女性は一刻も早く親元を離れたかったのだろう。大人になると、会社の近くで一人暮らしを始めたそうだ。そこは女性の母親の実家がある小さな町だった。女性はある日、人づてに母親の過去の顔を知ることとなる。
「会社の人も地元の人ばかりで、出身地など細かく聞いてくるんで正直に話していたら、母のことを知っている人もいました。そして一部の人とは親しくなったので、母との仲が悪い話までしました。そうしたら、ある人から『母が学生時代いじめっ子だった』という事実を聞いてしまったんです」
その人は母親と同世代なのだろうか。さらには「この地元ではお母さんのことは言わないほうがいい」とまで忠告された。親が“元いじめっ子”だったとは、さぞかしショックを受けたことだろう。
「私は小学校、中学校といじめられていた時期があり、いじめられている人の気持ちが痛いほどわかります」
「きっとその話を私に言った人も、心の奥で(いじめっ子の母に)復讐したいと思っていたのでしょう」
と“元いじめられっ子”に理解を示し、母親の過ちに静かな怒りを滲ませた。
「私の母親は元いじめっ子です」
「今いじめをしている人すべてに言いたい。いじめは一生の恥です」
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