9浪して早稲田大学に入った濱井正吾と申します。31歳です。偏差値40の高校を卒業後、関西の私立大学で仮面浪人をしたまま卒業、仕事をしながら予備校に通い、9年かけて早稲田大学に入りました。憧れた早大生活はとても楽しくて、毎日が足早に過ぎ去りました。
しかし、3年生も後半になると、気持ちが落ち着かなくなりました。その理由は「就活」です。私は新卒採用で門前払いをされ続け「社会に必要とされていないのではないか」と思い悩むようになってしまったのです。
「新卒採用 30歳の壁」
ご存じの通り、日本は大量の大学生を同時期に一括採用する、いわゆる「新卒採用」が主流の国です。あまり意識されない点ですが、この新卒採用には「30歳の壁」が存在します。
私がその「壁」を思い知らされたのは、2022卒の就活サイトのウェブエントリーです。「エントリーシート」は生年月日を選択するようになっているのですが、選択肢として表示される数字は「1991年」まで。1990年生まれのわたしは、応募書類に記入することすら許されていなかったのです。
みなさんは「8浪でも9浪でも変わらないだろう」と思われるかもしれません。私もそう思っていたのですが、大卒時に30歳か31歳かの違いは、想像以上に大きかった。
Webエントリーができないので、私は就職説明会に頻繁に出かけました。しかし、だいたいの企業からは「新卒採用枠は30歳まで」「申し訳ありませんが中途採用からご応募下さい」と、丁重に門前払いを受けました。
「大企業へのレール」はなかった。
この8年間、私はひたすら時間を見つけては高校の勉強をしていました。自分には社会で通用する物事をやり遂げる自信や、自分の頭で考える基盤となる教養がありませんでした。それを同時に解決するのが受験勉強という手段だと思ったのです。
東京の大手企業で働いているサラリーマンに憧れていた私は、受験で得られる自信と教養を身につければ、自然と大企業へのレールが用意されているのだと信じ込んでいました。
しかし、世間はそこまで甘くありませんでした。私は「エントリー」すら許されなかったのです。再挑戦をするにも、年齢が重しになって、社会全体で自分の可能性を狭めてきているように錯覚させられました。まだ年齢的にも働き盛りだし、会社に貢献するバイタリティも溢れているのに…。やり場のない悔しさでいっぱいになりました。
同じような人ばかりでいい?
確かに新卒採用で22歳の学生を採用するメリットは大きいでしょう。多くの大企業では最初から社員に即戦力になることを求めてはいません。定年までの期間を戦力として利益を生み出す人材を育てるため、最初の数年はじっくりと資金を投入して育成に充てます。
採用時点の年齢が若ければ若いほど、将来会社に利益を生み出す額も増えるというわけです。しかし、デメリットもあります。それは、社員が「均質化」してしまうことです。同年代の、同程度の能力を持つ若者に同じ教育を施せば、価値観も似てきます。一人一人の細かい考え方は違えども、会社の基本理念を把握して遵守するという大前提は、波風立てずに会社員生活を送る上で全員が共通の理解として共有しています。
これが、新しい考えを会社に取り入れるには非常に厄介な問題なのです。
いま、世界はコロナという未曾有の惨禍に直面し、目まぐるしく変動する時代を迎えています。急速に動く時代の変化に対応するためには、画一的な考え方を持つ人間ばかりでは限界があります。真新しい考え方を取り入れるには、多浪生のような、何度も挫折し、そのたびに非難を浴び、世間の目と戦ってきた人間のたくましさや推進力が必要だと思うのです。
新卒に31歳が混じっているメリット
31歳の学生を採用するメリットは、そこにあります。それも中途採用のようにスキルを生かして最初から即戦力で活躍する人間よりも、新卒採用の方がメリットがあるでしょう。
22歳の学生たちと一緒の環境で育成され、同期として長い時間を共に過ごしていくからこそ、既存の枠組みから外れて生きてきた人間のバイタリティを若い学生に伝播させ、徐々に浸透させることができるからです。
就職してから学校教育で学んできたことと社会の構図がリンクして解像度が深まり、学びの面白さに気づいて再び大学で勉強をしたいと思う人も大勢いるはずです。
YouTubeやTwitterで発信してきた理由
私は、大学に入った時から新卒採用にて自分が採用されるのはなかなか難しいと自覚していました。そのため、大学に入学してから、顔と実名を公開してTwitterとYouTube発信をはじめ、受験生に向けて多浪生活のあるあるや苦悩、受験の教訓・励ましの言葉を毎日発信し続けました。
だからこそ、その投稿内容が社長の目にとまり、自分の根気強さ・受験生に対する共感性を評価していただくことができ、教育関連の企業に就職することができました。これから私は、採用していただいたご恩に応えるためにも、挫折を経験してきた人間の雑草魂を職場で十二分に発揮したいと思います。
私が就職したのはベンチャー企業ですが、大手企業も同様に、多浪を経験した人間のたくましさが必要だと思います。正解が分からない時代だからこそ、均質化する人材ではなく、胆力のある人間を採用する必要があるのです。社会の枠組みに囚われず、自分の意思を貫いてきた年長者はきっと、その並外れた活力を生かして会社で頑張ってくれるはずです。
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■濱井正吾
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