TOTOのDX:デジタル技術を使って「新しい顧客サービス価値の創出」と「スマートファクトリー化」を推進 | NEXT DX LEADER

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TOTOのDX:デジタル技術を使って「新しい顧客サービス価値の創出」と「スマートファクトリー化」を推進

TOTO おうちdeショールーム 浴室[シンラ]篇 より

TOTOは1917年に東洋陶器として設立された会社です。国産初の腰掛式水洗便器の開発に成功。戦後は日本初のユニットバスルームのほか、ウォシュレットやシステムキッチン、シャンプードレッサー、トイレブランドのフラッグシップモデル「ネオレスト」などユニークな製品を開発してきました。

2023年3月期の売上高は7012億円。国内住設事業の売上高は4628億円で、同構成比は68%。商品別売上高は、浴室が1079億円、温水洗浄便座ウォシュレットが1037億円、衛生陶器が972億円、水栓機器が905億円、キッチン・洗面が492億円、その他が142億円です。

一方、営業利益は、ウォシュレットの119億円と衛生陶器の71億円で大半を占め、水栓機器が9億円、売上高が最も大きかった浴室は1億円と少なく、キッチン・洗面は赤字でした。(NEXT DX LEADER編集部)

海外住設では中国大陸事業が業績を牽引

海外では17か国・地域に39拠点を設け、海外住設事業の売上高は1886億円で、同構成比は27%。地域別の売上高は、中国大陸事業が851億円と最も大きく、次いで米州事業の535億円、アジア事業の448億円、欧州事業の53億円と続きます。

営業利益も、中国大陸事業が海外住設で最も大きく81億円、アジア事業の71億円が続きます。米州事業は物流コスト上昇の影響により11億円の赤字に陥り、欧州事業は前期の11億円に続き13億円の赤字となっています。

「TOTOグループ統合報告書2022」より

「TOTOグループ統合報告書2022」より

2017年に100周年を迎えたTOTOは、5カ年の中期経営計画「TOTO WILL2022」を2018年4月にスタート。しかしコロナ禍の打撃を受け、業績目標の達成が困難に。2020年4月からは、清田徳明社長の新体制がスタートしています。

新体制では、変化が激しく不確実な経営環境のもとでは、緻密な5カ年計画は有効ではないと判断。長期視点でのビジョンを定め、バックキャスト(あるべき未来像を起点に、いま何をすべきか逆算する思考法)で課題を整理して取り組むべきと判断。短縮化した経営サイクルで機動性を向上し、環境変化に対応する形に方針を転換しています。

この考え方を前提に、2021年4月には新共通価値創造戦略「TOTO WILL2030」を発表。最初の3年間(2021~2023年度)を中期経営課題(WILL2030 STAGE1)として、具体的な目標を定めつつ、環境変化に対応するとしています。

DX推進で「顧客価値向上」「スマートファクトリー化」

TOTOグループ統合報告書2022には「TOTOグループの価値創造モデル」が掲載されています。この中でDXに関わる「デジタルイノベーション」は、研究・開発から調達~生産、物流~販売のバリューチェーンの革新を支えるものとして位置づけられています。

「TOTOグループ統合報告書2022」より

「TOTOグループ統合報告書2022」より

また統合報告書2022の社長メッセージの中で、清田社長は「デジタル化は、さまざまな可能性を秘めている」と題し、DXを強化する3つの取組みを整理しています。

1つめは「顧客価値の向上」。衛生性や快適性を磨き込んできたハード製品と、新しいデジタルサービスを組み合わせることで、時間や場所の成約なしにさまざまなことが可能となり、新しい価値を広げていくことが可能になるとしています。そして具体例として、次のような生活イメージを示しています。

デジタル化された世界につながってくると、スマートフォンで外から操作して、自動でお風呂掃除をし、栓を閉めて、帰った時間にはバスタブに温かいお湯が溜まっているということが可能

2つめは「工場のスマートファクトリー化」。開発において、シミュレーション技術を取り込み試作の回数などを大幅に削減することでスピードや効率が上がり、さらにシミュレーションの3Dデータを製造現場に移管することでミスも減るとしています。

また、現場に蓄積されたデータをAIで分析することで良品の条件を確立しやすくしたり、ロボットの活用で人の作業を楽にしたりすることで、生産効率を上げるとしています。

3つめは「デジタル人材教育」。デジタル化を進める上で重要なのは、担い手である社員であり、全社員のITやDXのリテラシーを上げるとしています。それによって業務スピードを上げ、さらにデータを使いこなせる専門人財を増やすことで現場で保有するデータを分析し、最短の方法で業務に反映させる取り組みを強化するということです。

