駐車場で車に乗り込む際の「ほんの一瞬」の出来事だ。
「私と従姉妹はまだ幼稚園児くらいで、車に乗る前に私の洋服を直そうと母が車の屋根にほんの一瞬財布を置いたつもりでした」
ところが、そのまま車を走らせてしまい、駐車場を出てすぐに気づいて引き返した。しかし、そこにはもう財布はなかったという。店にも届いておらず、「警察に届けましたが見つかりませんでした」と残念な結果に。ほんの数分の間に、誰かが持ち去ってしまったのだろう。
「使えば使うほど手に馴染み、幼い私の憧れでした」
その財布は、単なる入れ物ではなかった。母が結婚前に親戚から贈られた「手作りの革財布」で、幼い女性の目にも非常に魅力的に映る逸品だったという。
「当時の私は事の重大さを理解していませんでしたが、慌てて財布を探す母の姿は今でも覚えています」
自分の服を整えようとしたせいで、母は大切な宝物を失った。その構図は幼心にも深く刻まれたが、母のその後の対応が女性の救いとなった。
「財布を失くした原因は私なのに、母は私を一度も責めませんでした。そのおかげで素直にこのエピソードを話せるんだと思っています」
大人になった今、母に当時のことを聞いても、中身の金額については「覚えていない」とはぐらかされるそうだ。
「私への気遣いなのかもしれません」と女性は綴る。本当に忘れたかどうかは不明だが、娘に余計な負担をかけまいとする母の優しさとして受け止めているようだ。
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