ライオンのDX:「成長に向けた事業基盤」としてDXを位置づけ 「習慣づくりの拡大と進化」など3つの基本戦略を推進 | NEXT DX LEADER

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ライオンのDX:「成長に向けた事業基盤」としてDXを位置づけ 「習慣づくりの拡大と進化」など3つの基本戦略を推進

OCH-TUNE「あなたはどっち」篇/30秒/ライオン より

ライオンは1891年、石鹸の製造販売などを行う商店として創業。1896年に良質粉ハミガキの製造を開始しました。1918年にはライオン歯磨とライオン油脂に分かれ、1949年にそれぞれ東証に上場しましたが、1980年に対等合併して現在の社名となりました。

現在の報告セグメントは「一般用消費財事業」「産業用品事業」「海外事業」「その他」の4つ。2023年度の売上高構成比は「一般用消費財事業」が56.8%で、「海外事業」が33.3%。セグメント別利益は「海外事業」が48.3%で、「一般用消費財事業」が27.0%、「産業用品事業」が17.0%を占めています。(NEXT DX LEADER編集部)

「新しい価値創造」と「オペレーション変革」をDXで

分野別の売上高構成比は、ハミガキ「クリニカ」などの「オーラルケア分野」が27.2%、柔軟剤「ソフラン」などの「ファブリックケア分野」が22.8%、解熱鎮痛剤「バファリン」などの「薬品分野」が9.9%、ハンドソープ「キレイキレイ」などの「ビューティケア分野」が9.1%、住居用洗剤「ルック」などの「リビングケア分野」が8.3%、ペット用品などの「その他の分野」が22.7%となっています。

ライオンは2021年2月、中長期経営戦略フレーム「Vision2030」を発表しました。「より良い習慣づくりで、人々の毎日に貢献する(ReDesign)」をPURPOSE(存在意義)に、「次世代ヘルスケアのリーディングカンパニーへ」を経営ビジョンに掲げています。

2021年12月期決算説明資料(2022年2月14日)より

2021年12月期決算説明資料(2022年2月14日)より

ビジョン実現に向けて3つの成長戦略をあげ、1つ目の「4つの提供価値領域における成長加速」では、「オーラル(口腔)ヘルス」「インフェクション(感染症)コントロール」「スマートハウスワーク(家事)」「ウェルビーイング」の領域において、アジアでのプレゼンス拡大を目指すとしています。

2021年12月期決算説明資料(2022年2月14日)より

2021年12月期決算説明資料(2022年2月14日)より

2つ目の「成長に向けた事業基盤への変革」では、「デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進」を掲げ、生活者のより良い習慣づくりに貢献する新しい価値を創造するとともに、効率化・スピードアップを図るオペレーション変革を推進するとしています。

2021年12月期決算説明資料(2022年2月14日)より

2021年12月期決算説明資料(2022年2月14日)より

あわせて「事業インフラの強化」として、生産能力の増強や経営管理の高度化に向けた「基幹システム」の整備、および柔軟性・強靭性のあるSCMの構築など成長に向けた「事業インフラへの投資」を継続・強化するとしています。

3つ目の「変革を実現するダイナミズムの創出」では、持続的に成長する企業への変革の実現を目指し、「コーポレートブランディング」「働きがい改革」「ダイバーシティ&オープンイノベーション」に取り組むとしています。

2030年の目指す業績イメージとしては、連結売上高6,000億円水準で、うち海外事業の構成比が50%程度、事業利益500億円水準などとしています。

工場の自動化進め「ほぼ無人で運営」目指す

ライオンは2022年2月に、2022年から2024年まで3カ年の中期経営計画「Vision2030 1st STAGE」を策定しました。Vision2030の実現に向けて、成長軌道化と新たな成長起点創出、および経営基盤の変革、人材・組織活性化に取り組みます。

