三井物産のDX:「360° business innovators」をビジョンに幅広い事業とデータドリブン経営でDXを推進 | NEXT DX LEADER

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三井物産のDX:「360° business innovators」をビジョンに幅広い事業とデータドリブン経営でDXを推進

Our Business-会社紹介映像:世界中の未来をつくる より

三井物産は、井上馨と益田孝らによって1874年に設立された先収会社を源流とする大手総合商社です。戦後は財閥解体の一環で解散し、1947年に第一物産として再出発。1959年に三井物産に商号変更を果たしています。

事業別セグメントは7つで、2023年3月期の当期利益は「金属資源」が39%、「エネルギー」が27%、「機械・インフラ」が15%。この他「化学品」「鉄鋼製品」「生活産業」「次世代・機能推進」を合わせて2割弱です。(NEXT DX LEADER編集部)

DXを「強み」のひとつとして産業横断的に融合

三井物産の2023年3月期の収益は14.3兆円。親会社の所有者に帰属する当期利益は1.13兆円で、総合商社として初めて1兆円を超えました。主な要因は、天然ガスなどの資源価格の上昇や、円安効果による海外ビジネスの利益押し上げによるものです。

中期経営計画2026(2023年5月2日)より

中期経営計画2026(2023年5月2日)より

三井物産は2020年5月に「世界中の未来をつくる」をミッションに、「360° business innovators」をビジョンに掲げました。

2023年5月には「中期経営計画2026~Creating Sustainable Futures~」を発表。5つのCorporate Strategy3つの攻め筋をあげています。

中期経営計画2026(2023年5月2日)より

中期経営計画2026(2023年5月2日)より

Corporate Strategyのひとつが「(1)グローバル・産業横断的な提案力の高度化」で、7つの「強みの融合」を図るとしており、「DX」は強みのひとつにあげられています。

また「(4)グループ経営力の強化」では「データドリブン経営の推進」の取り組みとして「DX人材の育成/データマネジメント整備」が、「(5)グローバルでの多様な個の活躍推進」でも「仕事の付加価値追求」の取り組みとして「DXによる定型業務の徹底的な効率化」があげられています。

三井物産は、企業サイトに「三井物産のDX」をまとめています。この中でDXの定義について、商社オペレーションの「OT」とAI・IoTやロボティクス、ビッグデータなどの「Digital Power」を掛け合わせ、「生産性向上」「競争力強化」「新ビジネスモデル」といった価値を生み出すこととしています。

企業サイト「三井物産のDX」より

企業サイト「三井物産のDX」より

「DX事業」と「データドリブン経営」の両輪で推進

三井物産のDX総合戦略は、2つの戦略で構成しています。「DX事業戦略」は各事業現場の保有するデータにデジタルの力を掛け合わせ、新たな価値を生み出すことで事業の強化を目指し、「DD(データドリブン)経営戦略」はデータを徹底的に使い倒すことで迅速かつ正確な意思決定を行い、事業経営の強化を図ります。

企業サイト「三井物産のDX」より

企業サイト「三井物産のDX」より

DX事業戦略では、短中期的には徹底的に「S1(効率化)」「S2(高付加価値化)」を実行し、グループの既存事業の収益力強化・高度化を進め、中長期的には次世代に向けた「T(新たな事業機会への挑戦)」を実行することで、新たな領域も含めた将来の事業基盤を創出していくとしています。

また、注力すべき領域として6つの攻め筋を定め、短中期では「既存事業アセット基盤でのDX」「売買・物流基盤でのDX」「消費者事業基盤でのDX」を、中長期には「社会インフラ等の大型DX」「新技術活用視点からのDX」「産業破壊/創成視点からのDX」にも挑戦するとしています。

企業サイト「三井物産のDX」より

企業サイト「三井物産のDX」より

「三井物産のDX」では、6つの攻め筋におけるこれまでの取り組み事例を体系的に整理しており、「三井物産DX案件紹介資料」(PDF。2023年8月)には計31件の事例が掲載されています。

非常に幅広い領域でDXに取り組んでおり、産業系DXが「デジタルツイン」「量子コンピューティング」「秘密計算」など8件、脱炭素・エシカル系DXが「CO2排出量の可視化・報告・削減」など6件、ウェルネス系DXが「医療データ活用」「AI創薬」など6件、消費者起点系DXが「D2C型商品開発」など5件、金融・ロジスティックス系DXが「データファイナンス事業」「Truck as a Service」など6件です。

DX案件紹介資料(2023年8月)より

DX案件紹介資料(2023年8月)より

「DXビジネス人材」の100名内製化に向けて取り組み中

DD経営戦略については、三井物産が持つ幅広い範囲・分野のデータを各レベルで必要とする頻度・粒度で提供するDMP(Data Management Platform)を構築。同時にデータの収集・集約の効率化を推進してデータドリブン環境を実現しています。

これにより、データの収集・集約・活用・分析の取り組みを繰り返し、スパイラルアップしていくことで、迅速かつ正確な意思決定を行い、DD経営の強化を図るとしています。

三井物産ではDX人材戦略について、DX総合戦略の推進に必要な人材として「ビジネス人材」と「DXビジネス人材」「DX技術人材」の3種類をあげています。

ビジネス人材とは、その道のプロと呼ぶにふさわしい現在働いている多くの人材。これに加えデジタルのトップエキスパートであるDX技術人材は、IT戦略子会社でグループ内製化を進めるほか、三井物産本体でも一定数内製化していくとしています。

DXビジネス人材とは、DXを進めるためにビジネス人材DX技術人材をつなぐ必要不可欠な人材で、2024年3月期にはグローバルで100名以上内製化していく方針とのことです。

2023年3月期には、DX人材育成制度として3つの制度運用を行っています。1つ目の「Mitsui DX Academy」では、「DXスキル研修」「ブートキャンプ」「Executive Education」の3つの取り組みを行い、特にブートキャンプでは、DXプロジェクトの実践を通じた現場のOJTにてDXビジネス人材を育成し、2023年3月期に卒業した第1期生はほぼ全員がDXビジネス人材に認定されています。

2つ目の「DX人材認定制度の運用開始」では、三井物産単体で25名のDXビジネス人材を新たに認定。2023年3月期には現地法人にも応募枠を拡大して、6名のDXビジネス人材を認定しています。

3つ目の「DX人材採用」では、日本国内での新卒採用は2021年3月期より「インターンでのDXビジネスコンテスト」を開催。海外で採用したDX人材を全社重点領域でのプロジェクトに投入するほか、欧州や中東にも派遣してグローバルな活躍の場を拡大しているとのことです。

YouTube:Our Business-会社紹介映像:世界中の未来をつくる

考察記事執筆:NDX編集部

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