eKYC(オンライン本人確認)のELEMENTS 少数精鋭で市場シェア支える「技術力」と「カルチャー」
【大量データを学習したAIを様々なソリューションで活用できるプラットフォームの提供で2022年度IPO大賞受賞!若き社長が望む未来とは?】㈱ELEMENTS 久田康弘氏『NBCメンバー紹介』 より生体認証・画像解析・機械学習技術等の専門テクノロジーを活用した個人認証ソリューションを提供し、2022年12月に東証グロース市場への上場を果たしたELEMENTS(エレメンツ)が、エンジニアを中心とした経験者採用を積極的に実施している。
社員約60名の少数精鋭体制にもかかわらず、国内eKYC(オンライン本人確認)市場におけるベンダー別売上金額シェアで4年連続No.1(※)を獲得。大手企業などのサービスを専門技術で支える会社は、どのような取り組みをしているのか。執行役員CHRO(最高人事責任者)の岡村一輝さんに話を聞いた。
※ITR「ITR Market View:アイデンティティ・アクセス管理/個人認証型セキュリティ市場2023」eKYC市場:ベンダー別売上金額シェア(2019年度~2022年度予測)
大手企業の要求に応えプロダクトの安定性が高まった
――御社は現在どのような事業を行っていますか。
生体認証で本人確認や当人認証を行う技術をコアテクノロジーとして、プロダクト開発を行っています。メインの収益源は、グループ会社のひとつLiquid(リキッド)が提供する「LIQUID eKYC」というオンライン本人確認のプロダクトです。
生体認証と聞くと敷居が高く思われるかもしれませんが、すでに私たちの生活の身近なところにプロダクトが存在しています。例えばネット銀行やネット証券で口座開設するときに、スマートフォンで顔や免許証を写して本人確認を行うステップがありますが、このような技術を当社が金融機関に提供しています。
また、地方自治体において公共施設や公共交通機関を顔認証で利用できる仕組みづくりに向けた取り組みや、IoT機器と行動解析技術を活用し大手不動産デベロッパーのマンションやオフィスビルをスマートホーム・オフィス化する取り組みを行っています。
他にも、人間の行動特性を学習して行動の予測を行うELEMENTSの基盤技術を活用し、セルフ式ガソリンスタンドにおける人手不足解消に向けたAI自動給油許可監視システムの実証実験を大手石油会社と行ったりするなど、社会インフラにおける課題を解決するために当社の技術を提供しています。
――生体認証の技術は大きな成長性が期待され、大手企業も参入する中で大きな市場シェアを占めているのはすごいですね。
確かに大手企業は投入する資金や人員も大きいですが、当社は生体認証の分野を専業で行っているところが異なります。当社の取締役CTO(最高技術責任者)を務める大岩良行は、東京大学の情報理工系研究科で画像解析の分野を研究後に当社に参画しており、彼を中心とした研究開発で当社の認証事業を強固なものにしてきた経緯もあって、専門分野におけるバックグラウンドが強みです。
市場シェアについては、世の中のニーズをうまく受け止めることができた部分もありますが、当社がお取り引きいただいている会社が主に大手企業や金融機関であり、高い水準の要望に応える中でプロダクトの安定感が整えられて現在に至っているところも強みになっています。
「自走できる人材」が個人の裁量で働ける職場を目指す
――現在どのような人材の採用に注力していますか。
基本的に経験者採用、即戦力人材の採用に注力しています。職種ではエンジニア採用が全体の7~8割を占めています。プロダクト開発に関わるインフラエンジニアやバックエンドエンジニアのほか、生体認証の技術も自社で開発していますので、研究開発のAIエンジニアや機械学習エンジニア、画像処理エンジニアも募集しています。
加えて、ビジネスサイドの営業のほか、プロダクトのクオリティコントロールや進捗管理を行うプロダクトマネージャー、市場顧客にアプローチして事業を成功させていく事業開発といった、プロダクトを世の中に拡げていく担当部署や、会社の経営を支えるコーポレートの部署での経験者採用も必要に応じて行っています。
――社員の年齢層はどのくらいですか。
当社はフェーズや規模としてはスタートアップやベンチャー企業に属しますが、社員の平均年齢は他のベンチャーよりもやや高く30代半ばから後半で、所属する社員のメンバーも35歳から45歳くらいがボリュームゾーンになっています。
経験者採用は、ダイバシティの推進という意味でも年齢や性別にこだわりなく幅広く検討しております。結果的に年齢が高めになっている背景には、当社が「自走できる人材」であることを採用の条件としていることがあげられます。
エンジニア系の職種では労働時間が長い会社も少なくありませんが、当社は労働時間の長さには重きを置いておりません。即戦力として自走して仕事ができる前提で、社員各自のライフスタイルや仕事の繁閑などに合わせ、個人の裁量で生産性高く業務を行ってもらうために裁量労働制を取り入れています。実際、業務で活躍しながらワークライフバランスを上手に保っている社員が多くいます。
経験の中身を細分化して「共通項」を探して採用
――リモートワークは採用していますか。
当社は担当業務における生産性が最大化される限り、リモートワークは日数などの制限なしに可能としています。その一方で、出社して業務を行いたい人やグループワーク等で顔を合わせた方が効率がよいフェーズの社員には、いつでも出社してもらえるオフィス環境を整えています。