2021年12月期決算説明資料(2022年2月14日)より

2021年12月期決算説明資料(2022年2月14日)より

基本的な考え方として、これまでの経営テーマであった「収益性向上」から、PURPOSEを起点として、より大きくより良いインパクトを与える企業への進化を図るために「市場・経済・社会的プレゼンスの向上」を目指すとのことです。

DXは「経営基盤の変革」の取り組みのひとつとして、SCMやサステナビリティとともにあげられています。数量目標としては、2024年に売上高4,200億円などを掲げています。

2021年12月期決算説明資料(2022年2月14日)より

2021年12月期決算説明資料(2022年2月14日)より

また企業サイトには、代表取締役会長の掬川(きくかわ)正純氏が「LIONの未来」を語る「Vision2030特設コンテンツ」があり、この中で「デジタル化の推進について」という項目が設けられています。

この中で、DXの目的を2つに分けています。1つ目の「デジタルを活用して事業を効率化していく取り組み」の例としては、「工場のオートメーション化を進め、ほぼ無人で工場を運営する」ことや「サプライチェーンを完全にデジタル化して在庫を削減し、店頭で品切れが発生しない状態を構築する」ことがあげられています。

2つ目の「デジタル技術を用いて、事業そのものをトランスフォームしていく取り組み」については、従業員の歯科検診や健康診断の膨大なデータを解析すると、オーラルケアの習慣と口腔状態の関連が明らかになっているとし、これを応用して「潜在的にリスクを持っている方をAIで予測し、事前にお知らせして、予防するための習慣を始めることも可能になる」ので、こうした分野でもっとデジタルの力を活用すべきとしています。

また、データのプラットフォーム拡大によって、より精度や提案する習慣の効果を高められるので「プラットフォーム型のビジネス構築にもチャレンジしていきたい」としています。

DX関連機能を集約した「デジタル戦略部」を新設

ライオンはデジタル戦略のスローガンとして「習慣を科学する」を掲げ、DX関連の情報をまとめた企業サイトを作成しています。

2030年ビジョンを『「スピードと効率」を備え、「高度化・新価値の創出」を実現するデータドリブン経営への変革』とし、3つの基本戦略に基づき、DX施策の推進を行っているとのことです。

ライオン統合レポート2023より

ライオン統合レポート2023より

基本戦略の1つ目は「経営管理能力の高度化」で、データドリブン経営への変革の鍵となる「基幹業務システム」を全面的に刷新し、2022年5月に稼働を開始。全社の各種経営データを統合しインフラを構築することで、業務効率を高めるとともに、リアルタイムな情報で意思決定の精度とスピードアップを図っています。

ライオンの基幹システム全面刷新については、次世代ERPスイート「SAP S/4HANA」を中核としていることが、SAPの「お客様事例」に掲載されています。

2つ目は「習慣づくりの拡大と進化」で、人工知能やロボットなどのデジタル技術と自社の研究開発の知見との融合で、口腔内の現在の状態を可視化し、将来の状態を予測することを可能にしています。また、製品開発プロセスの省力化による時間やコストの短縮を図っているとのことです。

オーラルヘルス領域での新規ビジネスについては、法人向けウェルビーイングサポート(健康経営支援)サービス「おくちプラスユー」を開始。歯科衛生士によるオーラルケアセミナーや、お口の健康状態を見える化する唾液検査、AIを活用したお口の健康スコアチェックなどを提供しています。

3つ目は「組織の風土・文化の醸成」で、あらゆる現場で自律的にDXを推進できる状態を目指し、高度なデジタル技術を持つ「IT・デジタル人材」と、事業に精通しデジタルと業務をつなぐ「ハイブリッド人材」の拡充・育成に力を入れているとのことです。

またライオンでは、2023年1月に「デジタル戦略部」を新設し、それまで複数部署に分散していた「IT・デジタル関連の戦略立案」、IT保守やデータ分析などを含む「施策実行機能」、システムを用いた「業務改革(BPR)機能」を集約し、全社的なDX施策実行を加速するとしています。

YouTube:OCH-TUNE「あなたはどっち」篇/30秒/ライオン

考察記事執筆:NDX編集部

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