大企業の約9割、中小企業の約7割が今年賃上げを実施 非正規社員の格差を是正する動きも
大企業の賃金の引き上げ方法を見ると、「定期昇給」が86.6%で最も多く、「ベースアップ分」(53.9%)が続いた。引き上げ額は定期昇給では「月額2000円?4000円未満」が48.3%、ベースアップでは「月額1000円?2000円未満」が58.3%で最も多い。
多くの大企業では、非正規雇用労働者の処遇改善を行っているが、具体的な内容は、「月例給与の引上げ」(51.4%)が最多で、半数以上が実施。一部では、「表彰制度の導入または拡充」(6.0%)や「育児支援手当・介護支援手当・家族手当などの導入または拡充」(6.0%)を行うケースもある。
キャリアアップ支援についても、「正規雇用への転換を行った」と答えた企業が76.5%あった。非正規社員にも賃上げやキャリアアップ支援が実施されるなど、格差是正の動きが見られる。
従業員の「実質賃金の引上げにつながる取り組み」には「有給休暇取得の奨励」(91.9%)が最も多い。具体例としては、賞与算定期間中の育児・介護休業取得者に対して最低保障額を支給する、社内託児所の設置などが挙がる。
中小企業では「従業員の引き留め」のために賃上げ実施
中小企業の賃金引き上げ方法は、「定期昇給」が50.4%で最も多く、「ベースアップ」は22.1%にとどまる。定期昇給による引き上げ額の平均は「月額4599円」、ベースアップでは「月額3678円」となっている。
中小企業における賃金の引き上げ理由の1位は「人材の採用・従業員の引き留めの必要性」で、正社員(49.2%)、非正規社員(47.0%)ともに同じ理由だ。しかし2位を見ると、正社員は「業績回復・向上」(34.3%)だが、非正規社員は「最低賃金引き上げのため」(38.3%)と、雇用形態によって理由に違いがある。
働き方改革実現会議で示された同一労働同一賃金ガイドライン案について、本調査以前から「内容を含め知っていた」と答えた中小企業は42.0%にとどまり、「内容を知らない」の回答も30.7%あった。
同ガイドライン案への対応に関する懸念材料について聞くと、「人件費の負担増」が81.3%で最多。「就業規則・賃金規定等の見直し」(59.5%)、「従業員への説明責任」(40.4%)が続いた。