「頑張って年収を上げれば、罰を受けるという感覚」と語るのは、神奈川県の50代男性だ。個人事業主の男性は年収1200万円を得ていたが、新型コロナウイルスの影響を受け、事業に暗雲が立ち込めているという。現行の税制では「コロナ禍で月々の収入が少なくなっていることは、まったく考慮されない」と嘆く。
「コロナ禍で昨年よりも大幅に年収がさがりそうな事態。しかし、昨年の所得が所得制限以上ということで、各種給付金や助成が何も受けられない。コロナがなければ問題なく支払える税金が、今年は支払えない。罰以外の何物でもない」
「高所得者が受ける罰」の一例として、男性は高校授業料の無償化を挙げる。「子どもが高校に通う3年間という限られた期間に対しての行政支援だが、たまたまそのときに年収が高ければ、所得制限で支援の対象外になる。子どもの高校卒業後に年収が激減しても、補填はない」男性は「自分の収入は低いが、実家が裕福で金銭サポートのある人こそ、真に優遇されている」と持論を述べている。
月7万円の保育料が家計を圧迫「税金もたくさん引かれるので貯金できない」
高所得層の家計を圧迫するのは、累進課税で課される高額な税金だけではない。大阪府の30代、年収900万円の商社勤務の女性は「2人の子どもを保育園に預けていますが、保育園代は月7万円ほどです」と明かしている。認可保育園の保育料は所得によって異なるが、女性の場合は家賃にも匹敵する保育料で、懐を痛めているようだ。
「もちろん税金もたくさん引かれるので、普通の生活をしているだけなのに貯金はあまりできません。本当に、年収の響きが良いだけ。仕事も終電で帰るのはザラで、通常業務が終わった後、夜に出張先へ移動することも。現地に到着するのは23時。翌日は6時起きで打ち合わせをして移動、本社に戻り、やっと家に帰宅。これが月に数回です」
これだけのハードワークをこなしながら、2人の子どもを育てているというのだから頭が下がる思いだ。女性は「ストレスで胃痛やニキビに悩まされています。体調も悪いです」と激務のつらさを吐露している。
自身の健康やプライベートと引き換えに手にした高年収。それにもかかわらず高額な税金で手取りが大幅に減ってしまっては、理不尽を感じても仕方がない。累進課税制度は所得格差を是正するメリットがある一方で、バランス次第では労働者の労働意欲を低下させるデメリットもある。累進性の度合いが適正かどうかは、時代に合わせて常に精査する必要があるだろう。
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