男性は主に商業施設の内装の設計を行い、図面だけでなくCGも作成していた。試験は「店舗設計に於いて必要なことが作図できるか確認する」という趣旨のものだ。
「業務中に少しずつ覚えればいいものをわざわざテストにして、業務を滞らせるのはあまりにも理解不能でした。僕は言うこと聞かなくて女性上司から嫌われていたせいか、採点が厳しくされていましたので、再提出になることも人より多かったです」
また連続で赤点を採ろうものなら、社長からひどく罵倒された。
「『なんでお前はこんなのもできねーんだよ』みたいなことを言われます。僕の同期も言われていました。時間があればできますが、時間制限がキツ過ぎて若手社員の赤点続出に拍車をかけていました。当時僕は数店舗の物件を抱えており、そんなものできるわけありません」
「それに、建築の仕事なのに建築知識そっちのけでソフトの使い方を評価基準にするので、現場を知らなくてもソフトの扱いが上手いというだけで評価されてしまうのでなかなかに理不尽でした」
そもそも「作図がわからない」という人もいれば、「僕のように作図はできるが時間が足りなすぎて結果的に赤点という人も多かった」という。男性は、再提出のたびに「こんなくだらない試験の再提出のせいで本来作業に使う時間が使えず、残業時間が延びてしまった」ことを、今でも許せないと語る。
早く帰ると「残業至上主義の社長からしょうもない小言が飛んできます」
不毛なテストだけでなく、「みなし残業制なので勤怠管理がずさんで、社員を定額使い放題。超過分の残業代も出ません」と激務への不満は止まらない。
「求人にある勤務時間は10時~19時ですが、実際は21時以降まで残業することがほとんどです。徹夜で作業を終わらせないといけないこともありますが、みなし残業が月45時間分で、月120時間残業していても残りの残業時間はなかったことにされます」
なおかつ「仕事が早く終わって早上がりすると残業至上主義の社長からしょうもない小言が飛んできます」というからやり切れない。
「文句言われるのが嫌でカタログを読み漁るフリしたり作図するフリしたりして、皆が帰りだす時間までサボってることも普通にありました」
と不毛な時間つぶしを苦々しく振り返った。長時間労働になりがちなクリエイティブ職とはいえ、残業規制に厳しい昨今の情勢に逆行するような環境だ。
いくら残業しても「報われない」と知り退職を決意
だが男性がついに退職を決めたのは、「徹夜して身を粉にして頑張っても報われないことを知ったとき」だった。
「女性上司が、僕がゴリゴリに作り込んだCGをお客様に提出してくれなくて、ずっと試験の再提出で徹夜地獄の中、新卒の子が作った超雑なCGを承認してお客様に提出しているのを皆がいなくなった夜中に知ってしまったことがありました」
男性は「女性上司のPCがつけっぱなしだったのでこっそり提出状況を確認したらこんなことになっていた」と驚愕の事態を振り返る。
「残業代が出ないだけならまだ頑張れましたが、残業代が出ない上に、徹夜して身を粉にして頑張っても報われないことを知ったときに仕事に対するやる気がなくなってしまったので、翌日退職届を出しました」
ところが話はこれで終わらない。退職後も呆れるようなことに気が付いた。男性が在職中に強いられていた「年賀状のデザイン案を強制提出」という余計な仕事が、いまだに社員に課せられていたのだ。
「社内コンペティションなんだから社内賞が欲しい人だけ提出していればいいのに、全社員強制提出です。退職後の翌年に、会社のホームページに強制デザイン案の数々が堂々と載せられているのを見て声を出して笑ってしまいました。しかも今年になってもまだやっています」
ただでさえ仕事が激務なうえに、「こんなくだらないものまで提出させて、残業時間を無駄に延ばすなんて、ハッキリ言って最悪のクソです」と罵る男性。社員をどこまでもいいように拘束しようとする会社の姿勢を
「ブラック企業は売り上げに繋がらない無意味なことが大好きです」
と皮肉を込めて批判した。現在は現場で働いており、納得のいく労働環境で休日の趣味も充実していると語る。加えて、無駄に細部にこだわった定期試験の無意味さを、改めて実感しているそうだ。
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