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「報ステ」古舘伊知郎氏は、なぜ小室淑恵氏のフリップを取り上げたのか?

12月7日で61歳を迎えた「報道ステーション」(テレビ朝日)の古舘伊知郎キャスター。戦後の高度成長期を体現した「ポスト団塊の世代」だが、現代の価値観の変化に対応できていないと思われる場面を最近見かけた。

11月27日放送の「報道ステーション」(テレビ朝日)は、900社以上に働き方改革のコンサルティングを行った小室淑恵氏(ワーク・ライフバランス代表)をゲストコメンテーターに招いた。そこで古舘氏は、小室氏の説明をたびたび遮り、フリップを取り上げる場面があったのである。(ライター:okei)

「長時間労働が染み付いちゃってる。ダメですか?」

小室淑恵氏(11月撮影)

小室淑恵氏(11月撮影)

番組冒頭、古舘氏は「日本の働き方を『今までの常識を大きく変えないと、少子高齢化のこれからの日本は成り立たないぞ』と、ずっと提唱されている方」と小室氏を紹介した。事実ではあるが、慇懃で若干イヤミな響きがある。

番組VTRでは、3度の育児休業をしながら係長に昇進し、育児をしながら部下の育成に当たる女性を紹介。ノー残業でも成績は落ちないと言い切る営業マンも登場し、「長時間労働の削減は絶対に必要」と結論づけた。

しかし古館氏は「ぜひ叱っていただきたい」と小室氏に向き直り、「一概に言えない、ちゃんとした人もいるんですが」と断りつつ、こんな問いかけをした。

「私のように60超えた年代の人間は、『一生懸命働く=長時間労働』が染み付いちゃってる。ダメですか? やっぱりね!」

かなり難しいけど変えなければならないという話をしているのに、それを混ぜ返す態度はあまり快いものには見えない。小室氏に「あなたが何を言おうとも、俺たちは考えを変えないよ」と反論しているようなものだ。

しかし小室氏は「過去の人口ボーナス期・大量生産が業績に結びついた時期であれば大正解なんですが」と古舘氏の古いセンスを受け止めつつ、現在は高付加価値の時代なので「必要なのは(早く家に)帰って、消費者の感覚を持つこと」と変化が必要な理由を説明していた。

「男性経営者の古いマインドを壊す」のは女性の仕事なのか?

その後、小室氏は来年から施行される「女性活躍推進法」の話題の中で、2016年春から義務化される「各社の男女別勤続年数の差」や「女性の管理職比率」などの公開について、フリップを示しながら説明した。

そしてこれからの会社は初任給ではなく、生涯賃金で差がつく「長期で仕事を続けられるか否か」で選ばれるようになると指摘。平均勤続年数が「男性が20年だが、女性は3年」となれば「見栄えは良いけれども、実は続けられない会社だと分かる」と解説した。

さらに小室氏が「こういった…」と言いかけたところ、古館氏は「なるほど。その場合、どうですか?」と話の腰を折った上に、小室氏からフリップを取りあげてデスク下へ隠してしまった。そして、こんな質問につなげた。

「ご主人、または男性経営者の古いマインドを、パーンと壊さなくちゃいけない。ここが女性にとっては山ですね?」

あまりに突然の動きに、古舘氏が再び「俺たちはそう簡単には考えを変えないよ」と言っているようにも見えた。そもそも、男性のマインドを変えるのが、なぜ女性にとって山なのだろうか。男性自身の問題ではないのか?

「過去も良かったですよと認めてくれる」と嬉しそう

小室氏は「こうしたことを、きちっと夫と話すことが大事ですし…」と続けようとすると、古館氏は再び「後はもう日本の、かつての高度成長期の成功体験があって、古い常識を壊せないならば、ドイツみたいに『土日は店を開けない、残業なんかしない』という法律をもっと作らなければダメかなと思っちゃいます」と発言をかぶせてしまった。

そこで小室氏が、EU諸国のインターバル規制(次の業務開始までに11時間空ける)を例に、労働時間の上限規制の必要性に言及すると、「法律をもっと作らなければダメ」と言ったはずの古館氏が、こうつぶやいた。

「難しいなあ……。箸の上げ下げまで国に言われるのはハラ立つところもあるし、なんか決めなきゃ変われないってのもあるし」

そして自身の古い頭を棚に上げ、「議員たちの保守的な古い考え方」について質問。小室氏は「(議員も)ロジカルに説明すると『そういうことで過去を否定しないなら、意識を変えよう』と言える方たちも増えてきています」と明かした。

すると古館氏は、またしても小室さんの持つフリップを取り上げ、自ら高度成長期の辺りを指しながら、嬉しそうにこう話して話題を終わらせた。

「オピニオンリーダー小室さんのありがたいのは、こういう、一生懸命、団塊の世代もその前も含めて頑張ってきたことを『あんたたちダメ』と言わずに、『良かったですよ、でも世の中の流れは変わりましたよ』と言ってくれる。頑張ろうと思えますね!」

終始「俺たちは簡単には考えを変えない」と言っているよう

なぜ古館氏はフリップを取り、小室氏の話を遮ったのだろうか。時代の変化を認める態度を取りながらも、古館氏の質問は終始「俺たちは簡単には考えを変えないけど、オンナはどうするの?」というものだったように感じた。

結局、この世代はこの先も「育児も介護もオンナがやるもの。長時間労働は悪くないし、若い者も同じようにするべき」というつもりなのだろうか。テレビ視聴者の大多数を占めるシニア世代におもねっているのかもしれないが、それこそが少子化のいまの世の中を作ったのではないのか。

ふと先日「社員をうつ病にさせる方法」というブログでネット炎上したのに、「自分の考えを書いただけです」と悪びれなかった社会保険労務士も60歳だったことを思い出して暗い気分になった。

あわせてよみたい:古舘氏、芥川賞に苦言「本屋大賞と区分けが」

 

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