SUMCOのDX:2018年設立の「AI推進本部」が約300人の「カイゼン請負組織」に 社内留学によるリスキリングも | NEXT DX LEADER

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SUMCOのDX:2018年設立の「AI推進本部」が約300人の「カイゼン請負組織」に 社内留学によるリスキリングも

SUMCO CM(半導体の進化2篇) より

SUMCO(サムコ)は1999年、住友系・三菱系3社の共同出資によりシリコン ユナイテッド マニュファクチャリングとして設立された会社です。2002年に住友金属工業(当時)よりシリコン事業を譲り受けるとともに、三菱マテリアルシリコンと合併、三菱住友シリコンに商号変更しました。

2005年にSUMCOに商号変更して東証一部(現プライム)に上場。国内のほか、米国、台湾、インドネシアの製造拠点で生み出される製品の品質には定評があり、TSMC(台湾積体電路製造)やサムスン電子、インテルなど世界有数のメーカーのパートナーに選ばれています。(文責:NEXT DX LEADER編集部)

車載向け需要の成長などで最高業績に

SUMCOの事業は、シリコンウェーハの製造・販売を主体とした「高純度シリコン事業」の単一セグメント。半導体シリコンウェーハとは、単結晶のシリコンを円盤状にスライスした材料で、半導体メーカーがメモリーやロジック等の各種半導体を製造するうえで基盤材料として用いるものです。

製品の競争力は高く、半導体売上高世界トップ10のすべての企業が、SUMCOグループのクライアントとなっています。

SUMCOの業績は右肩上がりに伸びています。2018年12月期にはデータセンター向けメモリーや高性能ロジックデバイスなどが牽引して売上利益が急増。その後、世界経済成長の鈍化やコロナ禍で一時落ち込んだものの、2022年12月期には車載向け需要の成長などでふたたび急増し、2013年の決算期変更後の最高業績となっています。

(SUMCO ANNUAL REPORT 2022より)

(SUMCO ANNUAL REPORT 2022より)

2022年12月期の営業利益率は24.9%。売上高の内訳は、国内が856億円、海外が3554億円で、海外売上比率は80.6%に。世界シェアは約3割とのことです。

SUMCOは2021年12月に「SUMCOビジョン」を策定。「技術で世界一の会社」「景気下降局面でも安定して収益をあげる会社」「従業員が活き活きとした利益マインドの高い会社」「海外市場に強い会社」の4つを掲げています。

SUMCO VISION(SUMCO ANNUAL REPORT 2022より)

SUMCO VISION(SUMCO ANNUAL REPORT 2022より)

SUMCOは中期経営計画を策定していませんが、ウェブサイトに掲載する「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」の中で、事業環境を次のようにとらえており、社会におけるDXの動向に強く関わり合いのある事業をしていることがわかります。

半導体シリコンウェーハは、短期的な変動要因はあるものの中長期的には、データ通信量の増加、5Gスマートフォンの普及、HEV(ハイブリッド自動車)・EV(電気自動車)の普及、自動運転の進展、テレワークの定着、デジタルトランスフォーメーション(DX)などの技術革新による半導体市場の成長とともに拡大していく見通しであります。

工場から自動収集するデータを社内でリアルタイム共有

SUMCOは、2018年にAI推進本部を設立。「デジタルトランスフォーメーション(DX)分野でもトップを走る会社」を目指し、現在は約300人からなる「カイゼン請負組織」となっています。

DXに関するこれまでの取り組みでは、大きく3つの実績をあげています。1つめは、AIテクノロジーやデータサイエンス、IoT技術に基づく「工場の生産性改善」で、以下の施策を積み上げたものとのことです。

  • 工場内の全装置の稼働状況・加工効率をリアルタイムに取得し可視化する仕組みの構築
  • ラインバランス・ボトルネックを定量的に詳細把握し、加工効率向上策を集中実施
  • 秒単位のタイムチャート解析により、装置ごとの動作バラつきを極限まで抑制
  • 専門のエンジニアに頼っていた特殊判定について、機械学習を用いて自動化し工程滞留時間を削減

「SUMCO Annual Report 2022」によると、工場から自動収集するデータを、社内の経営層からスタッフ、オペレーターまでの各階層が、リアルタイムでグラフや表でモニターできる「工場ダッシュボード」の構築を内製で進めているとのことです。

SUMCO VISION(SUMCO ANNUAL REPORT 2022より)

SUMCO VISION(SUMCO ANNUAL REPORT 2022より)

さらに、自律型無人搬送車と協働ロボットを生産設備と連携させる等、既存工場のスマート化にも積極的に挑戦し、労働生産性改善、従業員の働きやすさの向上にも取り組んでいます。

これらの課題には、生産部門とAI推進本部が一体となって取り組み、設備増強の余地がない300mm主力向上において総生産枚数で10%以上の生産性改善を実現。投資抑制効果で300億円以上、利益創出効果で年間40億円以上に相当する改善になったとのことです。

DX人材の活用に向けて採用強化

実績の2つめは「DXツール展開による業務効率化の推進」で、BIツールやRPA、ワークフローシステム等、業務効率化をサポートするツールの、工場や間接部門への導入を積極的に進めており、年10万時間以上の業務効率化、年15万枚以上の紙使用削減が実現したとのことです。

3つめは「ニューノーマル時代の働き方へのアジャイルな順応」で、コロナ禍以前から整備されてきたセキュアな利用環境を活用し、東京地区においては2020年4月初旬から完全リモートワークを実施。経営判断に関わる会議も導入済の電子決済システムを利用し、すべてリモート開催に移行しています。

また、今後ますます必要となるDX人材を活用するために、「採用強化の取り組み」「AI推進本部社員の活用」「部門SE制度の導入」を進めています。

SUMCO VISION(SUMCO ANNUAL REPORT 2022より)

SUMCO VISION(SUMCO ANNUAL REPORT 2022より)

なお、部門SE制度とは、ユーザー部門の社員や新規採用社員など各部門の非IT人財を、AI推進本部内に社内留学生として6ヶ月間受け入れてリスキリング育成し、自部門に戻ってDXを推進するというしくみです。

YouTube:SUMCO CM(半導体の進化2篇)

考察記事執筆:NDX編集部

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