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創作経験ゼロ!なのに、突然仕事を辞めてラノベ作家を目指した男性の話

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人は、追い込まれると、得体のしれない力を発揮できることがある。あえて後戻りできない場所で戦う「背水の陣」という言葉があるぐらいで、一生懸命何かに取り組むときに、集中力を高めるために、自分自身を追い込んでいく作戦を取る人もいるだろう。

ただ、自分を追い込んだからといって、必ずしも結果に結びつくとは限らないのが人生だ。今回は20代のころ、勤務していた仕事を辞めて、創作経験ゼロからライトノベル作家になるため、1年間無職で頑張った経験のある男性にその時の話を聞いてきた。(取材・文:広中務)

「勝算はあった」と語る男性

本人いわく「ごく普通の社会人」として暮らしてきた男性が、突然「ライトノベル作家ならなれるんじゃないか」と思ったのは、まだ20代後半だった2009年のことであった。

「新卒である中小企業に勤務していたのですが、リーマンショックで不況続き。退職勧奨なんかも行われていたんです。このまま働いていても、先行きは暗いからなんとかしなければならないなと思って退職を決めたんです」

そのとき、目指したのがラノベ作家。若気の至りだったというが、男性には本気で勝算があると思っていたそうだ。

「大学では国文学を学んでいたし、本を読むのは好きだったんです。自分で小説は書いたことはなかったけれど、脳内で面白いストーリーをよく想像していました。だから、自分でも書けばモノになるんじゃないかと思ったんです」

ただ、そもそも創作経験はゼロ。そこからの挑戦に不安はなかったのだろうか?

「いや、ホントにイケると思っていたんです。漫画に比べて、小説なんて読む人は少ないでしょう。そんな中でライトノベルはアニメ化されている作品も多いし、毎月、数多くの新刊が書店に並んでるじゃないですか。これだけ出版社が多いなら、自分もどこかにひっかかるんじゃないかと思えたんです」

その楽観的な前向きさが眩しすぎる。ラノベというよりも、むしろ昔の少年漫画みたいだが……。さて、まさに「当時は、人生を舐めていた」と語る男性が、まずやったのは執筆のための環境づくりだった。

「当時付き合っていた彼女と半同棲状態だったのですが、自分の部屋は解約して転がり込みました。それで、貯金から100万円を渡して

なんとか1年間は面倒をみてくれるように頼みました。もちろん、家事は自分がやるという条件付きです」

常識的に考えて、「作家になるので、仕事しない」なんていう話を受け入れてくれるパートナーは少ない。ラノベのヒロインさながらの優しさだが、「本当に、よい相手に恵まれていた」と男性は語る。

さて、見よう見まねで作品を書き、初めての作品が書き上がったのは3ヶ月後のことであった。ところが、意気揚々と彼女や友人に見せたところ「完全に自信を打ち砕かれた」という。

どんな作品だったのだろうか気になったが、「もう処分した」と見せては貰えなかった。内容は学園を舞台にした純愛モノだったそうだ。うわ、黒歴史じゃん……。

「自分の好きなシチュエーションだったので、サクサク書けたつもりだったんですが、モノローグが多いとか、漢字が多いとか、けちょんけちょんでした。ずっと地の文で描写が続いたり……今思うと、まったくライトじゃなかったですね」

それでも男性はめげずに、いくつかの作品を書き上げた。簡単に折れない強靭なメンタルは見上げたものだが、残念ながら面白い作品にはつながらない。そうこうしているうち、男性自身もライトノベル作家を職業にするのは難しそうだと悟ってしまったという。

「当時からすでに、ネットに作品を投稿している人は大勢いました。でも、たいていの人は、仕事の合間に楽しみながら書いたりしているわけでしょう。自分みたいに、切羽詰まって書いても、人を楽しませることなんてできないと思ったんです」

そう。「背水の陣」を敷いたからといって成功するとは限らない。むしろ負けるときにはボロ負けのリスクがある作戦なのだ。ただ男性がラッキーだったのは、例の彼女が1年間我慢して支えてくれただけでなく、立ち直るきっかけまで与えてくれたことだった。

「ちょうど一年目を迎えて、彼女から“休暇は終わったんだから就職活動して”と尻を叩かれました」

男性は彼女の言う通り、完成作品を新人賞に応募するところまではやり切って、その後すっぱりと諦めて就職活動を始めたそうだ。

現在40代となり、都内で会社員をしている男性。ラノベ作家を目指していた20代だったころの1年間を、どう振り返るのか。

「結局、ラノベ作家を目指したのは人生の休息期間のための言い訳だったんです。とはいえ、この期間は、自分の人生を見つめ直す貴重な時間でした」

男性は「決して後悔はしていないし、人生には無駄な時間も必要だと思います」と話していた。

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