うまくいっている会社が「変な企業内方言」を使うのはなぜなのか? | キャリコネニュース
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うまくいっている会社が「変な企業内方言」を使うのはなぜなのか?

「変な企業内方言」は何のために?

「変な企業内方言」は何のために?

私が在籍していたリクルートのOB・OGが語る話の中で多いのが、「企業内方言」とでもいうべき独特の言葉やフレーズがあったということです。私も入社したときには、先輩たちが一体何を言っているのかよく分かりませんでした。

自分が常識的なことを知らないのだと恥じて、陰で先輩に言葉の意味を確認したりしていたのですが、何のことはない、彼らが勝手に意味づけして使っていたような言葉も多々ありました。(人材研究所代表・曽和利光)

「ハイ達成」「SNHR」「ATI」に「お前はどう思う?」

リクルート出身者が身近にいる人は「あ、あれだな」とすぐに分かるでしょうが、何のことか分からない方もいるかもしれません。まずは、独特な言葉やフレーズの例をいくつか挙げてみましょう。

「ハイ達成」(目標の120%、150%と高いレベルで達成すること)
「2マンスV」(1Q=3ヶ月の目標を2ヶ月で達成してしまうこと)
「ZD」(ぜんぜんダメ)
「GIB」(ゴール・イン・ボーナス。目標達成時の賞与。人事制度名称も工夫)
「SNHR(先輩内定者引っ張りルート)」(内定者リファラル)
「旧人」(新入社員以外。若くして活躍するためか「若手」とは言わない)
「パツパツ」(目一杯忙しい)
「よもやま」(議題を決めずに行うミーティング)
「やるやら」(やるかやらないか)
「できはや」「なるはや」(できるだけ早く、なるべく早く)
「ATI」(圧倒的当事者意識)
「お前はどう思う?」(部下や後輩に質問された上司や先輩が最初に言う)

いまでは他社にも広がっている言葉があるかもしれませんね。また、当時はまだ国内向けサービスがほとんどであったはずのリクルート社内では、まるで外資系企業のようになぜか横文字(英語)が多用されていました。

例えば、「私はアグリー(賛成)です」「この仕事のアスピレーション(志)は?」「このミーティングのアジェンダ(議題)は何?」「フィジビリで(フィジビリティ〔実行可能性〕の確認=実験的に)やろう」「これはオブリ(オブリゲーション=必達)で」「この学生のフォロワー(動機付け担当者。おそらく英語的には間違い)は誰?」というようなものです。

Googleやサイバーエージェントにも「ジャーゴン」がある

この他、言葉としては一般にも通じますが、社内で合言葉やモットーのように頻繁に使われていた言葉もあります。

「リクルートを使え」(キャリア自立、市場価値重視、流動性の容認)
「リクルートの中で偉くてもしょうがない」(お客様や社会に対する視線)
「言い出しっぺがやれ」(意見を出した人にやらせる)
「分からないことはお客様に聞こう」(大いなる素人集団というある意味の開き直り)

個人的には、働いている当時でも正直違和感がありましたし、若干本来の意味とは違うものも結構ありました。その一方で、恥ずかしい話ですが白状すると、こういう言葉を使っている自分を「少しカッコいいかも」と思ってもいました。

このような仲間内だけで通用するが、外部者にはわけの分からない言葉のことを「ジャーゴン(jargon)」と言います。ジャーゴンは効果的に用いると、同じ言葉を使うメンバーの間でのコミュニケーションを効率化することができます。医者でも法律家でもコンサルタントでも、専門家集団の中にはジャーゴンがたくさんあります。

ジャーゴンは話し手と聞き手の共通のアイデンティティを強化することによって、相手との結びつきを深めたりすることができるとされています。ビジネスインサイダーの記事によれば、グーグルでも社内だけで通用する独特の用語が、少なくとも19個あるそうです。

日本でも、サイバーエージェント独特の企業内方言を使った、ユニークな「サイバーエージェント用語だらけの桃太郎」というブログがネットで話題になったこともありました。

排他的な言葉づかいが一体感につながることもある

ただ、ジャーゴンにはデメリットもあります。人はジャーゴンを自分のステイタスを「盛る」ために使うことがあります。そういう言葉を使っている自分に酔っているわけですが、外から見れば昔の私のような滑稽な存在に見えてしまいます。本当に自分に自信を持っている人であれば、くだらないジャーゴンで自分をよく見せようとなどはしないはずです。

英語ネイティブのバイリンガルよりも、ちょっと留学に言ってようやく話せるようになっただけの人の方が、日本語でしゃべる時にも英語を多用するようなものです。

また、ジャーゴンを多用することは、それを理解できない人にとって疎外感や反発を招くこともあります。ジャーゴンコミュニティ内での一体感と引き換えに、コミュニティ外の人に対して排他的になってしまうのです。

実際、新卒や中途採用でリクルートに入ってきた人たちは、最初はその奇妙な言葉遣いに対して疎外感を感じている人も少なからずいました。ただ、意識的か無意識的かは別として、リクルートはジャーゴンの前者の効果を取ったということでしょう。

当時は「リクルート教」と社外の人から言われるほど、排他的なイメージを少し持たれていたのですが、それでも社内の一体感を重視していたのか、ジャーゴンを奨励しこそすれ、止めさせるような動きはありませんでした。

同じ言葉を使うことは知らず知らずにお互いに親近感を抱かせて、組織の求心力を高めるのだと思います。もし、皆さんの会社が変な企業内方言を使っているとしたら、あまり毛嫌いしないで自分も積極的に使ってみると新しい景色が見えてくるかもしれません。

sowa_book【筆者プロフィール】曽和利光
組織人事コンサルタント。京都大学教育学部教育心理学科卒。リクルート人事部ゼネラルマネジャーを経てライフネット生命、オープンハウスと一貫として人事畑を進み、2011年に株式会社人材研究所を設立。著書に『「ネットワーク採用」とは何か』(労務行政)、『コミュ障のための面接戦略 』 (星海社新書)、『組織論と行動科学から見た人と組織のマネジメントバイアス』(共著、ソシム)など。

■株式会社人材研究所ウェブサイト
http://jinzai-kenkyusho.co.jp/

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