テレワークの生産性については経営者や管理職が頭を悩ませる問題だが、はてな匿名ダイアリーに10月中旬、「在宅勤務の終わりとテレワークの始まり」というエントリがあり話題となった。
投稿者は電車に乗っていて、在宅勤務中の社員を監視するPCソフトウェアの動画広告に目を止めた。在宅勤務中の社員が実は全員遊んでいるかのような姿が映し出され、「これでは『生産性』が下がりますよね?」と煽るものだ。投稿者は、「監視される側となる人間が大半であろう乗客は、ぼんやりとこの広告を眺めている」と皮肉な状況を描写し、
「家にいても仕事で結果を出していれば問題ないという在宅勤務の時代は終わったのだ」
などと、多様な働き方ができたはずの『在宅勤務』の終焉について持論を綴った。(文:okei)
「テレワークは社員が常にPCに張り付いて仕事をしているふりをすることを求める」
投稿者は、「新型コロナウィルスの影響が長引いたせいで『在宅勤務』は終わり、日本的な『テレワーク』の時代が本格的にやってきたのだ」と思いを述べた。曰く、
「テレワークは社員が常にPCに張り付いて仕事をしているふりをすることを求める」
もので、こうしたシステムが導入されることで、出社すること自体や、長時間労働をよしとする日本の働き方の悪癖が繰り返されるとしていた。
「自宅で家事をしながら仕事をし、生産性も生活の質も上がったと感じていた牧歌的な在宅勤務の時代は終わったのだ。これが日本の『生産性』だ」
と、最後に絶望的な皮肉を放っていた。
このエントリには、同じ広告動画を見て不快に感じた人がコメントを寄せていた。
「あの広告はビデオ会議でカメラ付けてないと後ろでサボってるかもしれない!って言うのを強調してるあたりが非常に不愉快だった」
「このソフト使う事により日本の生産性が落ちます(評価がPCの前に居て操作してる事だけなので、上司が仕事の内容を評価できないまま」
こうしたテレワーク業務管理システムは、投稿者が見たものだけではなく、以前からさまざまなサービスが乱立している。「テレワーク 社員監視」で検索すると、「テレワークの不正やサボりを防ぐ」などのキャッチコピーとともに数多のシステムが宣伝されている。おまけに従業員が信用されていないこともよく分かる。
筆者も最近ニュース番組で、社員がキーボード操作をしていた時間がグラフのようにひと目で分かるサービスが紹介されているのを見かけた。1分1秒単位で記録が残るのだから、息が詰まるような働き方になりそうで恐ろしい。
残業の抑制には有効か? 「従業員側が悪い意味で真面目」
一方で、在宅勤務中は業務に集中するものだし、こうした管理ソフトは残業のし過ぎを防ぐ役割もあるため、完全否定はできないという声もある。テレワークの弊害として、見ている人がいないがゆえ、結果を出すため頑張りすぎてしまうケースがあるからだ。「結果を出すなら就業時間内も自由でいい、形式上時間だけ申告して」ということにしても、
「むしろ従業員側が自他にもそんなことは許さない、みたいな感じで困る。悪い意味で真面目なのよね」
「とても8時間じゃ終わらない量の仕事を押し付けられて残業代も出ない、という方向もありえるので何とも」
というコメントもあった。労働時間がまったく管理・規制されないようでは、逆に荷重労働に繋がりかねない。しかし、成果を求めるあまり出社したときよりも無理な働き方をさせてしまうこともあり得るのだ。
多くの企業では在宅勤務が定着し始めたばかりで、こうしたメリット・デメリットの混在はしばらく続くのだろう。結局は管理システムを導入すればすべてうまくいくというものでもなく、マネジメント側が運用しながら数値に表れない面にも気を配る必要がありそうだ。