コロナ禍で飛行機に乗っていなかったので知らなかったが、このサービスはちょうど1年ほど前から、羽田空港国内線ターミナルの出発ゲートラウンジで導入されているらしい。手荷物検査を受けた先の壁沿いに設置されていた。「みんなのモビリティ」と書かれた案内板には
・遠いゲートまで快適に移動したい
・迷うことなくゲートに向かいたい
・自動運転で空港内の移動を楽しみたい
ときにおすすめと書いてあった。最後の文からは「この近未来感を楽しんでよ!」という開発者の声が聞こえてきそうだ。
さて、そう言われるとちょっと楽しんでみたくなるのだが、実際に乗るのはちょっぴり恥ずかしい。なにせめっちゃ目立つのだ。
筆者が羽田に着いたのは早朝、出発便の多い時間。空港内は出張とおぼしきサラリーマンたちが足早に出発ゲートへと向かっている。レジャー気分でモビリティに乗りそうな雰囲気の人たちは少ない。男女の二人連れが「ちょっと試してみようよ」と楽しそうに乗り込んで行ったが、さすがにオッサン一人で乗るのもなという気がして、いったんは歩いてゲートに向かうことにした。
しかし、彼らの様子を観察していると、驚きの事実が発覚した。「モビリティ」は、信じられないぐらい安全運転、言い換えると遅すぎるのだ。普通にてくてく歩くだけで、あっという間に男女が乗るモビリティを追い抜かしてしまった。その遅さは、筆者が途中でトイレに寄って出てきたところ、ようやくモビリティが追いついてきたレベルだった。
ここで筆者は好奇心に負けてしまった。ここまで遅い「モビリティ」。自ら試してみないわけにいかないだろう。
さて実際乗ってみると、操作はとても簡単だった。座席に腰掛けると、左手のひじ置きの先端にあるタッチパネルの画面に目的地の選択画面が表示された。行き先を選ぶとカウントダウンが始まり、自動的に出発する仕組みだ。
ところが、出発したモビリティは10秒立たずに道の真ん中で停止した。安全装置が作動したのである。どうやら、前部に備え付けられているセンサーがめちゃくちゃ敏感なため、筆者の足を障害物と感知してしまったらしい。
このようにモビリティの安全運転ぶりは半端ない。加えて周囲を人が歩いていると、移動スピードがグンと落ちる。動く歩道を足早に出発ゲートに向かっている人たちからすれば、「なんで、あんな遅いものに乗るのか」と不思議に思うレベルかもしれない。
ただ、気になったのはそれぐらい。目的地のゲートに間違いなく到着できたし、重い荷物も運んでくれた。到着予定時刻が表示されるので、イライラもしなかった。利用終了後に自働で戻っていく姿には、「子供の頃に夢にみていた未来」が実現したかのような、ワクワク感もあった。
「迷わない」「快適」「楽しい」という宣伝文句はウソではなかったのである。羽田に行った際には、ぜひこの「快適さ」を体験してみてほしい。