契約書類を取り交わす当日、物件を管理する地場会社の女性社長が、突然こんなことを言い出した。
「ああ、そういえば言ってなかったんだけど。この部屋、刺傷事件があった部屋で安くしてたのね。まぁ、死んだ物件じゃないからいいわよね?」
客の2人も男性も、思いがけない告知に唖然とした。
「確かに、人が亡くなっていなければ告知条件には当てはまらないかもしれませんが、後々のトラブルを避けるために事前情報を出すのが通例になっています。いまだにこんな悪徳な不動産屋がいると考えると、私も腹が立ちました」
そこで男性は、女性社長にこう抗議した。
「それを契約日当日に申告するのは卑怯じゃないですか? 死んでないから大丈夫だというのはあなたの価値観であって、それでもいいかどうかを決めるのはお客様です」
客はその場でキャンセルを申し出た。女性社長が「せっかくリフォームした」「清掃業者を入れてきれいにした」などと不満を言い出すと、男性はさらにこう告げた。
「審査から今日までの日数で、ほかにいい物件があったらそちらを選べたのに、あなたは損害賠償を訴えられても文句言えませんよ!」
男性が毅然と抗議すると、女性社長は「悪態を吐きながら帰っていきました」という。
半月後により良い物件へ「鍵の引き渡し日に何度もお礼を伝えられ」
一方、男性の対応は客に喜ばれ、改めて物件探しを任されることになった。その後についてこう振り返る。
「ぜひほかの部屋を探してほしいと、予定よりも時間はかかりましたが、それから半月後には、よりいい物件が見つかり無事に契約をされました。もちろん、変な事件がなかったかどうかは確認しました」
一連の事情を伝えると、次の物件の管理会社も理解を示し、丁寧に対応してくれたそうだ。
「鍵の引き渡し日に何度もお礼を伝えられ、誠実に仕事をすることの大切さを改めて学んだのでした」
と結んだ男性。予定より時間はかかったものの、結果的にはいい経験になったようだ。
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