面接は和やかに進んでいたが、突然、面接官の携帯電話が鳴った。
「『失礼します』と席を外すのかと思いきや、その場で電話に出てしまったのです」
「静かな会議室だったので、会話は嫌でも耳に入ってきます。細かい内容までは分かりませんでしたが、どうやら『採用枠を1人空けるように』という社内からの指示らしいことは伝わってきました」
数分間、男性はただ黙って座って待つしかなかったという。電話を切った面接官は申し訳なさそうな表情でこう言った。
「いやー、縁故採用の依頼があってさ。役員のところのボンボンらしいんだけど、困ったなぁ……ははは」
「あの縁故採用の人が入ったのかな」と今でもたまに思い出す
「……いやいや、今その縁故採用と競合しているかもしれない応募者が目の前にいますよね? 思わず心の中でツッコミました」
驚くべき状況だったが、その後は何事もなかったかのように面接が再開され、当たり障りのない質疑応答を終えて帰宅した。
男性が驚いたことは「二つあります」として、当時の心境をこう明かす。
「一つは、現役の応募者との面接中に、採用枠を動かすような電話を平然とかけてくる会社の体制。もう一つは、その内容を応募者本人に愚痴のように話してしまう面接官の感覚です」
本来なら次は役員面接のはずだったが、結局その先へ進むことはなかったという。「真相は分かりませんが、『あの縁故採用の人が入ったのかな』と今でもたまに思い出します」と振り返る。
幸い、その後は「ご縁のあった別の会社に転職し、充実したキャリアを築くことができました」とのことだ。
「今では笑い話ですが、あれほど『面接で聞いてはいけない話』を聞かされた面接は、後にも先にもあの一度だけです」
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