林業を補助金に頼らない「稼げる産業」に! 平均33歳・東京チェンソーズが掲げる野望
世の中には「やりがいはあってもカネにならない」仕事がある。特に現在の日本の一次産業は、そんな状況になっているのかもしれない。それで地方出身の若者たちは、割のいい仕事を求めて都会に行くのだ。
大自然と関わる林業も、そんな仕事のひとつ。木材価格の下落などによって補助金に頼る構造で、ほとんどが日給制で収入は安定していない。そんな中、4月21日放送の「おはよう日本」(NHK総合)が、状況を変えようと立ち上がった青年たちの挑戦を紹介していた。
元新聞記者も入社。女性社員は「出産したら現場復帰したい」
東京・西多摩郡の檜原村にある「東京チェンソーズ」。社長の青木亮輔さん(39歳)は、林業を若者に魅力ある仕事にしたいという思いで、10年前に同社を設立した。
「林業は再生産が可能な、日本でも数少ない資源を扱っている産業でもあるし、やりがいのある仕事をしているのに、待遇が悪いのは納得いかないんで」
そう語る青木さんは24歳の時、自然の中で働きたいとサラリーマンを辞め、東京都の森林組合で働いていた。若い同僚もいたが、収入が安定しない日給制のため辞めていく。
29歳で一念発起して仲間とともに会社を設立すると、安定した収入を約束するため月給制にした。家族手当や住居手当も支給し、妊娠中の女性社員のため時短勤務も導入。若い人が安心して家族を持てるようにした。
林業は人手不足のうえ平均年齢52歳と高齢化が進んでおり、若手の人材確保が課題だ。そんな中「東京チェンソーズ」は、8人いる社員の平均は33歳と異例の若さだ。経歴も様々で、アウトドア用品の専門店で働いていた人や、元新聞記者もいる。
同社のウェブサイトを見ると、ほとんどの社員が大学卒で、東大出身の女性社員もいた。皆、自然の中、第一次産業に携わる喜びと誇りを持っているように見えた。唯一の女性社員であるIさんは、「子どもを産んで落ち着いたら現場にも復帰したいし、林業にはずっと携わっていきたいと思っています」と語る。
風通しのいい職場で「林業の飛躍」目指す
青木さんの最大の課題は、林業を補助金に頼らない「稼げる産業」にすること。月に1度、全社員を集めてアイデアを出し合う戦略会議を開いている。会議では和気あいあいとした雰囲気のなか、さまざまな意見が出る。社員の1人はやりがいをこう語る。
「自由に意見を言えて、会社の方針を決めるような会議にも参加できるというのは、すごいやりがいがある」
いま力を入れているのは、より多くの人に林業の魅力を知ってもらうイベントの開催だ。一般の人向けに一口5万円で苗木を植え、育てる権利を販売。100口が完売した。こうした活動を通して木の魅力を多くの人に知ってもらい、将来的にはブランド化を目指している。
「補助金をもらいながら成り立つ林業というのは、それ以上飛躍する可能性がないわけで、それじゃあ仕事として面白くない」
青木さんは補助金がなくても成り立つ林業を、この10年は目指していきたいと決意を表明した。彼らが目指しているのは「生き残りの戦い」を超えた飛躍であり、産業の発展だ。若者たちが続けられる新たな林業のしくみづくりに期待したい。(ライター:okei)
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