IPAの「DX白書2023」が2023年2月9日に公開された。副題は“進み始めた「デジタル」、進まない「トランスフォーメーション」”。一部業務のデジタル化は取り組まれ始めているものの、DX本来の意味である「ビジネスや経営の革新」には至っていないという現状が言い表されている。
その原因は「ITに見識がある役員の割合」の日米比較を見れば分かるだろう。(以下はNEXT DX LEADER編集部による考察です。)
ITに見識がある役員が5割以上の会社は、米国の38.9%に対し、日本は17.2%にすぎない。一方、3割未満の会社は、米国の39.1%に対し、日本は72.2%にものぼる。
ITに見識のない役員が役員会の大半を占める状況では、デジタル技術を使って会社全体を変革するDXの進め方が議論されることも期待できない。
加えて、特に日本においては、経営の視点の弱いDXは縦割り組織での業務改善の範囲を出ることは困難になる。経営トップのコミットがなければ組織横断的なDXは保守的な「強い現場」に容易に抵抗されてしまうからだ。
さらに日本の場合、経営者とIT部門、業務部門の協調が図られておらず、「十分にできている」と答えた会社は5.9%にとどまる。「どちらとも言えない」が30.5%もあるが、これは実質的にできていないと解してよいだろう。
この仮説は「DXの取組内容と成果」の調査結果で裏付けられる。
「アナログ・物理データのデジタル化」や「業務の効率化による生産性の向上」については、成果の出方には差があるものの、日米ともに約8割の会社が「成果が出ている」段階であると答えている。これは、特定部門で縦割りの取り組みを行えば成果が出るためである。
一方、「新規製品・サービスの創出」や「顧客起点の価値創出によるビジネスモデルの根本的変革」については、ともに「取り組んでいない」「まだ見通しはわからない」が4割程度にとどまっている。
いずれも複数の組織にまたがる経営課題を扱うものであり、経営陣のコミットがなければ実現しない。同じ回答をした米国の企業は2割未満なので、日米で特に大きな差がついている部分といえる。
つまり、白書の副題の通り、「デジタル」化は進み始めたと言えるものの、「トランスフォーメーション」は一向に進んでいないのである。
「トランスフォーメーション」を含めた本来的なDXを進めていくためには、「DXの目的、目標」や「企業文化を含めた組織変革の進め方」の基本に立ち返り、経営トップのコミットが伴った取り組みが不可欠だ。
最近ではYouTubeでも「DXに失敗する理由」を分析した動画が多く見られるようになっている。そのような知見を利用していく必要があるのではないだろうか。
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