このほかTOTOグループ統合報告書2022には「デジタルイノベーション」の項目があり、商品・サービスにおけるデジタル化では、清田社長が言及したシステムバスルーム「つながる快適セット」のほか、パブリックレストルーム管理サポートシステムが紹介されています。また、ものづくりにおけるデジタル化では、シミュレーション技術のほか、環境建材における「色調予測AI」の活用が紹介されています。

「TOTOグループ統合報告書2022」より

「TOTOグループ統合報告書2022」より

「きれい・快適」と「環境」を両立させる商品構成を上げる

「TOTO WILL2030」では、売上規模などの経済価値のほか、「社会的価値・環境価値」に関する4つのKPIを設けています。そのひとつが「サスティナブルプロダクツ商品構成比」で、2020年の69%を、2030年に78%(日本85%、海外70%)へと増やすことを目指しています。

「新共通価値創造戦略 TOTO WILL2030」(2021年4月28日)より

「新共通価値創造戦略 TOTO WILL2030」(2021年4月28日)より

サスティナブルプロダクツ商品とは、「TOTO WILL2030」で掲げた「きれいで快適・健康な暮らしの実現」と、節水・節湯・CO2削減、節電、省エネなどの機能による「社会・地球環境への貢献」を両立させる製品を指します。

例えば大便器の場合、フチなし形状やトルネード洗浄、セフィオンテクト(ナノレベルの滑らか仕上げで、汚れが付きにくく落ちやすくなる技術)によって「きれい」を実現しながら、節水により「環境」に配慮する、といった形です。

このような商品群およびサービスを通じて、世界中にTOTOファンを増やしていくための中期経営課題として、マーケティングでは「各国のマーケットの見える化、各国に合った生産~販売の仕組みづくり」、デジタルイノベーションでは「自社だけでは成し得ない価値創出、デジタル技術を活用した事業プロセス変革」を挙げています。

「新共通価値創造戦略 TOTO WILL2030」(2021年4月28日)より

「新共通価値創造戦略 TOTO WILL2030」(2021年4月28日)より

そして「マーケティング革新」「デマンドチェーン革新」「マネジメントリソース革新」を推進する基盤として、コーポレートガバナンスとともに「デジタルイノベーション」が位置づけられています。

日本国内は「リモデル」促進。中国など海外市場の成長に期待

「TOTO WILL2030」は、2018年に95万戸だった新設住宅着工戸数が、2030年には63万戸に減少し、新築着工が年率マイナス3.4%で推移すると予想しており、国内住宅設備を主要事業とするTOTOとしては危機的状況です。

「新共通価値創造戦略 TOTO WILL2030」(2021年4月28日)より

「新共通価値創造戦略 TOTO WILL2030」(2021年4月28日)より

そこで国内市場では「リモデル(住宅の改修)」を促進し、クリーン技術やタッチレス、DXによる見える化などにより「世界のショールーム」になる新しい生活スタイルを形作り、デジタルツールを活用した販売活動の強化などの価値提案をしていくとしています。

「新共通価値創造戦略 TOTO WILL2030」(2021年4月28日)より

「新共通価値創造戦略 TOTO WILL2030」(2021年4月28日)より

一方、海外市場においては、中国大陸・アジアを中心に、各国GDP予測成長率と同水準の成長を期待し、国民の可処分所得水準の向上および購買力のあるターゲット層の増加を予想しており、ウォシュレット普及拡大などによって業績伸長が期待されます。

そこで、中国大陸事業では、圧倒的な品質・サービスとともに、ステイタスを実感できる「ハイブランド」化を図り、普及期に入ったウォシュレットの確固たる地位確立を目指しつつ、環境配慮型の最新工場で消費エネルギーの最小化に挑戦するとしています。

また、2023年3月期は売上高構成比7%と小さかったものの、営業利益は日本住設事業と並ぶ194億円を生み出した新領域事業は、「DXによる社会の変革をTOTOのセラミック事業で支える」をスローガンに、静電チャックなどオンリーワン商品の提供で営業利益率20%以上を目指しています。

「新共通価値創造戦略 TOTO WILL2030」(2021年4月28日)より

「新共通価値創造戦略 TOTO WILL2030」(2021年4月28日)より

YouTube:TOTO おうちdeショールーム 浴室[シンラ]篇

考察記事執筆:NDX編集部

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