朝日新聞記者の「自社批判」に賛否 画期的な「下克上」か、「人としてダサい」のか

朝日新聞デジタルに掲載された「池上彰さんの連載について おわびし、説明します」

朝日新聞デジタルに掲載された「池上彰さんの連載について おわびし、説明します」

ジャーナリスト池上彰氏のコラム掲載を、朝日新聞が一度は見送り、その後に掲載してお詫びした問題は、ネットでも大きな話題となった。新聞社が一度決めた方針を数日後に変更するのは異例だが、その背景には「記者の実名ツイート」があったという指摘がある。

日本報道検証機構の調査によると、朝日新聞の記者は165人が実名でツイッターのアカウントを運用中。今回の騒動でも、会社批判のツイートをした人は少なくとも32人いたという。これにはネットで勇気をたたえる声がある一方で、サラリーマンが採る方法としてふさわしくないという人もある。

実名アカウントで「極めて残念」などツイート続々

週刊文春のウェブサイトが、池上氏がコラムの掲載を拒否されて連載中止を申し入れたと報じたのは、9月2日の夜。追って産経新聞が「信頼関係が崩れた」とする池上氏のコメントを掲載し、ネットは騒然となった。

これには朝日新聞の記者たちも、実名で参戦。大阪本社社会部の記者、武田肇氏は(査定に響きませんように…)とカッコ書きしながら、会社の判断に怒りを表した。

「私は組織に忠実な企業内記者の一人ですが、夕方、このニュースを聞いて、はらわたが煮えくりかえる思いでした。極めて残念です」

他の記者や編集委員からも、次々と批判の投稿が相次いだ。楊井人文氏のブログによると、ツイートした朝日新聞社員は5日までに30人を超えたという。

「もし本当なら言論機関の自殺行為だ。朝日新聞社の対応に私は個人として賛同しない。少なからぬ同僚記者たちもそう思っている」(東京本社社会部遊軍長・谷津憲郎氏)

「池上彰さんのコラムの問題で会社の姿勢に腹が立って眠れず」(編集委員・吉岡桂子氏)

「私の年齢になると編集幹部の多くと顔見知りですが、不思議でならないのは、どの顔を思い浮かべても『こんな判断するわけない』という人物ばかり」(特別編集委員・冨永格氏)

こうした批判が影響してか、朝日新聞は池上氏の意向も踏まえ、4日付で同氏のコラムを掲載。6日には「池上彰さんの連載について おわびし、説明します」と題した東京本社報道局長・市川速水氏の署名入り記事を掲載した。記事は「今回の過ちを大きな反省として、原点に立ち返り、本紙で多様な言論を大切にしていきます」と締めている。

「妻の悪口を飲み屋で言いふらす」ようなものか

巷ではSNSの利用を禁止している会社も多く、自社を公然と批判をするツイートはサラリーマンに驚きをもって受け止められたようだ。ネットでも「結構すごいことなのでは」という声も見られる。ITジャーナリストの津田大介氏は毎日新聞に、

「現場記者がソーシャルメディアを使って声をあげることで組織ジャーナリズムのあり方が変わる可能性を示したという意味で重要な教訓を残した」

とコメントし、その意義を大きく評価した。経済学者の池田信夫氏もブログで、社内の「左翼的な『空気』の暴走」に歯止めをかけるのは現場の「下克上」しかないとする。

「そのゆくえは内閣改造よりはるかに大きな影響を日本社会に及ぼすだろう」

一方で、社員がネットに会社の批判を書くのは正道ではないという批判もある。LINE上級執行役員の田端信太郎氏はツイッターで、朝日新聞の記者たちをこう批判している。

「自分が勤めてる会社の悪口をパブリックに見える場所で言うなんてのは、妻の悪口を家庭外の飲み屋で言いふらしてるみたいなものでないか。自分の身の回りですらコミットして改善出来ない奴が何を天下国家のことについて『べき論』を抜かすのか。人としてダサいわ」

社員は、社内の問題に関与できる当事者であり、解決に向けて力を注ぐか、処分されてクビになるか、あるいは自ら会社を辞めるかが選択肢となる。クビをおそれて社内でケンカせず、ネットに批判を投稿するだけならば、大した覚悟はなかろうという考えも確かにできる。

こうした意見はネット上でも散見され、「社内で確認したり聞いたりは無理なのか」という声もあった。朝日新聞記者たちのツイートは「心ある記者なんですと自己を正当化」するためのポーズに過ぎない、という批判もあった。

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