1年ほど同じ店舗で働いた後、男性は人事異動で別の店舗へ移った。寂しいながらも店長に鍛えてもらった分頑張ろうと実績を作り始めていたある日、本社人事部長から呼び出しがあり、本社の会議室へ行くことになった。
「部屋に入ると、そこには社長、営業本部長、人事部長と本社のお偉いさまが並んで座っていました」
緊張のまま着席すると、営業本部長からとんでもない話を聞かされた。
「店長が不正をし、店舗の売り上げを横領していた。」
その店長は実に750万もの売り上げを不正に横領していたという。男性が呼び出されたのは、一緒に働いていた1年間で不正な動きはなかったか、自分が関与していないかどうかの確認だった。男性は関与を否定しつつ、店長がよく遊びに連れ出し、その都度飲食代などを出してくれていたことを伝えた。
「君はそれをどう思っていた?」
すると、次のようなやり取りとなった。
「君はそれをどう思っていた?」
「あの、羽振りのいい方だなと。店長になればそれだけ稼げるのかなと思っていました」
人事部長の問いに、いやな汗を流しながら答えたという。
「多分、おごってくれていたお金はおそらく横領のお金です。そのお金でさんざん遊んで飲んだのは事実なので、自分も何かしらペナルティがあるのではとヒヤヒヤしました」
しかし、会社側からの返答はあっさりとしたものだった。
「君は何も知らなかったということで、話は了解した。今日はご苦労だった」
と、そのまま解放された。思い返すと、飲食代だけでなく同じ時期に車を新車に買い替えるなど、店長は結構な散財をしていたという。当然、その店長は解雇となり会社を去った。
「せっかく店長にまでなったのにもったいないと思いましたし、奥様もまだ3歳のお子様もいたので、それから大変だろうなと思いました。まだ若かったころの尊敬していた上司の不正で思いが逆転した出来事でした」
店長を慕っていた男性にとって、苦い記憶となってしまったようだ。
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