いじめを苦に27年間引きこもる43歳男性 社会復帰を目指してマラソンに挑む | キャリコネニュース - Page 2
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いじめを苦に27年間引きこもる43歳男性 社会復帰を目指してマラソンに挑む

VTRは、43歳の中年引きこもりを抱える69歳の母親の独白からスタートする。

「親として何をしてやれば良いのかわからなくなって……」

母子は静岡県にある団地の一室で暮らしている。3DKの立派な部屋ではあるが、そこら中に書籍が溜まって足の踏み場もない。息子の直樹さんはずっと家の中に閉じこもりっきり。1人では外に出られない、正真正銘の引きこもりだ。

直樹さんの容貌は、43歳と言われればそう見えるし、未成年と言われればそうも見えてしまう。顔立ちが幼いように感じられた。引きこもっているうちにうつ病を発症し、薬を服用している。

物音に過敏なようで、日中は横になっていても野外から聞こえる些細な音が原因でなかなか寝付けないという。何をするでもなく家の中に篭っていると、体力も消耗しないから寝るのも難しいだろう。

43歳で初めての買い物、停滞した時間が動き出す

直樹さんは、元々かなり活発な性格をしており、中学生時代はサッカー部で活躍していたという。しかし、在学中に足を痛めてしまい、大好きなサッカーを続けることができなくなってしまった。

さらにこの時期、いじめの標的となり、担任も見て見ぬふりをし、友人も彼を助けることはなかった。孤立し、他人が恐ろしく感じた直樹さんは、とうとうある時を境に、外出すらしなくなった。

撮影から半年が経った頃、この親子に変化が生じた。直樹さんが部屋を整理する意思を見せたのだ。家具店を訪れるのは、43年の人生の中で初めてのこと。驚くことに、レジでお金を払うのも初めてだったというが、何とか自力で買い物を完了させた。止まっていた時間が、やっとこさ動き出した。

「初めて。初めてだ。上手くいったね、夢みたいだ」

感慨深そうに、1人の力で棚を組み立てていく。組みあがった棚に、床を覆い尽くしていた本を次々に収納していく。人生、初体験尽くしの1日だ。

マラソンを経て社会復帰を果たし、仕事も始める

そうは言っても、27年続いた暗い日々がそう簡単に終わるものでもない。直樹さんは相変わらず自立する様子は見せず、高齢の母は体力、精神、共に限界を迎えていた。そんなある日、親子は8時間かけて和歌山の山里を訪れる。そこには、社会で生き辛く感じている人々が集う施設があった。

施設の名は「共育学舎」。無料で食事、宿泊が可能で、義務もないコミュニティである。

寝食の心配のないこの施設では、人生に思い悩んだ人々が、全国からやってくるという。

「生きているだけでいい」

この施設の代表、三枝孝之氏にそう言われた直樹さんは、「気が楽になる」と呟き、なんとここでの日々を送るうちに、作業の手伝いも申し出るまでになった。ずっと社会復帰の機会を待ち望んでいたのかもしれない。彼にとって、ここでの生活はそのためのきっかけになったようだ。

再び静岡の自宅に戻った直樹さんは、自立をするためにある決意を固めた。それは地元のマラソン大会に出場して、自分に自信を取り戻すこと。これまで1人では外出もできなかったが、本気で立ち直ろうと考えたのである。思い立ったら後は早かった。

27年ぶりに履く運動靴は朝日に照らされ、直樹さんはたった1人で練習をスタートする。大会当日は大勢の参加者に混じって出走し、道中かなり苦しい局面もあったようだけど、10kmの道のりを見事に踏破した。四半世紀以上にも及んだ暗い日々が、とうとうこのマラソン大会でゴールした瞬間に終わった。

さて、家に引きこもって生活している人は日本中に大勢いるが、どこかでそんな生活を脱却しなければならない日が訪れる。周囲が自立の手助けをしてくれれば良いが、現実はそう甘くない。いずれは直樹さんのように、自分自身の力で立ち直る決意が必要になる。

番組の終盤では、直樹さんの近況が紹介されている。野菜を卸し、レストランに届けるという仕事を手にした彼は、今ようやく社会復帰を果たした。

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