会社として、社員個々人のワークスタイルを尊重し、最高のパフォーマンスを発揮いただくにはどうサポートを行っていけばいいのか、という視点で考えていますので、社員にもその時々で働く場所や時間を選択しながらベストの結果を出してもらうために、最適な働き方を選んでもらいたいと考えています。
「フルリモート」という表現を意図的に使用していないのは上記の考えによるもので、チームでオフィスに集まって業務を行う等のオフラインのコミュニケーションが効果的な業務シーンも確実にありますので、必要に応じて出社いただける方であることを前提に採用活動を行っています。
――こういう前職の人は御社の仕事に向く、といった傾向はありますか。
特にありません。当社は採用活動において「どこの会社で何をやっていた人」という形のターゲティングをあまり行わず、候補者様のバックグラウンドとなるこれまでのご経験の中身をしっかり拝見して、私たちのビジネスとの共通項を探すことからスタートしています。
当社では書類選考の段階から、募集ポジションの責任者、エンジニア採用でいうとCTOやVPoEが直接選考を行っております。書類段階でのミスマッチの低減の観点はもちろん、実際にご縁があればご一緒させていただく部門の責任者が選考の初期段階から関与することで、お互い実り多い面談・面接体験を良縁につなげていきたいという思いがあります。
これまで採用した方々は、出身企業はもちろん業界も多岐に渡ります。デジタル情報だけで白黒を判断するのではなく、時間がかかっても真摯に採用活動に向き合うスタンスが当社の採用活動における強みであると思っています。
業績評価は「ノーレーティング」をベースとした独自の手法で
――人材の採用や定着を促進するために行っている施策はありますか。
採用と同じですが、社員の業績評価についても個別のカスタマイズを行い、私たち評価者が社員をきちんと正当に評価することで、評価に対する社員の満足をいかに高めるかということを考えています。
日本では多くの会社で期初に定量・定性の目標を立て、期末の達成率を基に社員をS/A/B/C/Dなどにランク付けするMBO(目標管理)の手法を採用していることが多いと思いますが、当社では、ノーレーティング評価の考え方をベースとして、評価対象期間内における上長との普段からのコミュニケーションで蓄積された情報をベースに評価を行う手法をとっています。
これは社員がまだ約60名という規模だから実現できていることでもありますが、可能な限り、業務面はもちろんキャリアメイクの観点でも社員ひとりひとりに向き合った運用を継続していきたいと考えています。
――MBO的な目標管理よりも、個々対応が必要で手間がかかりそうですね。
おっしゃる通りです。人事としてはMBOが、構造がシンプルで対応しやすい制度ではあるのですが、当社においては現制度の方が管理職の自律性を活かしながら、優秀な人材にとって納得性の高い評価制度の運用ができると判断しています。
また、評価期間の途中で当初設定をしていた目標が変わることも業務都合上少なくありませんが、その場合でも当制度においてはその都度コミュニケーションを取りながら軌道修正をして問題ないという柔軟性を前提としており、評価はもちろん目標設定を形骸化させない変化への対応を行っています。
自社のプロダクトやカルチャーを情報発信していきたい
――福利厚生施策もありますか。
先ほどお話した生産性の高い働き方に関連して、施策ではありませんが休暇が取りやすい組織風土であることは、働きやすい仕組みづくりの一環としてお伝えできるかと思います。
当社では生産性の高い働き方を推進するスタンスで、役員も含めてしっかり休みを取りますし、有休取得に関しても所属チームメンバー間で「お互いさま」の精神で業務に支障がない形に予定を調整し気兼ねなくお休みをお取りいただけるようなカルチャーがあります。
少し前の話ですが、勤続5年くらいの社員が結婚のタイミングで「有給休暇を利用して長期の海外旅行をしてきたい」という話が出た際も、数週間の不在期間に対し所属部門でバックアップ体制をとり、気持ちよく休んで来てねと送り出したことがありました。
そういう大きな話はもちろんですが、普段から発生しうるお子様やご家族の病気など、何かしら突発的に発生した用事があるときにも、同じようなライフステージの社員も多くいますので、「お互いさま」ということで変な遠慮などは必要なく業務を行っていただいております。
――今後の採用活動上の課題はありますか。
実際、当社のプロダクトをご利用いただいたことがある方は非常に多いのですが、大きく社名を出した形のプロダクト展開を行っておらず、BtoBの形でクライアント企業様のインフラ的な立ち位置でご活用いただくものとなりますので、いわゆる一般的なSaaS企業等と比べると、どうしても世の中に対する露出は多くならない業態になっています。
そのような状況から、これまでは採用候補者様にWeb上でご覧いただける当社に関連する情報量もそれほど多くはなかったのですが、今後は、当社オウンドメディアはもちろん、外部メディアやビジネスSNS等を活用した採用広報観点での情報発信を強化していく方向で準備を進めています。
手前味噌ながら、候補者の皆様にとって魅力的にお感じいただける要素やカルチャーはたくさん持っている会社であると考えていますので、表面的な「求人」のお話だけではなく、事業の将来性や社会的意義、共に目指せる未来のイメージ等、本質的に当社が大切にしている部分に共感いただける表現での情報整備やアプローチを心がけていきたいと考えています。