「縁故採用」で優秀なスタッフ確保 メルカリも「全社員がヘッドハンター」で採用会食を奨励
空前の売り手市場が続く中、企業は人材確保に悪戦苦闘している。中途採用に活路を求める動きもあり、大手ではホンダが16年度の中途採用を、技術系中心に前年比で4割増の250人にする方針だ。
そんな中、縁故を使った採用、いわゆる「コネ」が見直されているという。3月21日放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)では、コネ入社に力を入れる企業の人材獲得手法を紹介した。
採用が決まれば紹介社員に30万円支給する「もしも」
東京・新宿区のベンチャー企業「もしも」は、ここ1年で転職サイトでの応募が半減したことから、社員の縁故で人材獲得を狙っている。求人情報を記載したカードを社員に配り、知り合いに声をかけてもらう取り組みを始めた。
採用が決まれば、紹介した社員に30万円の報酬が支給される。さらにカードには「原則として前職の給与水準以上を保証」という記載もあり、力の入れ具合がうかがえる。
社員の1人は、「こんなにもらっていいのかなという感じ。逆に責任を感じますね」と恐縮していた。社長の実藤裕史氏は、このカードに込める期待をこう明かす。
「紹介で来た人は相性が初めから良いことが多いですし、定着率も非常に高いので、この採用カードで効果が出るといいと思っています」
業績好調のITベンチャーの「メルカリ」(東京・港区)も、縁故採用をうまく使って人材獲得につなげている。同社は「採用会食」という制度によって、正社員の数を2年で10人から約120人に増やしている。
社員が、入社してもらいたい知人を誘って食事をしながら転職を促すしくみで、費用は会社持ち。社員の誰でも利用でき、申請はメール報告という気軽さだ。入社2年目の石黒さんは、昼食にステーキレストランへ採用会食に行き、オフィス面談まで取り付けていた。
正社員の半分以上が縁故「優秀なメンバーが入ってくる」
採用担当の小泉文明取締役は、「正社員の半分以上が縁故ですね」と明かし、縁故採用は会社の成長につながる強力なツールだと見ている。
「基本的には全社員がヘッドハンター。優秀なメンバーが入ってくるので事業が伸びます。縁故の採用は、非常に競争力を生む採用手法だと思います」
リクルートキャリア就職みらい研究所の岡崎仁美所長は、「縁故採用」に頼りたがる企業人事の背景をこう説明する。
「新卒も中途も採りづらいけれども、(人材の)レベルを下げてまで採用しても、活躍できなければ意味がない。しかし数を確保しなければ事業継続に支障をきたすので、人事の皆さんはかなりご苦労されている」
番組を見た視聴者からは、ネット上で「コネだからこそ、変なやつは連れてこれないから良い制度かもなこれ」「中小企業は事業などの知名度が低いので、縁故により自社について理解してもらった上で採用することは良いこと」などと高評価が上がっていた。
メルカリの縁故採用で入社した社員が「紹介してくれた社員のためにも、気の抜けた仕事はできない」と話したように、適度なプレッシャーにもなる。ただ、これをしがらみと感じて「コネで入ると辞める時面倒だぜ」とつぶやく視聴者もいた。
「紹介してよかった」と思える人や企業でないと成立しない
かつてはコネ入社というと、かつては親せきの子どもを能力も不明なまま採用というイメージがあった。ネットにも「能力のない人を縁故採用することは問題」と釘を刺す指摘もある。 しかし、番組で取り上げられていたのは、むしろ優秀な人材の引き抜き合戦だ。
入社前からお互いにある程度知っているからこそ、安心して入社できるし採用できるというメリットは大きいのだろう。紹介してよかった、されてよかったと思える人や企業でないと成立しないハナシではある。(ライター:okei)
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