「社長は赤字経営が続いていた会社を立て直したゴリゴリのやり手」だった。しかし「結果を出せば出すほどに社員に対する敬意が失われ、傲慢な態度や言葉が続くように」なっていたという。ようするに社員からは煙たがられていたようだ。ある日、こんなことがあった。

「そんな社長から社員に対して、寝耳に水な決定事項と『それに対して起こりうる問題を超短期間で出せ』というメールが送信されました」

社員の誰もが「また始まった…」と落胆していると、社長に対して「その上司からの返信メール」が飛んできたという。

「その決定事項を知らなかったこと、社員が知らないままに上層部で進めたならその上層部で提示された短期間内に問題を出せばいいといった内容でした」

これを「誰もが上司の的を射た反論に清々しく思っていました」と男性は振り返る。しかし社長の機嫌を損ねたようで……

「社長が直接上司の元にやってきて『やるのかやらないのか』と声を荒げて話しはじめました」

社長から憤りをぶつけられた上司だったが、「私の意見はメールに記した通りです」と反論。怒った社長は「社長に向かってそんなこと言えるんだな。敬意を払えないのか」と怒鳴ったという。そこで上司はこう応じた。

「張り詰める空気の中、上司は『社長だろうが何だろうが社員に対して感謝や謝罪もできず敬意を払えないような人間に私が敬意を払う必要はない』と一言。社長は絶句し、出ていきました」

周囲もさぞかし胸のすく思いだったことだろう。気になるのは上司のその後だが……

「今でも上司は会社に居ます。 若干ですが社長の雰囲気もあれから変わったように思います」

と報復人事などもなく、多少は社長の態度を改めさせることができた模様。男性は「後から聞いた話ですが」と前置きし、

「このあと『社長の最近の言動に社員が信用を失くし、疲弊している』といった話を直接社長室に出向いて話したらしいです」

と上司のどこまでも筋の通った行動を明かした。