8畳2間に犬164匹の多頭崩壊の悲惨な現場 常に妊娠状態のメス、食糞で生き延びる犬たち | キャリコネニュース
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8畳2間に犬164匹の多頭崩壊の悲惨な現場 常に妊娠状態のメス、食糞で生き延びる犬たち

8畳2間に164匹

8畳2間に164匹

8畳2間の平屋に164匹の犬と人間が生活する──。そんな深刻な多頭飼育崩壊が島根県出雲市で発生した。現場は一般家庭の犬の多頭飼育崩壊として「史上最大級」とされ、床には糞尿が重なり、部屋中いたるところに犬がひしめきあっていた。

行政の要請を受け、動物の殺処分ゼロを目指す公益財団法人どうぶつ基金は11月10日~12日に保護団体への譲渡や死亡を除く156匹に不妊治療、ワクチン接種、ノミ・ダニ駆除などの獣医療を行った。

処置室は保健所が提供した。犬の不妊治療などの獣医療を行政と公益法人などが協働で行ったのは今回が初めてとなる。実際、どのような現場だったのか。キャリコネニュースは同団体の佐上邦久理事長に話を聞いた。

「衰弱がひどく、手術を中止した犬もいました」

糞を食べてしのぐ犬も

糞を食べてしのぐ犬も

出雲市の多頭飼育崩壊の現場について、佐上理事長は「犬たちは超過密状態でストレスは想像を絶するものがあります」と説明する。

「ごはんの取り合い、発情した犬のケンカも絶えません。他の犬の肛門の前で待ち構えて出てくる糞を食べてしのいでる子もいました。実際にレスキューを進める中で、足や耳が噛みちぎられた子、耳目がえぐれた子、ガリガリな子、力が持たず命を落としてしまった子を目にしました」

犬たちは首輪をしたことも散歩に行ったこともなかった。大量のノミだけでなく疥癬にかかり、食糞によって寄生虫感染をしていた。メスは出産の繰り返しで常に妊娠状態だったという。

「ほとんどの犬がやせ細り衰弱状態で、手術や麻酔は普段に増して慎重に行いました。衰弱がひどく、手術を中止した犬もいました。想定はしていたものの目の当たりにすると、飼い主の責任は大きいと改めて実感しました」

今回の一斉手術は同団体が無償で行った。一般的に、動物病院でかかる費用は不妊手術が3万円、ほか獣医療が2万円にのぼる。医療行為だけでなく、家の床や庭の土の消毒、砂利の設置まで行った。佐上理事長は「事業継続中のため総額は出せていませんが、数百万円になるかと思われます」とコメントしている。

「行政が真摯に向き合っていれば、このような最悪の事態は避けられた」

折り重なるように眠る

折り重なるように眠る

飼い主は犬たちととともに生活をし、この家から通勤もしていた。佐上理事長は「本件現場では30年以上前から近隣住民に多頭飼育が確認されていました」と説明する。遅くとも数年前から保健所が訪問していたが、保健所は近隣住民に「問題なし」と報告していた。

しかし今年6月に改正動物愛護法が施行された。今まで不適切なペットの飼育で周りの人の生活環境が損なわれた場合、虐待のおそれがある場合は、都道府県知事などからの勧告・命令のみだったが、改正後は立ち入り検査ができるようになった。

「近隣住民が80人の署名を集め、立ち入り調査が実現しましたが、あの惨状でも行政は『問題なし』。もし30年前から行政が真摯に向き合っていれば、このような最悪の事態は避けられたと思います。言うまでもなく最も悪いのは飼い主ですが、保健所の対応に問題があったと言わざるを得ません」

それでも今回、同団体と行政、動物愛護団体が協働で対応した。「猫のTNRでは保健所の手術室を使用することはありますが、犬の多頭飼育崩壊では初めてです。行政と協働で多頭飼育崩壊問題を解結する方法としてよいケーススタディーになったと思います」とコメントしている。

コロナ禍で多頭崩壊が発覚するケースが増えている?

手術を受けた犬たちは、今後新しい里親のもとで生きていく。11月25日現在、すでに約100頭の譲渡先が決まっている。衰弱した犬、目の不自由な犬を迎えたいという人もおり、佐上理事長は「多頭飼育崩壊の環境から、幸せな家庭犬として新たな犬生のスタートです」と話す。

しかし、まだ里親が決まっていない犬もいる。今回レスキューした犬は異常にシャイで、散歩に行ったことがなく、皮膚病である犬が多い。そのため佐上理事長は、

「この性格に心身ともに付き合え、お散歩トレーニングができ、皮膚病への理解・ケアに知識がある方に引き取っていただきたいです。『かわいそう』という安易な気持ちだけでなく、生涯を共に生きる『家族』としての覚悟を持った方を募集しています」

呼びかけている

多頭飼育崩壊については、「ここ3年で増加しています。特にコロナ以降の増加が目立ちます」と話す。同団体への救済要請は過去1年で80件以上、特に10月は月10件あった。

「今までギリギリのところでやってきたけど減給や失職で立ちいかなくなりSOSを求めて発覚するというパターンも。多頭飼育崩壊をなくす方法は”不妊手術”でのみで、早い段階での不妊手術こそが予防手段です。口を酸っぱくしてこのことを訴え続けたいと思います」

今後について、「どうぶつ基金では今後も問題に真摯に向き合い、ペットも飼い主も普通の幸せな生活が送れる社会づくりのために活動を続けます」とコメントした。

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