境が改善される
転職市場が活性化すれば、「嫌なら辞めよう」という判断がしやすくなります。その一方で、会社は必要な人材を引き止めたければ、待遇や労働環境を改善する必要があります。
会社に対する従業員の交渉力も高まり、「この条件のままなら転職しますよ」というセリフも言いやすくなります。「不満はあるけど転職先が見つかりにくいから、この会社にしがみつくしかないよな…」という悩みも減るかもしれません。
4.ブラック企業が生き残れなくなる
いまだに「サービス残業の強要なんて、違法でもブラックでもない!」と考える経営者や管理者は、数多く存在します。しかし転職が当たり前の世の中で、部下にそのような働かせ方をしようとすれば、すぐにまともな条件の会社に移られてしまいます。
雇用の流動性が低いから日本にはブラック企業が多いのだ、という指摘する人もいます。「嫌なら辞めろ」が脅しとして通用しない世の中になることが、ブラック企業が一番恐れていることなのではないでしょうか。
5.「働かないおじさん」のために若い人が犠牲にならずに済む
これは全員にとってメリットかどうか分かりませんが、少なくとも若くて普通以上の能力を備えるビジネスパーソンにとって、「働かないおじさん」は大迷惑です。なんせ自分より働きが悪いのに、自分の稼ぎからより多くの給与を得ているのですから。
「働かないおじさん」のいる会社は、能力のある若者の報酬が低く抑えられているので、転職の動機となります。働きのよい若者に辞められては会社が困るので、「働かないおじさん」の給与を低く抑えたり、ある程度働かなくなったら退職してもらったりして、若い人たちの昇給カーブを上げなければならなくなります。
そんなことをしたら「働かないおじさん」の居場所がなくなってしまう、と反論する人もいるかもしれません。しかし、彼らも転職先が増えることで、新しい居場所を探しやすくなるでしょう。もっとも、従来のように「過去の栄光と貢献」を言い訳に、働かずに会社に居座ることはできなくなるのですが。
「使い捨てを助長するだけだ」という批判もあるかもしれませんが、転職先がいくらでもあれば、別にその会社にこだわる必要はないでしょう。もしかすると企業別労働組合の必要性も低くなり、代わりに職種別組合が重要になるのかもしれません。
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