業務内容は下水道の調査で、マンホールに入り水道管内を見て修復や清掃が必要か否かを調べる仕事だった。男性は元々フィールドエンジニアとして似たような仕事を過去に経験しており、求人は「かなり良い条件」だったと語る。
「9時から18時定時、土日休みで日勤のみという、インフラ現場系としてはかなり良い条件で募集がかかっていました」
「ですが実際は事務所に朝6時集合、元請けの集合場所に7時着、そこから移動をして9時から18時まで作業時間でした。終わると朝の逆の順を辿り、事務所に着くのは大体19時半くらいです」
つまり拘束時間はおよそ13時間半にも及んだ。しかも「残業、早出カウントはありませんでした」という。6~9時までの時間が無給だったのだ。男性は6時には事務所に出ているのだから、本来は6時から勤務開始とされるべきだろう。この実態についてどの時点で気付いたのだろうか。
「採用から初日の勤務まで少し間があり、こちらから電話して当日のことを聞いた時に発覚しました。定時が9時のはずが6時出社と聞いて『マジか』と衝撃しかなかったです」
ギリギリ入社前に知る事にはなったが、今さら入社を拒否することもできなかった。実際に働きだすと
「ちょうど入社した時期は年末の繁忙期で、数日後に夜勤になりました。1か月の半分ほど夜勤でしたね」
と唖然とするようなことも。もちろん夜勤手当もなかったという。
「夜勤もあるんですね!書いたほうがいいですよ!」と皮肉を放ったが
不満や違和感を抱えつつも働き始めた男性。初めて夜勤までこなした帰りの車内で「勤務の感想」を求められたとき、こんな風に返したという。
「『求人サイトの記載より開始の時間が早くてびっくりしました!』『夜勤もあるんですね!書いたほうがいいですよ!』と、少しだけ遠回しにネチネチ言いました」
しかし相手は「そうだね、書いておこう」と淡々と答えるのみだった。結局、こうした皮肉を言うだけでは収まらず1か月で退職を決めた。辞める時にはストレートに「求人と内容が違うので辞めます」と伝えたそうだ。
「私だから文句は言いませんが、人によってはもっと大ごとになる可能性もあるので、しっかり嘘偽りなく書くことを強くおすすめしておきました。ばつが悪い感じになりましたが、結果として引き留めなどにはあわず、辞めさせてもらいました」
「この求人はまだ存在しており、内容は相変わらずです」
ちなみに、1か月分の給料はいくらだったのか。
「手取り給与は諸々引いた後で17万程度でした。前職は半導体検査装置メーカーでの技術職で、10万円くらい減っています。自宅から遠かったので転職をしましたが、これは失敗であったと言わざるを得ません」
と反省を口にした。手取り27万円から17万円に減ったとすれば、後悔しかないだろう。現在は「自営業にシフトした為、会社勤めほどではありませんが下水道の管路調査よりは手元に残る状態」とのことで、時間や休みも自由で生きやすくはなったと語った。
後日談として、「実はこの求人はまだ存在しており、内容は相変わらずです」と警鐘を鳴らすように語っている。
「いまだに集合がめちゃくちゃ早くて『9時というのは現場の開始時刻』であることには一切触れていません。繁忙期の夜勤についても触れないままになっています。給料は日給月給から月給に変わったようですが、とても見栄えの良い求人になってて、頭空っぽな時なら応募してしまうかもしれませんね……」
会社としても見栄えだけでも良い求人にしないと人が集まらないのかもしれないが、結局はこうして会社に不信感を抱いてしまう。人手不足に陥る現場仕事の悪循環がうかがえた。
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【即行退職シリーズ】