江崎グリコのDX:会員制サイトや育児アプリで顧客接点強化 「お客様起点のバリューチェーン」目指す | NEXT DX LEADER

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江崎グリコのDX:会員制サイトや育児アプリで顧客接点強化 「お客様起点のバリューチェーン」目指す

Glico創業から続く健康への想い(1分30”) より

江崎グリコは1921年、グリコーゲンを成分とする栄養菓子「グリコ」を製造販売する江崎商店として創立。1933年に「ビスコ」、戦後は1950年代からアイスクリーム、チョコレート、チューインガム、カレーの製造販売を開始し、1958年に現在の社名となっています。

2022年12月期の事業の種類別セグメントは「菓子・食品部門」「冷菓部門」「乳業部門」「食品原料部門」「海外部門」「その他」の5つ。売上高の21.9%、営業利益の39.1%を「菓子・食品部門」が占め、海外売上比率は19.7%でした。(NEXT DX LEADER編集部)

中期経営計画で事業部制に移行、セグメント見直し

グリコグループは2022年2月、創立100周年を機に存在意義(パーパス)を「すこやかな毎日、ゆたかな人生」ありたい会社の姿(ビジョン)として「おいしさと健康」を価値として提供し続けることを掲げています。

あわせて「中期経営計画」を発表。2021年の実績が前中計で掲げた目標値を大きく下回ったことを踏まえつつ、新たに「おいしさと健康価値の提供」「お客様起点のVC(バリューチェーン)の実現」「注力領域への転換」という中期事業戦略の3つの柱を掲げています。

注力領域として選定しているのは「発育・栄養の最適化」「成長の支援」「運動能力の強化」「脳機能の向上」「ヘルシーエイジング」の5つです。

21年12月期決算説明会(2022年2月21日)より

21年12月期決算説明会(2022年2月21日)より

中期経営計画では国内事業変革として、従来の「カテゴリーマーケティング」から「新たな事業マネジメント」への転換を掲げました。2023年1月からは「顧客視点」「事業視点」目的に事業部制に移行し、「健康イノベーション事業」「乳業事業」「グローバルブランド事業」「栄養菓子・補食事業」に組織変更しています。

21年12月期決算説明会(2022年2月21日)より

21年12月期決算説明会(2022年2月21日)より

また、セグメントを「健康・食品事業」「乳業事業」「栄養菓子事業」「食品原料事業」「国内その他事業」「海外事業」に変更。2023年12月期第2四半期決算時の通期見込みは、セグメント売上高は「乳業事業」が680億円、「栄養菓子事業」が592億円、「健康・食品事業」が491億円、「海外事業」が747億円などとなっています。

一方、セグメント営業利益は「栄養菓子事業」が最も大きく52億円、「海外事業」が47億円、「健康・食品事業」が19億円など。売上高が最も大きい「乳業事業」は1億円の赤字となる見込みで、原材料価格の高騰などが影響しています。

ファンコミュニティで会員と社員がアイデア会議を開催

2022年7月には「Glicoのデジタル戦略 パーパス実現に向けて」を発表。中期事業戦略の3つの柱に横串を通す形で、3つの「事業戦略をドライブするデジタル戦略」を策定しています。

Glicoのデジタル戦略 パーパス実現に向けて(2022年7月)より

Glicoのデジタル戦略 パーパス実現に向けて(2022年7月)より

1つ目のデジタル戦略は「お客様や生活者との接点強化による情報取得とデータに基づいた価値創造」。顧客と継続的なつながりを保ち、取得したデータを基に顧客理解を高め、商品開発・提供に活かし、ブランド価値向上を図るとしています。

Glicoのデジタル戦略 パーパス実現に向けて(2022年7月)より

Glicoのデジタル戦略 パーパス実現に向けて(2022年7月)より

顧客接点として想定されているのは、小売店舗や自動販売機、提携企業・施設といったリアル接点のほか、ホームページやEC、ファンコミュニティ、子育てアプリなど。ここで得た情報を「個客情報/分析基盤」に蓄積し、店舗/販促企画やPR企画、商品企画や製造/物流などに活かしていくとしています。

“みんなとつながるファンのまち”を掲げる「with Glico」は、2020年6月にスタートしたオウンドメディアです。会員制コミュニティ「グリコクラブ」の登録者を引き継ぎ、健康に特化したコミュニティサイトとしてリニューアルしました。

サイトでは、新商品紹介や開発秘話、「運動」「栄養」「休息」など健康にかかわる情報を掲載するほか、会員間や会員と社員が楽しく盛り上がれるオンライン・ファンミーティングやアイデア会議を開催する機能、通販機能なども備えています。

2020年12月には、子育てアプリ「こぺ」をリニューアル。子どもの成長を記録できる「育児ログ」や医師監修の「お役立ち記事」「ココロとカラダの健康無料電話相談室」のほか、家事や育児タスクを管理・共有して“みんなと協力して育児をサポートする”「To Doボード」などの機能を備えています。

2023年4月には、公式通販サイト「グリコダイレクトショップ」を全面リニューアル。商品カテゴリーのほか、「適正糖質」「運動強化」「ヘルシーエイジング」「栄養バランス」「美容」「成長の支援」といった健康テーマから商品を探せる機能を備えています。

データに基づく意思決定のスピード化図る

2つ目は「継続的に価値を提供するバリューチェーン運営と一貫したデータに基づいた意思決定」。経営・事業・業務の全層での一貫したデータに基づいた判断/意思決定スピード化を図るとしています。

ERPを基盤に基幹業務オペレーションの標準化と可視化を進め、さらにサプライヤーなど取引先とのデータ連携で「お客様起点のバリューチェーン」を実現するとしています。

「Glicoのデジタル戦略」では、デジタル化を支える5つの基盤として「生活者との接点とD2Cシステム基盤」「データに基づく商品企画、設計、研究システム基盤」「バリューチェーンプロセス管理と経営管理基盤」「サステナブルな生産・調達・物流システム基盤」「セキュアで効率的なコラボレーション基盤」といったクラウドを活用した基盤を構築するとしています。

Glicoのデジタル戦略 パーパス実現に向けて(2022年7月)より

Glicoのデジタル戦略 パーパス実現に向けて(2022年7月)より

3つ目は「場所に関係なくセキュアで効率的なコラボレーションを実現し、従業員の価値を最大化」。いつでもどこでも簡単にヒトや知見を効率的につなげ、コラボレーションを加速し、イノベーションを促進する「コラボレーション基盤」「業務効率化・フレキシブルワーク環境」、そして「ゼロトラスト型セキュリティ基盤」を整備するとしています。

江崎グリコは2018年に「テレワーク制度の導入」「フレックスタイム制度のコアタイム廃止」「年次有給休暇の時間単位付与制度の導入」などの新勤務制度を導入。2019年10月には「テレワーク先駆者百選 総務大臣賞」を受賞しています。

このほか江崎グリコでは、2023年12月に「デジタル人財育成に関して」を発表し、デジタル人財育成の対象者と到達レベル、必要なデジタルスキル研修体系などについて整理しています。

デジタル人財育成に関して glicoグループのデジタル人財が身に着けるべきデジタルスキル(2023年12月)より

デジタル人財育成に関して glicoグループのデジタル人財が身に着けるべきデジタルスキル(2023年12月)より

YouTube:Glico創業から続く健康への想い(1分30”)

考察記事執筆:NDX編集部

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