女性は、15年間続けたピアノと、演劇経験を生かした伴奏や演出までこなせるスキルの持ち主だ。特に保育現場では重宝されるはずだが、面接官は「ピアノくらい誰でも弾ける。ほかにはないの?」と冷ややかに一蹴した。
「前職がパソコンの指導員でしたし、使用歴が20年ほどでしたので、『パソコンが得意です』というと『女がパソコン使えるなんて、どうせ大したことがないに決まっている』と言われました」
専門性やキャリアを、性別だけで判断し頭ごなしに否定する。今の時代、これほどリスクを孕んだ発言を、平然と口にする面接官がいること自体に驚きだ。
また、攻撃の矛先は女性本人だけに留まらなかった。履歴書に「息子が保育士になるべく大学に通っている」と家族の状況を記載していたところ、面接官は信じられない言葉を吐き捨てたという。
「男が保育士になろうなんて、気が知れない。よっぽどなにもできないのか」
寒さと度重なる侮辱に、女性の心身は限界に達していた。
「もうそのころには、寒さで頭も回らずとにかく帰りたい気持ちでいっぱいでしたので、最後どんなふうに終わったのかの記憶も定かではないのですが、こんな対応だから落ちただろうな。でもまあここで働かなくてもいいやと思って帰りました」
劣悪な環境から解放されたかに思えたが、さらなる悲劇が女性を襲う。
「その晩からインフルエンザになり、こじらせて肺炎になり散々でした」
入社前にこうした園の本性を見抜けたのは不幸中の幸いと言えるが、病に伏した女性の心中は察するに余りある。
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