年々、ファンが減っている趣味というのは結構多いものだけど、パチンコなんかはその筆頭と言ってももいい。昔は喫煙とパチンコがマストみたいな時代もあったし、パチンコを悪い先輩から教え込まれるという人も多くいた。
ところが徐々にパチンコの功罪で言うところの“罪”がクローズアップされるようになると、市井の人たちからは嫌悪される業界になった。その上、折からの不景気の波は延々と私たちの生活を蝕み、もはや余暇産業としてのパチンコに、そうそうハマッてられないという人もかなり増えてきている。
そうした中でコロナ禍でさらにユーザーは減少。ここ3年、4年は相当な苦境にあったことは間違いない。ところが、また最近ユーザーがホールに戻り始めているという。(文:松本ミゾレ)
柴咲コウをCMに起用していたけど……
パチンコ業界情報サイト「webグリーンべると」が先月、余暇総研の「レジャー白書2023」に関する記事を配信していた。
それによると、2022年のパチンコ人口は前年比およそ7%増、770万人にまで回復したという。人数にして50万人ほどの増加だ。
レジャー白書というのは過去にもこちらで紹介してきたが、日本生産性本部が毎年刊行している、日本の余暇産業の実態をまとめている資料である。2022年は、コロナの影響が落ち着き、余暇関連市場規模は前年比12.7%増とパチンコに限らず全体的に回復基調だった。
遊技人口の増加というと、一瞬「ああ、パチンコユーザー新規開拓がギリギリのところで間に合ったのかな」と思い込みそうにもなる。折も折、今年5月から日本遊技機工業組合は、パチンコのイメージアップを図るべく、女優の柴咲コウを起用したTVCMを打ち出してきた。業界もユーザー数の減少に歯止めを掛けたい狙いがあったのは明白。
しかしこのCM、かなり不可解なものだった。せっかく柴咲コウを起用しているのに、デカい銀玉で玉乗りさせてるので顔がブレて誰なのかよく分からないし、「元気してる?」みたいなセリフだけではパチンコ業界が何を伝えたいのかも分からなかったし。
遊技人口が7%増えたというのも、実際にはこういったCM戦略に新規ユーザーが触発されたというよりも、コロナ禍で打ち控えを行っていた人たちが徐々にホールに戻ってきた程度ではないか? という気もするところだ。
いちヘビーユーザーとしては、ホールに明らかに新参者が増えた……ということも感じないし。4年ほど続いたコロナ禍で減ったお客が2年連続で少しずつ戻ってきた、というのが今回の参加人口増加の実態なんだろう。
現在は頼みのスマパチが不発な一方、パチスロは堅調
ここで今後の先行きについて考えてみる。パチンコホールでは2022年11月から、メダルレスのスマートスロット。通称スマスロが導入されている。スマスロはコイン単価が高く吸い込みも激しい機種が多いが、その中にあって『スマスロ北斗の拳』は比較的マイルド。導入数も多く、4号機パチスロの筆頭機種であった『パチスロ北斗の拳』の忠実過ぎるリメイク機種ということもあって好評で、この1機種がスマスロの中でも飛びぬけて稼働に貢献している。
また従来型のメダルを要するパチスロにも人気機種が少なくないため、パチスロファンにとって攻めやすい時代でもある。
一方でこの業界、パチンコとパチスロの一方が注目されると、もう一方は人気が落ち込むという変な傾向があって、これをもう何十年も繰り返してきた。なぜか不思議と「あちらを立てればこちらが立たず」ということが起きてしまうものなのだ。
スマスロ同様、パチンコにもスマート式のパチンコ、スマパチが今年4月からホールデビューしている。最大の特徴は玉を触る機会がないこと。そして大当たり確率も、従来機よりほんの少しだけ悪くなっている。
ところがパチンコファンというのはパチスロファン以上に年齢層が高く、変化を嫌う人も多かったようで、いざ導入してみるとこれが文字通りの鳴かず飛ばずで持て余すホールも少なくなかった。
それこそ、高齢者からの支持も抜群の、パチンコホールの看板機種『海物語』シリーズも、スマパチ『e新海物語349』が登場したが、海ならなんでもいいわけではなかったようで、全国的に歴戦の海ファンたちからも警戒、敬遠されている。
このまま状況が変わらなければ、来年のレジャー白書では恐らくパチンコが不調、パチスロが好調と紹介されるはずだ。23年初めまでは、パチスロよりパチンコが好調だったが、現在は逆転。恐らくこのまま、来年春まで状況は変わらないと思われる。
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