その理由は”附属校”の仕組みにあります。学校名を見ると同じ大学の附属校に見えても、「附属校」と「系列校」という違いがあります。
例えば、早稲田大学だったら、附属校は「早稲田大学高等学院・高等学院中学部」「早稲田大学本庄高等学院」。一方、「早稲田実業学校」「早稲田中学校・高等学校」などは系属校になります。”早稲田”がついても、すべてが附属校というわけではありません。
附属校と系列の学校の大きな違いは、内部進学率です。附属校は内部進学先の大学が経営母体で、一般的に内部進学率は90%以上になります(先述した早稲田大学の附属校は原則100%です)。
しかし、系列の学校となると、経営母体が異なっており、大学から推薦枠をもらっている状態です。そのため、内部進学率は10~90%以上と学校によって異なります。
そのため、内部進学でその大学を目指す場合はどちらの学校に行くか、内部進学率はどの程度かチェックすることが必要になります。内部進学率が低い学校ほど勉強を頑張らなければならず、結果、塾に通われる生徒も多くなる、というのが現状です。
ただ、確実に大学に内部進学できる付属校に入学したとしても、子どもにとって「好きな勉強・やってみたい勉強ができるか」「憧れのあのキャンパスで大学生活を過ごせるか」を考えることはとても大切です。
というのも附属校では成績上位者から順番に学部を選べることが多く、成績下位者は人気のない学部学科に進学せざるを得ないことになります。複数キャンパスがある大学なら人気がない、交通の便が悪い、学部が1~2つしかない、といったキャンパスしか選べないことも。
大学ではキャンパスごとに大学祭を行うところが多いのですが、その盛り上がりや内容の充実度でも大きな差が生まれます。そのため、やはり希望の学部・キャンパスに行くためには、勉強を頑張らなければいけません。
結局、附属校と進学校、どっちに進学すべき?
学校ごとに個性がありますが、やはり附属校に入ると、高校・大学受験をする場合と比べれば格段に勉強量は少ないと言えます。実際、保護者からは「全然うちの子は勉強しない」という声も多く寄せられています。
とはいえ、いざ入学すると「思ったよりも課題や勉強量がある」と感じる人が多いようです。同程度の偏差値帯の生徒が集まるため、地元の公立中学校よりは間違いなく出題される問題は難しく、「どうしても解けない」というケースもあります。
結局、大学附属校と進学校、どちらがいいのか。こういった相談は多いですが、回答はやはり「家庭の方針や子どもの価値観で変わってくる」です。
附属校は、共通テストの変化、上位大学の難化傾向に影響されないこと。大学受験時に今回の新型コロナウイルスのような予測不能な事態に巻き込まれないメリットはあります。
ほかにも、大学と連携した教育を受けられるため大学施設の利用や、大学教授や大学生を招いた授業がある、ビジネスやリーダーシップ、グローバル観点が身につくなど、受験に縛られない学びが得られるなどのメリットもあります。無人島で生活するといった自由なカリキュラムのある学校もあります。
また、「附属校へのエスカレーターでの進学は、就職活動で不利になる」という噂がありますが、これはキャリアコンサルタントもやっている人間として、実感値は「不利になることはない」です。ご安心してもらえれば幸いです。
一方、「ハードな大学受験を乗り越えることで得られる成長機会を逃す」「周りの影響を受けて勉強しなくなる」「最終学歴がほぼ固定化されてしまう」などの懸念点はあります。
なので、例えば「やりたいことがあって受験に縛られない時間を過ごしたい」「特定の大学に行きたい」「受験時に予測不可能な事態に巻き込まれたくない」という考えを持つ子なら附属校・系列校、「最終学歴をまだ固定したくない」「大学受験というハードな環境に挑戦したい」という子なら進学校が向いていると言えます。
上記のメリット・デメリットと、子どもの価値観や性質、家庭方針を踏まえて、適切な進路相談を考えてみてください。
【筆者プロフィール】】株式会社STORY CAREER取締役 妻鹿潤(めがじゅん)
関西学院大学法学部卒。塾コンサルタント・キャリアコンサルタント・プロ家庭教師などを通してのべ1500人以上の小中高生、保護者へ指導・学習アドバイスを行う。
大手教育会社時代は携わった教室が10か月で100人以上の生徒が入会する塾に。しかし志望校合格がゴールの既存教育に限界を感じ、「社会で生き抜く力」を身につける学習塾を起業。40~50点の大幅な点数アップを実現し、生徒のやる気を引き出すメソッドを確立。入塾待ちの塾となる。
現在はキャリアコンサルタントとして企業の採用支援、大学生・社会人のキャリア支援を行う。ほかにも塾コンサルティング、プロ家庭教師、不登校・発達障害の生徒の個別指導なども行っている。