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「お客様は何だ?」
レジの前で動かず、こう凄んでくる男性客。「神様です」とでも言わせたいのだろう。
関東圏で夫婦で30年以上コンビニを経営している山川さん(仮名・60代女性)はこれまで多くの迷惑客に遭遇してきた。ときには上手く切り返したこともあるそう。編集部は山川さんに取材し、カスタマーハラスメントの実態を聞いた。(文:篠原みつき)
年齢確認とレジ袋の確認から始まった理不尽な説教
冒頭のエピソードは7〜8年ほど前。50〜60代とみられる男性客が、タバコを購入しようとした時のことだった。
「レジの年齢確認ボタンを押すようにお願いすると、お客様が『見てわからないのか!何故こんな面倒な事をやらせるのか!』と怒り始めました」
突然の怒声に驚きつつも、山川さんは「申し訳ありませんがご協力よろしくお願いします」と冷静に対応を進めた。
しかし、続く「買物袋はお付けしますか?」というマニュアル通りの確認が、さらに火に油を注いでしまう。
「どうやって持って行けって言うんだ!いちいち!」
男性はそのままレジから動かなくなり、従業員の教育の仕方などについて延々と語り始めたという。
予想外の返答に「ああっ?!」と声を漏らし……
時間はすでに10分ほど経過していた。だんだんとレジには他のお客が並び始め、片方のレジだけでは捌ききれなくなってきた。
「後に並ぶお客様は何故レジが進まないのかと怪訝な様子でお待ちになっていました」
山川さんが男性をレジ横へ誘導しようとしたその時、男性が放ったのが冒頭の言葉だった。
「お客様は何だ?」
それまで「ごもっともです」「申し訳ありません」と耐えていた山川さんだったが、この一言には思うところがあった。
自身がクリスチャンであることもあり、内心では「許してこそ許され、が神様の精神では?」と説教しそうになったという。
しかし、ぐっと堪えてきっぱりとこう言い放った。
「お客様はお客様です」
予想外の返答に、男性は「ああっ?!」と声を漏らした。すかさず山川さんは「お次のお客様がお待ちなので…」と伝えた。
「男性はそこで初めて後ろに長い列ができていることに気が付いて、そのまま帰っていかれました」
一時は来店しなくなったが、驚くことに翌月あたりからはまた普通に買い物に来るようになったという。
「老兵は去るのみ」変わりゆく現場と変わらない喜び
山川さんの店舗の近隣にはパチンコ店があり、負けて虫の居所が悪い客から「いらっしゃいませも言えないのか!」などと八つ当たりされることも少なくない。
「コンビニの仕事は誰でも出来る簡単な仕事と思われている方が多く、とても軽く見られていると感じます」
それでも、最近はハラスメントへの社会的な意識が高まり、本部からの啓発ポスターを掲示するようになってからは、言い掛かりのような絡みは激減したそうだ。
「アルバイトに来てくれていた子が結婚して子どもを見せに来てくれたり、高齢の常連さんに『このお店が好きなのよ!』と言っていただけたり、嬉しいこともたくさんありました」
30年以上の歩みを振り返りそう語る一方で、最低賃金の高騰など、現場を取り巻く環境は厳しさを増している。
「私は『いつでも開いていて助かる』とお客様から喜ばれた世代です。老兵は、去るのみと感じる今日この頃です」
長年地域に寄り添ってきた山川さんの静かな言葉には、変わりゆく時代への複雑な思いがにじんでいた。
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