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外資系企業の人事制度、日本人には馴染まない? ”会社”に対する考え方の違い

日系企業と外資系企業の人事は何が違うのか

日系企業と外資系企業の人事は何が違うのか

世界的に見ても長寿企業が多いのが日本の特長であることは有名な話ですが、IMD国際競争力ランキングにおける日本のランクは2018年に25位、19年30位、20年34位と大幅に後退してしまいました。

高度成長期に賞賛された日本型経営もかつての勢いはなく、ネガティブな印象さえ持たれています。日本型経営の人と組織を支える人事と外資系の人事との違いは何か、あえて「日系」「外資系」と表現し、その違いについて述べていきたいと思います。(文:People Trees代表 東野 敦)

会社は「社会のもの」と考える日系企業

SDGsが唱えられるよりずっと以前から、日本企業では近江商人の経営哲学として知られる「三方良し」の言葉に代表されるように、会社は社会全体のモノであり、株主やオーナーだけのモノではない、という考え方がベースにありました。

全員で企業理念を唱和し、社歌を歌い、運動会や懇親会を通じて家族・村として一つの社会を築きながら、地域に雇用を生み出し、地域と共に繁栄してきました。その中核を担う社員が新卒で一括採用されたいわゆるプロパー社員です。ゼネラリストとして育成され、一企業の中で定年まで勤めあげる仕組みを構築することが最も重要でした。

一方外資系では、会社はあくまで株主を中心としてステークホルダー(株主を中心とする)のモノであり、ステークホルダーに利益を還元していくことが会社としての評価になるという考え方に立ちます。

そのため、利益を生み出し続ける為に常により優秀なプロフェッショナルを外部から採用していくことが最も重要なことになります。プロ人材を惹きつけ、採用し、離職を防止するために企業理念で目的意識を共有し、エンゲージメントが高まるよう職場環境を整えることに力を注いできました。

日本型の限界、外資型の限界

日本型人事制度の限界は「会社が社会である」ことに起因します。社員は社会である会社につい甘えてしまい、会社にしがみつき、ゼネラリストキャリアを歩んでいる間に能動的な努力を怠り、その結果、専門性に磨きをかけて企業を渡り歩く外資系企業のプロフェッショナルに差をつけられてきました。

一方で、外資系人事制度を日本で導入すると難しい点もあります。コンプライアンスというルールを定め、成果と能力を厳格に評価し、次々と優秀な人材を採用しては不要になった人材が退出するように促す仕組みは、日本人の考え方には馴染まない部分があるのではないでしょうか。

その結果、「日系」と「外資系」という言葉が今も厳然と存在し、日系企業で育ってきた人材を外資系人事は「専門性がない」と疑問視し、日系企業の人材は外資系に対し「人間味がない」と嫌悪感を抱くという悪循環が起きています。

日系企業と外資系企業、これから求められる人事制度とは

世界的に企業は社会の為に存在するという気運がこれまでにないくらい高まっています。ミッションではなく、目的(パーパスとも最近は言います)でつながり、目指していくという点で既に国境も企業の違いも無くなっているのではないでしょうか。

そのような中で日系企業の人事に求められるのは、改めて社員に対し所属している企業の存在意義を再確認し、従業員の夢と企業の存在目的を少しでも一致させ、一人ひとりがプロとして業務を行うエネルギーに転化することです。

また、日系企業出身者をフル活用したいと考える外資系企業の人事は、能力の可視化や採用だけではなく、日本人の社会貢献意識や、継続的にパフォーマンスを発揮していく誠実さなど、簡単には可視化できない中長期的な価値を評価し、多様性や文化を考慮した人事を行って行く必要があると思います。本社の人事制度の的確な運用とベストプラクティスを実行するだけでは真の人材活用にはつながりません。

これからの人事部門は三方良し(地球/社会・ステークホルダー・お取引先・従業員)を目指し、企業を地球/社会全体にとって不可欠なモノにすることで、社会課題の解決と、地球全体の繁栄につなげるという意識を持っていく必要があります。

【東野 敦】
SUBARU・本田技研工業・江崎グリコにおいて人事を担当。主に海外進出や現地法人・国内グループ会社の人事部門の支援を行い、担当した国は20か国以上に上る。2019年にPeople Trees合同会社を設立。大手企業の副業メンバーを束ね、企業の経営者と共に志の溢れる人・組織を作るべく奔走中。【企業サイト:https://peopletrees.co.jp/

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