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「管理職に誰でもできる業務をさせる」のはパワハラ? 厚労省の指針案まとまる

パワハラに該当しないケースとは?

パワハラに該当しないケースとは?

厚生労働省は11月20日、パワーハラスメントに「該当しない例」を盛り込んだ指針案を労働政策審議会の雇用環境・均等分科会に示した。同分科会では、2020年6月にパワハラ防止措置を企業に義務付けた「改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)」が施行されるのを前に、職場でのどういった発言やふるまいがパワハラに該当するかについて検討を重ねている。

今回の指針案では、パワハラを「身体的な攻撃」「精神的な攻撃」「人間関係からの切り離し」「過大な要求」「過少な要求」「個の侵害」の6つの類型に分類して定義。それぞれについて、パワハラに該当すると考えられる例、該当しないと考えられる例を明記している。

“遅刻など社会的ルールを欠いた従業員” 強く注意するのは……

身体的な攻撃では「誤ってぶつかること」がパワハラに該当しないとされている。該当する例には「殴打、足蹴りを行うこと」「相手に物を投げつけること」が挙げられている。

精神的な攻撃については「遅刻など社会的ルールを欠いた言動が見られ、再三注意してもそれが改善されない人に対して一定程度強く注意」「企業の業務の内容や性質等に照らして重大な問題行動を行った人に対して、一定程度強く注意」はパワハラに該当しない。

一方、該当するケースとして「人格を否定するような言動」「長時間にわたる厳しい叱責」「大声での威圧的な叱責」「能力を否定し、罵倒するような内容の電子メール等を当該相手を含む複数の労働者宛てに送信」といったことが挙げられている。

人間関係からの切り離しでは「新規採用した人を育成するために短期間集中的に別室で研修」「懲戒規定に基づき処分を受けた人に対し、復帰させる前に一時的に別室で研修」はパワハラに当たらない。逆に「意に沿わない人を仕事から外し、長期間にわたって別室に隔離したり自宅研修させる」「一人に対して同僚が集団で無視をし、職場で孤立させる」といった行為が該当するとしている。

該当しない例「能力に応じて、業務量や内容を軽減すること」

過大な要求については、該当しないのが「育成のためにも少し高いレベルの業務を任せる」「繁忙期に業務上の必要性から、担当者に通常時よりも多い業務の処理を任せる」といったケース。一方、「長期間にわたり肉体的苦痛を伴う過酷な環境下での直接関係のない作業をさせる」「教育していない新卒採用者に対し、業績目標が達成できなかったことを厳しく叱責」「私的な雑用の処理を強制する」はパワハラになる。

過少な要求では「能力に応じて、一業務内容や業務量を軽減する」はこれに当たらない。しかし、「管理職を退職させるため、誰でもできる業務をさせる」「気にいらない人に対して嫌がらせのために仕事を与えない」についてはパワハラになるとしている。

プライベートへの過度な立ち入りを指す「個の侵害」では、「配慮を目的に、労働者の家族の状況等をヒアリング」「了解を得て、性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、必要な範囲で人事労務部門の担当者に伝えて配慮を促す」は対象外。一方、「職場外でも継続的に監視したり、私物の写真撮影をしたりする」「性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、了解を得ずに他人に暴露」は該当するとした。

ネット上では「パワハラ逃れのためのガイドライン」との指摘も

同省は今後、公の意見を求めるパブリックコメントを実施する。開始時期は未定だが、期間は1か月程度を予定。寄せられた意見を反映した上で、年内をめどに最終的な指針を確定する。

今回の指針案を受けて、ツイッター上では

「これってまんまパワハラ逃れのためのガイドラインだよな」
「なんでパワハラ規制の指針案にわさわざ該当しない非該当例を載せたのかね。窃盗罪の法律作るときに『こうすれば罪に問われないよ』って例をわざわざ書くだろうか?」

と企業側が”該当しない例”を拡大解釈した「パワハラ逃れ」を懸念する声が挙がった。こういった指摘に対し、厚生労働省の担当者は

「指針の例がすべてではなく、代表的な言動の類型を列挙したに過ぎない。事業主は広く相談に応じるとともに、客観的に事実確認を行うことが重要で、個別事案の状況などを踏まえて総合的に判断してほしい」

と見解を述べ、「今後、周知活動をしていく中で併せて呼び掛けていく」とした。

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