コムシスグループのDX:「グループ会社の枠を越えたシステム統合」で生産性向上を推進 IoTなど新たなニーズへも対応 | NEXT DX LEADER

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コムシスグループのDX:「グループ会社の枠を越えたシステム統合」で生産性向上を推進 IoTなど新たなニーズへも対応

AIJOソリューション【ダイジェスト版】 ~AI・人工知能・DX・安全・省人化~ より

コムシスホールディングスは2003年、いずれも情報通信建設業の日本コムシスと三和エレック(現・サンワコムシスエンジニアリング)、東日本システム建設(現・TOSYS)の3社の株式移転により、純粋持株会社として設立されました。その後も株式交換により、同業の國際電設(現・ウィンテック)や、つうけんを完全子会社化して事業を拡大してきました。

2018年にも同様に、NDSSYSKEN北陸電話工事を完全子会社化。なお、NTT設備事業は認定の情報通信建設会社として3社のみ参画が許可されており、コムシスグループはその一角を占めるとともに、最大の市場占有率(38%)を誇っています。(NEXT DX LEADER編集部)

「ITプラットフォームの共有」でシナジー創出ねらう

コムシスグループの報告セグメントは、事業会社の名前を冠した8つのグループとその他の9つ。2023年3月期の売上高構成比は「日本コムシスグループ」が46.4%を占めています。

決算説明資料には、NTTグループ向け情報通信工事の「NTT設備事業」、NTT以外の事業者(New Common Carrier)向けの「NCC設備事業」、IT分野のトータルソリューションサービスの「ITソリューション事業」、都市インフラに関する電気および土木などの「社会システム関連事業等」の区分があります。

「COMSYS REPORT 2023.3」(2023年7月)より

「COMSYS REPORT 2023.3」(2023年7月)より

2023年3月期の売上高構成比は、キャリア系事業(NTT設備事業が39.7%、NCC設備事業が10.0%)が49.7%、成長事業(社会システム関連事業等が30.9%、ITソリューション事業が19.4%)が50.3%でした。

コムシスグループは2019年5月、中期ビジョン「コムシスビジョン NEXT STAGE 2023」を発表。“One SOMSYSとしてNEXT STAGEを目指す” をスローガンに、「トップライン拡大」「経営統合シナジー創出による利益確保」の2本柱を掲げています。

「トップライン拡大」の方策としては、既存分野のさらなる拡大、新分野への参入、M&A、「シナジー創出」の方策としては、構造改革による効率化推進、ITプラットフォームの共有をあげています。また、「5G」による事業機会の拡大に対応し、変貌する業界の要請にワンストップで応えるとしています。

「2019年3月期 決算説明会」(2019年5月16日)より

「2019年3月期 決算説明会」(2019年5月16日)より

通信インフラの設備投資が減少「厳しい事業環境が続く」

しかし、2023年3月期の連結業績は、売上高が5,890億円、営業利益が429億円。売上高と営業利益の過去最高を更新した前期を下回りました。

これを受けて、「NEXT STAGE 2023」の最終年度計画値は、売上高目標や営業利益目標を下方修正。一方で、成長事業の「ITソリューション事業」「社会システム関連事業等」の合計が50%超(53%)の目標を堅持しています。

「2023年3月期 決算説明会」(2023年5月19日)より

「2023年3月期 決算説明会」(2023年5月19日)より

なお、減収減益の理由について、代表取締役の加賀屋卓氏は「COMSYS REPORT 2023年3月期のご報告」の中で、「NTT設備事業の事業環境が変わりつつある」「通信インフラ分野における設備投資の減少が見込まれるなど厳しい事業環境が続く」としています。

「バックヤード業務の集約」で効率化

コムシスグループは2020年にDX推進部を設立。デジタル技術を最大限に活用し、グループ全体最適で施工力に磨きをかける「価値向上」と、施工力を土台に新たなニーズに応える「価値創造」を追求するとしています。

前者の「価値向上」で最も力を入れているのが「会社の枠を越えたシステム統合」と、これをトリガーにした「業務の標準化」「標準化されたバックヤード業務の全国規模での集約・効率化」です。

「2023年3月期 決算説明会」(2023年5月19日)より

「2023年3月期 決算説明会」(2023年5月19日)より

たとえば、施工状況の検査にあたって、検査者が現場に赴いて検査を実施するのではなく、施工状況の写真を写真検査センターに集約し、ベテラン技術者が施工状況をチェックしたうえで承認/再施工の指示を出しています。さらに、ベテラン技術者の視点をAIに学習させ、判定の自動化による生産性向上を目指しているとのことです。

また、完成写真や現場からの報告内容がテンプレートへ自動的に取り込まれるRPAを活用して工事報告書をバックヤードチームが作成し、施工チームの負担を軽減しています。

さらに、統合されたシステムから得られる全国規模のデータを活用し、これまで地域を見ているだけでは分からなかった傾向を分析して効果的に事故や人為故障を抑止するなど、データドリブンで施工力にいっそう磨きをかけていくとしています。

後者の「価値創造」については、インフラ工事の施工力を土台に、ネットワークだけでなく、端末、サーバ、アプリケーション、セキュリティなど、デジタル化に必要な全ての構成要素に関するスキルやノウハウを揃え、全国の企業や自治体、教育機関におけるデジタル化の推進に貢献するとしています。

「2023年3月期 決算説明会」(2023年5月19日)より

「2023年3月期 決算説明会」(2023年5月19日)より

今後さらに拡大するリモート化やデジタル化のニーズに柔軟に対応するとともに、インフラ・農業・製造業などの分野でIoTと収集データ活用のニーズが顕在化しており、IoT端末やローカル5Gのスキルやノウハウのいっそうの蓄積を目指します。

また、ITソリューション事業を担う会社のひとつ、コムシス情報システムでは、AIを活用した業務効率化サービス「AIJOソリューション」を展開。AIで装着具の有無・装着の仕方の判定を行う「AIJO Safety」や、AIで配筋検査を行う「AIJO 配筋王」AI製品外観検査AI点検ソリューション(動画参照)を提供しています。

RPAの導入で「年間10万時間」の削減を達成

「2023年3月期決算説明会資料」(2023年5月19日)によると、コムシスグループ内の「共通ITプラットフォーム」の構築については、「業務システムの共通化」「経理システムの共通化」が完了。「人材育成システム」の導入を開始しています。

「自動化・省力化」については、中核事業会社の日本コムシスにおいて、RPAの導入208件、2022年度は「年間10万時間」の業務時間削減を果たしています。

「2023年3月期 決算説明会」(2023年5月19日)より

「2023年3月期 決算説明会」(2023年5月19日)より

共通ITプラットフォームを活用した業務高度化の見通しとしては、「エリアフリー業務の一元化(集約)」「エリアグループ連携の推進(体制効率化)」、アプリケーション追加による「通信キャリア系資材業務等の効率化・集約」があげられています。

また、「多様な働き方への対応」として、「リモートアクセス」「コミュニケーションツール拡大」「ペーパーレス化」を進め、コロナ禍対応として始めたリモートワークを「当たり前の働き方」として常態化させる働き方改革を進めています。


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考察記事執筆:NDX編集部

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