トヨタ紡織のDX:「インテリアスペースクリエイター」としてデジタル活用 自動運転を想定した近未来の移動空間を提案 | NEXT DX LEADER

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トヨタ紡織のDX:「インテリアスペースクリエイター」としてデジタル活用 自動運転を想定した近未来の移動空間を提案

[ジャパンモビリティショー 2023] MX Prime - トヨタ紡織株式会社 より

トヨタ紡織(ぼうしょく)は、トヨタグループの祖である豊田佐吉が1918年に豊田自動織布工場を改組して設立した会社です。1943年にトヨタ自動車に合併しましたが、1950年に分離独立。1972年に自動車部品の製造販売を開始し、現在は自動車用シート、内外装部品、フィルターを柱とする自動車用部品のトップクラスのメーカーとなっています。

2000年に東証一部上場後は、豊田化工などと合併して事業規模を拡大し、海外展開も積極化。2013年には北陸新幹線「グランクラス」のシートを製造開始、2015年には航空機シートを全日空と共同開発するなど、自動車部品以外にも製品の幅を広げています。(NEXT DX LEADER編集部)

企業サイトで「トヨタ紡織グループのDX」打ち出す

トヨタ紡織の2023年度の売上収益は1.95兆円、営業利益は786億円。セグメント別の売上収益構成比は、「日本」が9,228億円で44.7%、「北中南米」が5,003億円で24.2%を占める一方、セグメント利益では「アジア・オセアニア」が369億円で47.1%、「中国」が23.5%などとなっています。

トヨタ紡織は2020年11月に「2025年中期経営計画」を発表。DXに関連する事項としては、これまで構築してきた「経営情報基盤」をレベルアップし、経営計画を着実に実行するために、「情報の一元化と共有」「分析と対策の早期化」によるガバナンス強化・意思決定迅速化を図るとしています。

2021年9月にはコーポレートサイト上で「トヨタ紡織グループのDX」というコンテンツを公開。DXを加速するために、2021年4月に全社的な推進体制を整備。チーフオフィサー制の導入に合わせてCDO(Chief Digital Officer)を新たに選任し、主幹組織としてDX&IT推進本部を設置しました。

「トヨタ紡織グループのDX」より

「トヨタ紡織グループのDX」より

2025年目指す姿に掲げた「内装システムサプライヤーとして“ホーム”となり、グローバルサプライヤーを凌駕する会社」の実現に向け、「既存コア事業の強化」「商品の差別化、戦略OEMへの拡販」「業務品質向上」「社会課題を解決する力を具備」の4つの企業価値向上シナリオそれぞれにデジタル技術の活用を進めていくとしています。

さらにDX推進の4本柱として「ものづくり基盤」「経営情報基盤」「情報活用基盤」「デジタル環境基盤」をDXの取り組み範囲とし、加えて「デジタル人材育成」を図るとしています。

車窓の景色に連動したVR/AR体験を提供

2023年11月には「2030年中期経営計画」を策定。2030年目指す姿として「インテリアスペースクリエイターとして快適な移動空間を実現し、製品、顧客の幅を広げながら社会課題の解決に貢献している会社」を掲げ、2030年度の売上収益2.2兆円、営業利益1,500億円などの財務目標を設けました。

2030年中期経営計画説明会(2023年11月24日)より

2030年中期経営計画説明会(2023年11月24日)より

これを実現するために、従来のシート・内装のハードウェア中心から、制御/ソフトウェア・室内システムの能力に加え、インフォテイメント(情報取得と娯楽体験が一体となったサービスやシステム)やコックピットへの製品領域の拡大を進めるとしています。

また「ものづくり競争力の強化」として、「人の感覚のデジタル化による生産性・品質向上」「サプライチェーンを含めた物流の高効率化」、これらを実現する土台となる「DX推進での業務効率・精度向上」に取り組むとしています。

インフォテイメントについて、トヨタ紡織は2023年10月の「JAPAN MOBILITY SHOW 2023」に出展し、自動運転を想定した近未来の移動空間や電動化対応製品などを展示しています。

MaaSシェアライド空間コンセプト「MX221」は、自動運転レベル4を想定したライドシェアモビリティのための車室空間。最上級グレードである「MX Prime」は、短時間で快適な仮眠に誘導するシステムのほか、パーソナル音響やリフレッシュ機能などを搭載し、上質な移動時間を提供します。

コンテンツ体験バス「MOOX-RIDE」は、車両の位置情報に合わせて、モニターや透明ディスプレイ、天井にコンテンツが再生され、車窓の景色に連動したVR/AR体験を提供します。

「MOOX-RIDE」(プレスリリースより)

「MOOX-RIDE」(プレスリリースより)

「T-FAS」(Tailored Flexible Autonomous Space)は、自動運転レベル4・5を想定し、車室内のシートやテーブル等を変形や回転させることで乗車中のさまざまな用途に最適なレイアウトを提供します。

「T-FAS」(プレスリリースより)

「T-FAS」(プレスリリースより)

「人の感覚のデジタル化」と「次世代物流」に取り組む

2030年中期経営計画には、取り組み事例として「人の感覚のデジタル化」「未来を支える“次世代物流”の実現」の2つが紹介されています。

1つ目の「人の感覚のデジタル化」については、縫製作業の動作・手順・力感覚をデジタル化し再現する「自働化」や、これを応用した「力触覚伝送技術」による遠隔操作について紹介しています。

2030年中期経営計画説明会(2023年11月24日)より

2030年中期経営計画説明会(2023年11月24日)より

また、人でしか判断できない「異音」を可視化する「次世代フレーム作業音検査技術」を確立し、従来のマイクによる収音から、振動センサ収音と変動音解析による仕組みに変更し、これをグローバルの顧客に展開して同一品質を提供するとしています。

2023年5月のプレスリリースによると、トヨタ紡織は84歳のセラピストの手技を、慶應義塾大学とモーションリブの最先端技術「リアルハプティクス」(力触覚伝送技術)により再現し、米国で開催された世界最大の電子機器見本市で「リモートタッチセラピー」として発表したとのことです。

2つ目の「次世代物流」については、2025年までに物流オペレーションのシステム化による「高い効率物流」を実現し、ドライバー不足や物流CO2削減への対応を行うとしています。

2030年中期経営計画説明会(2023年11月24日)より

2030年中期経営計画説明会(2023年11月24日)より

また、2030年までには「自動荷降し」によるトラック停滞解消や「部品箱 自動段バラシ」による荷役作業の省人化、マッピングセンサーを活用した「自律走行式 部品供給」といった革新技術による更なる競争力を獲得するとしています。

このほか、DXに関しては、2030年中期経営計画の「非財務目標(ESG KPI)」のひとつとして「AI・IoTによる“人にやさしい”先進生産技術の実装件数」をKPI化するとしています。ただし2030年の目標値は検討中で未定とのことです。

YouTube:[ジャパンモビリティショー 2023] MX Prime - トヨタ紡織株式会社

考察記事執筆:NDX編集部

[ジャパンモビリティショー 2023] MX Prime - トヨタ紡織株式会社の再生回数推移

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